目撃者
「ちねば?」[死ねば?]
「お、お前だって…噛まれただろ…」
セブルスの顔がみるみる青くなっていく、毒が回り始めたのだろう。
「わたちは、げどょくじゃいのんでましゅよ? あれれ? どしゅたのですか? しゃむいでしゅか?」[私は、解毒剤飲んでますよ? あれれ? どうしたのですか? 寒いのですか?]
振動蛇の毒は、それほど怖くない。振動蛇の生息地域にある草花から、簡単に解毒剤を作れるのだから。しかし、だからと言って、子供が作れる物ではない。
「俺は…ガキたちに…ご飯を…だから…」
「おもちろいでしゅね。ぷりゅぷりゅしてましゅよ?」[面白いですね。プルプルしてますよ?]
「お、俺にも…く…」
セブルスは言い終わる前に、泡を吹いて倒れてしまった。
(あらら? 流石に数匹に噛まれたら、毒の周りも早いか…。さようなら、セブルス)
「うん?」[うん?]
ヒュッ! とストーンナイフを背後の茂みに投げる。
「でてきなしゃい、おまえもころしましゅよ?」[出てきなさい。お前も殺しますよ?]
直接、顔面を狙ってもよかったのだが、それでは、態々セブルスを毒殺した意味がない。出て来たのは…お兄ぃと同じぐらいの少女だ。恐怖の余り、失禁し、涙で顔がぐじゃぐじゃだ。この少女の存在に気が付いたのは、自ら振動蛇に噛まれたとき。ほんの少しだけ、少女が声を出したので気が付いたのだ。ということは、こいつ…かなりの隠密が上手い?
振動蛇のトラップゾーンを抜け、少女に近づく。
「なまえは?」[名前は?]感情が死滅した瞳で相手を見定める。
「レイナ…」
「いつからみてましゅた?」[いつから見てました?]
「さ、最初から…」
「どうやって、しゅにたい?」[どうやって、死にたい?]
「お、お願い…殺さないで…」
普通に考えたら、3歳児に殺される少女などいないだろうが…振動蛇や投擲による技を見てしまえば、そのリアリティな恐怖から、強烈な死の恐怖に縛られているのだ。
「どれいになりまちゅか?」[奴隷になりますか?]
「な、なります! 奴隷になります!! だから…殺さないで!!」
「では、ひじゃまじゅけ! みあげるのもたいへんでしゅ」[では、跪け! 見上げるのも大変です]
怯え泣く少女を見ていると、とても興奮してきた。あっ…。私も変態か…。
『最初に言っておく。もし今日のことを誰かに話せば、お前は勿論、家族も殺す。ただ殺すのではない。恐怖と絶望を味あわせながら、お前の目の前で殺すことを約束しよう。まぁ、お前が、誰に言っても、3歳児の私が、そんな事出来るはずがないと、信じてもらえないだろう。それに、別にバレても構わないさ。この街を燃やし尽くしてしまえば』という内容を、3歳児が苦労して伝える。
セリフの終わりと同時に、少女の目を覗き込むと、ヒッ!? と小さく声を上げる。
「りかいできましゅたか?」[理解できましたか?]
「は、はい…」
「かえりましゅ、てをつなげ」[帰ります、手を繋げ]
夜の帳が下りるオーデル街に、仲良さそうな少女と幼女が、手を繋ぎながら歩く姿があったが、誰も気に留める者などいなかった。




