訪問する幼女
孤児院の子供が行方不明になろうが、街は何事もなく同じ日常が繰り返された。しばらくして、腐敗したセブルスの遺体が見つかったと、ちょっとだけ街の噂になる。
(まぁ、そんなもんだよね…)
相変わらず父親のライズは、私に関心がない。何が…『例え、血が繋がっていなくても、心から…愛し合えば、それは家族だ』だ。
(なんだ? この気持ちは…。あぁっ!? むしゃくしゃするなっ!!)
とある家で洗濯物を干している母娘に近づいた。その少女は、私の顔を見るなり、恐怖で後ずさりする。
「レイナおねえしゃっん!」[レイナお姉さん!]
「あら、可愛い子ね。何処の子かしら?」
「ラ、ライズ商会の…セーラちゃん…」
「まぁ。ライズ商会の!? ふふっ。セーラちゃん、レイナと仲良くしてね」
「あい!」[はい!]
レイナの手を握ると、レイナの掌は、汗でびっしょりだった。私は、レイナを引っ張り、家の中に勝手に入る。
「おまえのへやはどこだ?」[お前の部屋は何処だ?]
「こ、この奥です…」
その部屋は女の子らしく、ぬいぐるみや可愛い玩具で溢れていた。私はベッドによじ登ると、感情が死滅した瞳でレイナをじっと見る。
「あ、あの…今日は…」
「しんぱいしゅるな、あしょびにきただけだ」[心配するな、遊びに来ただけだ]
泣かれても厄介なので、今にも泣きそうなレイナを安心させる。
「セブルスのことしゅってるのか?」[セブルスの事知ってるのか?]
あの惨劇を思い出したのか、ヒッ! と声を上げ、俯く。
「は、はい…。セブルスは、暴力的でした。でも孤児院の子供を守る…優しい心も持っていました。それにセブルスが頑張って、食べ物をいろんな所から、貰ってたみたいで…。セブルスがいなくなった孤児院では、餓死する子供が増えているみたい…」
「むにょうはしゅねです」[無能は死ねです]
「そ、そんな…。セブルスが…一体…何をやったの? 殺されるほどの事を…」
「ことばにきをつけるでしゅよ」[言葉に気をつけるですよ]
「ご、ごめんなさい…」
「おにぃが、ひろばにいくりゆうをしっていましゅか?」[お兄ぃが、広場に行く理由を知っていますか?]
「そ、それは…」
「いってみゅろ」[言ってみろ]
「あ、貴方が孤児院の出身者だからよ」
「どういうことだ?」[どういうことだ?]
「ラークは、貴方に出逢えた事の恩返しとして孤児院の子供と遊んでいるのよ。商会という立場が合って、孤児院に近づけないから、広場で…」
「いみがわかりゃない。もうかえりゅ」[意味が理解らない。もう帰る]
(余計にイライラしてきた…)
玄関まで行くと、レイナの母親に引き止められる。
「お昼ご飯一緒に食べましょう?」
「あい!」[あい!]
レイナの困惑した顔を横目に、私は…久しぶりにまともな食事にありつけ嬉しかった。




