局地戦 その1
五芒星がぶら下がるネックレス。五芒星の中心に死神の鎌と3つの輪が重なる【波紋の鎌】と名付けられたネックレスこそ神具の本体だ。その大中小の3つの輪が、三人の魂に紐づく効果をもたらす。
小さな波紋のリングは、波紋の効果により、例えば索敵のセンサーなどになる。
中位の循環のリングは、エネルギーを思い通りに操作することが可能となる。エネルギーを体内に流せば、ちょっとした変装も可能なのだ。
大きな封印のリングは、ターゲットとリングの内側を魔力の道で繋げる。
これ以外にも異なった使い方は可能であり、要は使い方次第の神具なのだ。
例えば、下品な使用方法として、毒を盛った給仕役メイドの首と胴と右手の小指を3つの輪で締め上げている。後少し力を込めれば…臓器を潰し骨を砕くだろう。
「どうした? 正直に言おう。拷問しているのは答えを聞き出すためじゃない。ちょっとした暇つぶしに他ならない。何故ならば、ここに強力な自白剤があるからだ」
クイクイと試験官に入った怪しい色の薬を見せる。これは薬草師の記憶を元に、あり合わせの材料で作った効果の薄い自白剤だった。
給仕役メイドは、セーラを睨む。魂をかけて殺せるならば、殺してやるとばかりに…。
給仕役メイドの痛覚を30倍以上にする薬を投薬しているため、舌を噛んで死ぬことすら難しいだろう。
サーフェス・モンドリーも自分が貸した屋敷とメイドから暗殺者が出たことに驚きを隠しくれなかった。
「シンディ…。何故だ? 何故…セーラ様を毒殺しようとした? シンディとセーラ様に繋がりがあるのか?」
「仕事の時間だ」
セーラは席を立つ。本当のことを言えば、暗殺の犯人探しに興味はなかった。死の標的の正式な暗殺者になったセーラにとって、千に近い敵がいる可能性があるのに、一人程度減っても何も変わらないのだ。
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今回の依頼は3つ。一般人による復讐の依頼、貴族内の遺産相続に関連した間引き依頼、そして、大商人同士の勢力争いを繰り広げる両者をまとめて一掃する…国からの依頼。
一般人と貴族の依頼は3時間程度で片付く。しかし、争う大商人の両者を葬るためには、腕利きの冒険者の護衛を掻い潜り暗殺する必用があった。既に交戦中の大商人同士は、警戒レベルも他の暗殺依頼とは異なるのだ。
とある屋敷の屋根の陰に隠れたセーラは、五芒星の中心に死神の鎌と3つの輪が重なる【波紋の鎌】と名付けられたネックレスから、小さな波紋のリングを外す。
「やはりこの距離では索敵範囲外か」
黒のワンピースに黒の外套を羽織るセーラは、整然と並ぶ街並みと貴族に近い服装の人々が行き交う大商人が住む地区では逆に目立ってしまうが、それは昼間のことであり、死神と化したセーラは…ごく自然に夜間の街の影に溶け込んでいく。
「長い夜になりそうだな…」




