勝敗の行方
全壊したフレーダ男爵邸から一番近い商業地区のホテルのある一室に、生気を失ったフレーダ男爵と怒りに我を忘れているバーテンダーと名乗る殺戮者がいた。
「一体全体、誰の仕業ですか!? 要石は正常だと言うならば、人外を召喚出来る人間がいると言うのですか!? 人外を生み出したとされる自然回帰が犯人でしょうか!? いやいや…彼らに狙われる理由が全く無いはず…」
バーテンダーの格好をした男が、狭い室内をグルグルと歩き続ける姿を見ていたフレーダ男爵は、自分の寿命について考えていた。
人の生き血の狙うとされる人外だからか、人がいない畑は荒らされなかった。作物に被害は無かったのだが、屋敷が全壊し…運営資金が入った金庫が、何者かによって盗まれた。そして隠し金庫までもが被害にあい…荘園を再起させる資金は完全に消え失せたのだ。
特に、屋敷の使用人や荘園の従業員が、皆殺しにされたのも痛い。盗賊に殺されたのか、人外になった後に街の警備兵に殺されたのか、わからないが…荘園を運営できるノウハウも失われたのだ。
「あぁ…。と、とりあえず、我が主であるワニーチェン様がご所望する…新しい別荘の代金は、確保できますよね?」
「いえ…。荘園の運営資金が盗まれました。従業員の雇用すら維持できません。収穫も難しいかと…」
「ば、馬鹿を言うな!! ならば、どうするのですか!?」
「わ、私に言われましても…。正直、私達を…いや荘園を守るのが、バーテンダー様のお仕事かと」
「き、貴様っ!? 私に人外と戦えと言っておるのか!!」
「いえ、このような卑劣な計画を未然に防いで頂かねば…何のために莫大な資金を提供しているのか…」
「あぁ…。例え荘園を売った代金で、今回を逃げ切ったとしても…」
「はい。殺されるのが、少しだけ先延ばしされるだけでしょうね」
「こ、このまま…お前は、荘園を経営するのです。わ、私は…運営資金を奪った連中を探します」
運営資金とは、土台があっての金額であり、屋敷や道具など作物以外の失った全てを取り戻すには、全く足りていないのだ…。所詮、殺戮しか出来ない無能な猿には理解できないのだろう。
愛人の家に隠してある少ない金貨だけが頼りか。それを持って、このオーデルから逃げるとするか。
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父親のライズは、ご機嫌だった。オーデルの西側最大の荘園が、事実上潰れたためだ。得意先が潰れたのに、何故喜んでいるのか? と、疑問だったが、フレーダ荘園は、年々作物の販売価格を釣り上げていたらしい、つまりライズにとっては、年々薄利多売の傾向が強くなっていたのである。
「全く、買い取り金額も量も、毎年増やしやがって…」
東側から取引を持ちかけられても、信用が大切な商人にとって、簡単に乗り換えるわけにもいかずに、苦しい経営が続いていたのだ。そこに来て、この大事件だ。平民にも多数の被害が出ているため、手放しに喜ぶことは出来ないが、気味悪がっていた私を高い高いするぐらい上機嫌なのだ。
「そうだ。セーラ。何か可愛い服でも…たまには買いに行くぞ」
「はいでしゅ」[はいです]
「そうか、そうか。セーラは可愛いな」
「ラークの婚姻。新しい取引。何やら、運気が上昇しているな!」
あれ? 全部、私のおかげじゃない!?
「おとうしゃん、いつもおみしゃにきている。ふれーだしょうえんのおじちゃんは?」[お父さん、いつもお店に来ている。フレーダ荘園のおじちゃんは?]
最近では、来る度に…懐いたふりをしていたのだ。
「おじちゃんは、遠い所に行ってしまったのだよ」




