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局地戦 その2

 結局のところセーラは、その日の暗殺を諦めた。屋敷に帰る途中、甘い匂いに引き寄せられたセーラは、そのまま早朝から営業するカフェに入った。


「あの甘い匂いは?」

「はい。当店オリジナルの…」

「それを。後は紅茶だ」


 その外見から放たれる異様な雰囲気に飲み込まれた店員は、注文を聞くと逃げるように厨房に入って行った。その店員の真横を通ったはずなのだが、店員に気が付いた様子はない。セーラの向かいの席に座る女性は、誰にも気が付かれずに、そこに座ったのだ。


「情報は力だよ。セーラ。僕と君はパートナーだ。存分に使ってくれ」


 その女性は、【警告の鎖】ワニーチェンとバーテンダーの関係と同じく、セーラの部下として任命された東方の小さな国の隠密集団である【くノ一】と呼ばれる密偵のスペシャリストだ。


 セーラは店員を呼び、くノ一にも同じものを注文した。


「まず大商人の情報から。それぞれのバックに付いているのは、レオンチェフ王国とフェルメーレン王国。つまりセーラが小隊長として参戦していたレオンチェフ王国とその敵国であるフェルメーレン王国が、ここハイシンク国内で経済戦争をしてるということ」


 紅茶のカップに手を延ばしたセーラの動きが止まる。それを見て気分を良くしたくノ一は話を続ける。


「国内で争う二国を潰そうとしたハイシンク国の上層部は、式典の最中に暗殺する馬鹿で優秀な暗殺者のセーラに目を付けた。

 勿論、セーラが国からの依頼だと気付いてしまうぐらい情報統制も隠蔽かもザルなハイシンク国の情報は、すぐさまレオンチェフ王国に流れた。

 セーラレポートと呼ばれる極秘資料になったセーラが忽然と消えた後、レオンチェフ王国はセーラを必死で探したんだよ。気が付いてしまったんだよ。君が前線を押し上げていたことにね。今更だよね。

 だからこそ、死の標的(デス・サイズ)=セーラ小隊長だと結びつけるのが早かったんだ。

 そうそう…ナルガック砦を攻めきれずにね。前線は停滞しているよ。セーラが道筋を残しておいたのに無能だよね?」


 セーラは黙って、当店オリジナルの何かを黙って食べ続けた。


「レオンチェフ王国はセーラレポートから情報力の重要性に気付き急遽情報部隊を編成したんだ。それが素人のくせに中々優秀でね。短期間で、セーラを見つけ出して、モンドリー商会のメイドの家族を誘拐して、セーラを毒殺しようとするぐらいなんだよ。驚きだね」


 セーラは最後に紅茶を飲み干す。


「私も…常時、変装しておくべきだったか?」

「そうだね。トラブル防止にはなったかな?」

「レオンチェフ王国が情報戦に強いなら、先に叩くべきはレオンチェフ王国で良いのか?」

「セオリー通りだとそうだけど、既に対死の標的(デス・サイズ)級の防衛レベルを築き上げているから…寧ろ、簡単なフェルメーレン王国からで良いかも」

「ならば…」

「はい、これ」


 くノ一は、テーブルにフェルメーレン王国側の大商人に関する建物や護衛の配置が記された地図を広げた。


「ここまで調べたのなら、暗殺できたよな?」

「まぁ…目の前にターゲットはいたけど、それはセーラの仕事だからね」

「お前、馬鹿だろ?」

「いえいえ、セーラ程じゃ、ありませんよ。父親に会いに来て、何で暗殺始めてんですか?」

「…」



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