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聖属性の悪魔 後篇

(再掲)

――――――――――――――――――――

 名  前 ハクア

 魂  名 ニギ・クニトコ

 種  族 白玉魔 

     (特殊魔) 

     (階級:魔児)

 類  族 悪魔

 年  齢 6

 適性属性 聖18 冥17

 貯蓄命量 0

 魔力容量 15

 魔力流速 3

 魔力圧量 35

 霊力容量 50

      

 保持能力 

 気功 術 ―

 魔法 術 ― 

 心霊 術 思考加速1

 道  術 ― 

 仙  術 ―

 梵  術 結合梵術1

 開闢 術 ―

――――――――――――――――――――


「で、未だステータスの説明が終わって無いぜ。」


 湿り気と温もりの混じった雰囲気が苦手だったのか、スーノ教官が空中に張り付いた青い光をうっすらと放つ長方形を指差しながら、強引に話の方向を軌道修正する。まあ、正直俺もこの雰囲気から逃げ出したかったので、有難いが。


「そう言えば、そうね。ええっと、確か適性属性の話で終わってたのよね。さっきも言ったけれど、悪魔の種類はこの適性属性で分類されるのよ。黒石魔は冥属性だけで、他の悪魔は冥属性ともう一つ属性があるの。普通の白玉魔は、冥属性と鉱属性ね。ただし、こんな風に複数の属性を持つのは悪魔が魔法適性が高い生き物であることが理由と考えられているわ。つまり、地上の生物は普通8個の内の1つだけに適性があるのよ。例外もいるけれど。」


 ブランカも通常業務に戻ってくれるようだ。


「適性属性がない生き物もいるんですか?」

「基本的には、いないわね。人工的に作り出せたって話も聞かないし。だから、全ての生き物には属性があるわ。生物に見えるのに属性が無かったら、疑似生命体とか、非生物を疑う事ね。」

「なるほど。ところで、属性の横に書かれているあの数字は何ですか?」

「あれは、属性値ね。」

「属性値?」


 またもや、新出の単語である。冥界に来てから、なにぶん異世界なもので覚える事が多くて苦労する。これは、心霊術で記憶拡張を取っておけば良かったと後悔しそうだ。


「属性の適性度とも言うわね。数値が高い程、その属性との親和性が高い事に為るのよ。これは訓練して行けば上昇するわ。因みに、属性値が10未満だと魔法発動の要件を満たさないから、魔力使用ができないみたいね。つまり、属性値が10未満の場合は属性値上昇の為の訓練をすることも出来ないから、一生魔力使用できないの。」

「つまり、生まれた時から属性値が10未満なら、魔法を使うのは諦めなくてはならないという事ですか。魔力使用という事は梵術も?」

「そうそう。魔法術、梵術、開闢術、どれも無理ね。」


 とすれば、俺は10を超えているから問題無いというわけだ。まあ、既に訓練で魔力の紐を作ったり、梵術の練習をしているんだから越えて無ければおかしいだろうが。でも、数値が10台ってことは結構ギリギリな感じがする。ぶっちゃけ、この数値は魔児として高いのか低いのか気に為る所である。


「そうだな。だいたい吾輩達が見てきた魔児は、20日の訓練が終わった段階で平均して鉱25冥20前後って所だろうな。」

 

 う、平均以下と来ましたか。ちょっとショックだ。


「オマエの場合は、梵術の訓練が的外れだったから属性の成長が余り無かったんだろう。一々小さい事気にしてんじゃねーよ。」

「ああ、なるほど。」


 なら、俺も今度から結合梵術をちゃんと頑張れば、属性値の方もちゃんと上昇してくれるのか。良かった。


「こんなことなら、もっと早く調べておくべきだったかしら。20日間の梵術訓練が無駄になっちゃったわねぇ。ごめんね。ハクアちゃん。」

「いえいえ。そんな。ブランカさんのせいじゃないです。悪いのは凶神ですから。」


 ブランカが自責の念に駆られる事の無いよう、俺は全ての責任を凶神ハナコに転嫁する。困った時の神頼み。この世の悪い事は全部神様のせい。これで万事解決。万々歳。・・・ま、まあ、人としては間違っている気もするが、俺、悪魔だし? 別にいいかなってさ。


「未だ4月30日だからな。1440日の中の30日過ぎただけだ。これから気を取り直して頑張る事だな。属性値はもろに魔力容量に関わって来るから、血反吐を吐きそうなほど頑張れよ。」


 最後が蛇足だ。血反吐を吐きそうなほどとか、流石に冗談・・・ですよね?

