次は恋を頑張る
月日は流れ、合格発表の日を迎えた。
雄太と杏は緊張と不安でいっぱい。二人の頑張りを間近で見ていた葵の緊張は本人たち以上だった。
吐く息はまだ白い肌寒い中、合格者の受験番号が記された掲示板へと向かう。
自分の番号が近づくとそれだけで2人は震えた。
「っ!?……」
「あった、お姉ちゃんあったよ」
雄太は自分の番号を見つけると涙目になり、杏は飛び跳ねて喜びを表した。
「2人ともおめでとう。よく頑張ったわね」
入学書類を受け取って春から通うことになる学院からの帰り道。
「葵先輩、この半年間本当にありがとうございました」
葵に出会わなければ開王学院なんて受験しなかった――
「褒めてあげる。勉強が出来ないって思い込みは払しょくできたでしょ?」
「はいっ」
「じゃあ次は恋の部分ね。好きな子が出来たら、徹底的に頑張りなさい」
「……」
「返事は?」
「はい……」
雄太の元気のない返事に葵は可愛らしく小首を傾げる。
雄太は気づいていた。
自分がなぜこんなに頑張れたのか――
受験を終え、考えた時その答えは明白だった。
いつの間にか、貝塚葵の存在は大きくなっていて、褒められたくて、一緒の高校に通いたくて――
それがさらに頑張れる原動力になった。
「大丈夫。大抵の相手なら雄太ならきっと想いが伝わるわ」
葵はこの時点では自分の気持ちには気づいていなかったし、まだ意識もしていない。
「先輩、僕、ちょっと用事を思い出したから先に帰っていてください」
徹底的に頑張る。
その最初として雄太が実行したのは――
1時間後、雄太は葵たちのマンションへとやってきた。
玄関を通り、呼び鈴を鳴らして葵が応対したところでバラの花束を差し出す。
「うわー、綺麗」
「葵先輩、好きです」
「えっ?」
バラの花束の本数には意味がある。
1本のばらは一目ぼれ。
2本だと、この世界は自分とあなただけ
3本だと告白・愛しています
少し味気ないと思ったが、雄太は3本のばらを用意した。
「大好きですっ」
「ちょ、いきなり何言ってるのよ。あー、予行演習?」
「違いますよ。真実の愛です」
「……」
頬を赤く焦がした葵は無言でドアを閉めてしまう。
この日から、雄太の徹底的に頑張る恋のアプローチが始まったのだ。
次の日には学校前で待ち伏せして、周りの目などお構いなしで2度目の告白。
「な、なっ、なんで私にそんな来るのよ」
「だって、徹底的に頑張れって……」
「っ?! やだ、なんで、そんな、それって……む、むっ、むりっ、むりよ~!」
この時から葵の方も雄太を少しずつ意識することになった。




