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ゲームオーバー

「おや、どうしました? 足に何か刺さってますよ? ふふっ。次は、そこの獣道に逃げ込むのですか? 茨のトンネルは痛そうですね。さて、どうしたものか…」


 足を引きずりながら、茨のトンネルに入る。ここの茨は範囲が広く、トンネルがどの方向へ続いているか予測できないため、先回りなど無理なのだ。それにバーテンダーは持っていてもナイフぐらいだ。茨を切り裂きながら侵入することなど不可能だろう。


 振り返ると、バーテンダーは、微笑みを浮かべて、こちらの様子をジッと見つめていた。


 正直言うと、ここに至るまでのトラップゾーンを無傷で踏破したバーテンダーに対抗する手段は無いに等しいのだ。残された道は、ただ茨のトンネルを進むことだけだ。


 茨の密集度が高く、外からこちらの様子は、もう見ることが出来ない。もっと深く、もっと遠くへ…。


 茨の地帯の中央にたどり着く。カムフラージュされた地面の蓋を開けると、手掘りのトンネルが現れる。それはオーデルの地下トンネル。荘園で働く従業員たちが、農作物を不正に街の外へ運び出すために作ったトンネルだ。


 備え付けてある梯子を下りると、置いてあるランタンに着火道具で火を灯す。街の外へ向かうか、フレーダ荘園に向かうか悩む。


「にげてばかりじゃ、だめでしゅね」[逃げてばかりじゃ、駄目ですね]


 梯子から離れると、ストーンナイフに毒を塗り、ランタンの火を消す。暗闇の中、ジッと待っていると、梯子を下りる音が聞こえてきた。


 チャンスは一度。バーテンダーの足が地面に触れた音を聞き分け、ストーンナイフを投擲した。


「ぐっは…」


 即効性の毒ではあるが、あまり強力ではない。バーテンダーに毒耐性があれば負けだ。


 再度、ランタンに火を灯す。そこに倒れていたのは、見知らぬ男性だった。


 カンカンと梯子を降りてくるバーテンダー。


「危ない。危ない。本当に悪魔の子だな。さて、ゲームオーバーのようだね。金貨の在り処を教えてもらえないだろうか?」

「まけでしゅ。ふたりはいきていましゅか?」[負けです。二人は生きていますか?]

「あぁ。無事だとも。こちらも急いで出てきたのでね。殺す暇もなかったよ」

「このまままちにもどるでしゅ」[このまま街に戻るです]

「おお、トンネルを行くのだね。良いとも、良いとも。さぁ、先を行ってくれ」


 アイスピックでトンネルの奥を指す。どうやらバーテンダーは、方向も知っているよだ。無駄な抵抗もせず、言われた通りフレーダ荘園に向かう。


 トンネルを半分過ぎた頃、背後でバーテンダーが地面に倒れ込む。


「どうちまちた? きぶんがわりゅういでしゅか?」[どうしました? 気分が悪いですか?]

「いつのまに…毒を!?」


 毒は、最初の梯子に仕掛けられていた。低刺激の遅効性の毒を梯子に塗り、そして降りてくるトンネルにも、小さな毒蜘蛛を放っていた。

 

 二重の毒は、気付かない内にバーテンダーの体を巡る。倒れたということは、全身に毒が回っている証拠。携帯用小型ナイフを取り出すと、とどめを刺そうとするが…またも意識を失う…。


 そして、私が目覚めた時、目の前には鎖を全身に巻いた男が座っていた。



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