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下僕

「さて、いつか敵になるお前は、わたしの支配下に置いておく。逆らえると思うなよ? それと、お前は、わたしの部下なのだ。待遇も考慮しておこう。ここの盗賊共は、お前の命を脅かすことも、お前から逃げることも出来ないようにしておく。勿論、命令に逆らえない。さて、わたしは帰るとするが、いつか何処かで、巡り会うこともあるだろう。それではな…」


 つり上がった目で、私を見つめると、ポンポンと頭を叩き、名前さえ名乗らず盗賊のアジトを出て行った。静かに見送ると、ため息をつき、私は、整列した盗賊団に振り返った。


「おまえらは、わたしゅのぶかでしゅ!」[お前らは、私の部下です!]


 盗賊団の名前は、『荒野の墓』。オーデルの西側を中心に活動し、規模で言えば、構成員56名であり、三番目に大きいらしい。盗賊の技量は大したことがないため、仕事の内容は、主に窃盗、強盗、誘拐という脳筋型だ。稀代の大盗賊・青影のニルから師事した私には、何とも幼稚でお粗末な仕事っぷりに情けなく思う。だが、この盗賊団をインテリ詐欺集団にする時間も余裕もない。


 売上の帳簿や履歴、金の管理…全てがずさんだ。


「しきんもしゅくないでしゅね」[資金も少ないですね]

「セーラ様が…宝物殿を燃やして…」

「なんでしゅか? わたしがわりゅいのでしゅか?」[何ですか? 私が悪いのですか?]

「い、いえ…。とんでもございません」


 これは荘園の屋敷を人外に襲わせると同時に、略奪した方が早いな。盗賊団のボスに説明する。


「エルゼとお呼びください。それと、西のフレーダ荘園を…人外に襲わせるのですか!?」

「そのしゅきに、りゃくだつしてくだしゃい」[その隙に、略奪してください]


(感情が死滅した瞳の幼女が、悪魔の子だと街の噂されているが、噂じゃねぇ…悪魔そのものじゃねぇか…)と、盗賊団・荒野の墓のボス、エルゼの額に冷たい汗が流れ落ちた。


「みにゃごろしにするつもりでしゅた。これはもっとじんぎゃいがひつようでしゅね」[皆殺しにするつもりでした。これはもっと人外が必要ですね]


(どういう意味だ? 全く理解らない)少ない脳みそで必死に考えるエルゼ。


「じんがいがどううごくかわかりましゃん。あとはうんでしゅかね?」[人外がどう動くか理解りません。後は運ですかね?]


 決行日は、7日後の夏祭りの夜。目標は2つ。1つはフレーダ荘園の金庫から金貨と資料を強奪すること。もう1つは祭りと人外で人気がない店舗に忍び込み金目の物を強奪することだ。


「もくげきしゃはみにゃごろしでしゅよ?」[目撃者は皆殺しですよ?]

「み、皆殺し…ですか!?」

「たのしみでしゅね!」[楽しみですね!]

「あ、はい…」


 盗賊団のアジトは、貧民街にあった。治安はとても悪く、幼女が一人で歩けば、必ず事件に巻き込まれるだろう。アジトへの出入りで、わたしが困っていると、エルゼが「商業地区に盗品を売るための店を出しているので、そこへ行けば連絡が付くようにしておきます」と言い出した。


「よくできましゅた」[よく出来ました]


 盗賊団の下っ端に連れられ、貧民街を歩く。


 しかし、解せない話題がある。街で、私が悪魔の子だと言われている? おかしい…レイナの母親は、そんな素振りを見せなかったぞ? 噂の発生源と理由を調べる必要があるかも知れない。そして、噂を流した…奴に苦痛を味あわせてやる…。


 感情が死滅した瞳に、ニタァと不気味に微笑む幼女の姿こそ、悪魔と言われる所以なのだが、本人は全く気が付いていなかった。

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