 スーノ教官の真面目な顔が怖すぎるが、俺はそそくさと次の話題に移る。


「ブランカさん。次の貯蓄命量というのは?」

「簡単に言うと、これが生命力ね。」


 俺の貯蓄命量は0である。本当に悪魔は生命力が0らしい。確かに、これはアンデッドやゴーストに分類したくなる学者の気持ちも分かるというものだ。


「魔力、霊力については前に説明したわよね。」

「はい。」


 もう抜け落ち始めてるけどね。


「他に言って無い事ってあったかしら。」

「保持能力の欄に知らない単語がいっぱい並んでいるのですが。」

「あー、その辺は全部生命力関係だから、今は忘れておいてくれて良いわ。」

「そうですか。」


 まあ、今は関係無いというなら放っておこう。気にならないかというと気になるが、ハデッサを抜ける為には必要ない事なのだろうから。


「なあ。」


 急にスーノ教官が口を挟む。ブランカと俺は怪訝な顔で見やる。


「まあ、ステータス数値なんて魔児の個性みたいなもんだから、とやかく言う気はしないけどよ。それでも、あれはおかしいと思うんだが。」


 なんだろう。スーノ教官は聖属性以外に俺に変な所を見つけたのだろうか。


「あれって、何の事を言ってるの? スーノ。」

「あれだ。魔力容量が15で、魔力圧量が35って所だ。いかれてると思うぞ。」

「へっ?」


 ブランカも不審がって尋ねると、スーノ教官は、そのおかしな部分を指摘する。俺は指摘の意味が分からず、間抜けな疑問符を口から漏らしていた。・・・俺は冥界に来てから、口を開けば半分は間抜けな声を出している気がする。


「普通、圧量が容量よりデカイ奴なんていないんだよ。いいか、魔力容量ってのは保有魔力量だぞ。魔力圧量はそのうちからどれだけの魔力を魔法行使の際に使えるかって数値だ。つまり、魔力圧量が魔力容量以上あっても意味無いんだよ。樽の中にある酒が魔力容量なら、その酒を掬い出す柄杓が魔力圧量だ。樽よりデカイ桶がついた柄杓を持って来ても樽に入ってた分の酒しか汲み出せないから何の意味も無い。」

「で、でも全魔力をこの一撃にかける!みたいな事ができるわけですよね。」

「ああ。可能だな。でも、魔力圧量が15しかなくても、それは可能なわけだ。35あっても、20の分だけ才質の無駄だ。いや、別にそれはマイナスに働くとか言っているわけじゃない。だから気にしなくても良いがな。俺が言いたいのは、普通こんな事にはならないって事だ。霊体生物であれ、生物だ。無意味な方向への進化は淘汰される。だから、通常悪魔の魔法的成長は、魔力容量の増加に伴って魔力圧量も徐々に引っ張り上げられるように成長するという形だ。その方が才質の無駄は無くなるから、長期的淘汰の波に晒されれば必然的に容量>圧量の成長をする悪魔が生き残る。つまり、オマエはいかれてるって事だ。」


 うわ、なんかスーノ教官が唐突に難しい話を始めた。

 と、ブランカが救援に入る。


「ちょっと、スーノ。ハクアちゃんを虐めちゃだめでしょ。」

「いや、別に虐めているわけでは。吾輩は単に数値がいかれていると言いたかっただけで。」

「別に良いでしょう? それがハクアちゃんの個性なのよ。気にする事無いわ。」

「いや、吾輩も悪いとは言っていないだろう。ちょっと普通じゃないという事を分からせようと解説してやったわけでだな。」

「ならいいわ。」


 スーノ教官がタジタジだ。珍しい。


「なにはともあれ、このステータス表で重要なのは成長を確認するための指標に使えるって事だからね。ハクアちゃん。」

「はい。」

「それじゃ、早速、今日の訓練を始めましょう。ハクアちゃんの梵術、結合梵術の訓練よ。」


 しかし、訓練を始めようとするに当って、何をすべきかから難題である。なんせ俺は勿論、ブランカでさえ、この結合梵術とやらを知らないのである。ただ、ブランカには何か考えがあるのか、いつものように具象梵術の訓練をするのと同じように、乳白色の碗を俺の前に出した。


具象梵術(エンボディブラフマ)梵珠具象(ビードエンボディ)


 ブランカはいつものように詠唱すると自分の碗の中に美しい球体を落とす。


「ちょっと、確認したいのよ。いつもやっているみたいに碗の中に何かを落とそうという気持ちで梵術を使ってみてくれないかしら。」


 ふうむ。例のヘドロに何かあるのだろうか。ブランカが何かあると考えているなら、やってみる他あるまい。ただし、詠唱は変えてみよう。


結合梵術(バンドブラフマ)


 俺は慣れてきた梵糸の紡ぎあげを速やかに終わらせると、右手を碗の上にかざして詠唱する。

 おっ、なんだ? いつも受ける抵抗感がまるで無い。ぎこちなさはあるし、未だ梵糸に迷いのようなものも感じるが、俺の押しだそうとする力の流れに反抗しなかった。これは成功するんじゃないか? 俺の期待の籠る視線の中。


 ベチャ!


 ヘドロが碗の中に落ちた。

 俺は涙目になりつつブランカを見上げる。ブランカはというと、触手の一本をすっと俺の傍まで伸ばしてきた。何をするつもりだろうと思っていると、触手の先端を俺の碗の中に溜まっているヘドロに突っ込んだ。


「あらあら。これはこれは。」


 ブランカは何か分かったらしい。一人で納得したように頷いている。ブランカは触手を碗の中につっこんだまま、俺に向き直る。


「ちょっと見て御覧なさい。」


 ブランカが触手を上に持ち上げる。先端は碗につっこんだままだ。碗が触手と一緒に宙に持ちあがっている。俺には未だピンとこない。


「これね、ひっ付いちゃってるのよ。」

「?」


 ブランカは持ちあげた触手を再び俺の目の前に降ろすと、別の触手で拾ってきた硬質な白色の木の枝を俺に渡す。俺は恐る恐る木の枝をヘドロの中へと突き入れてみた。

 その瞬間、ネットリした感触が伝わって来る。木の枝を引き離そうとすると、粘着質なヘドロが枝を掴んで抵抗する。ユックリ都市化動かない。そして、じきに硬くなっていき、木の枝は完全にヘドロに固着してしまった。これはまるで接着剤だ。


「接着と固着の能力。確かに結合ね。最初の内は、この能力を磨いていくしかないでしょう。」


 接着剤の能力か。やりようによっちゃ、凄く有用だろうとは思うが。魔法の使えるファンタジー世界に来ているのだから、ファイヤーボールとか派手な魔法を撃ってみたいと思っていたのに・・・。なんというか、変な能力を手に入れたものである。少なくともこの魔法自体に攻撃力を求めるのは無理だろうから、悪魔のセオリーらしい武器で防御しつつ魔法で攻撃という方法は取れない。おそらく、今のままだと魔法でトラップを仕掛けつつレイピアで串刺しにするという戦闘方法になりそうだ。やれやれである。


 それから俺はブランカの見ている前で接着の訓練をする事になった。枝と枝を張り合わせたり、石と石をひっ付けたり。俺はチューブからボンドを出す様な感覚で指先から梵糸を出していき、枝や石の表面に塗りつけ、そこに別の石や枝をくっつける作業を繰り返す。しかし6回ほどで梵糸が無くなってしまった。魔力容量が15しかないので仕方ない。


 その後は、ブランカと心霊術の訓練である。ステータス表で思考加速が使えるようになっている事が分かって喜んでいたのだが、その分、ブランカの訓練メニューもきつくなったのでチットも楽にはならなかった。ブランカ曰く、1スルの間に、1000スル分の思考が出来るようになるまではお話にならないのだそうだ。どういう基準で行っているのかは不明である。


 更に、精根尽き果てた後は、何時も通りにスーノ教官の無茶ぶりな訓練メニューをこなして2回程殺されるとその日は過ぎ去った。




申し訳ありませんが、こちらの小説はしばらく停止となります。

ブクマして下さった方、読んで下さっていた方々、有難う御座いました。


ちょっと設定が理屈っぽくなり過ぎたかなと思っています。あるいは詰め込み過ぎなのかもしれません。冥王伝の方も同じ失敗をしている気がします・・・。


ただ、折角色々考えて作った設定ですし、キャラも気に入っているので、もっと文章の表現力や構成力を磨いてから続きを書くか、リメイクするかすると思います。(導入部分と戦闘描写の簡素化は最低限必要なのかなと。)

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