登場人物を覚えてもらう
人間の記憶というのは適当なもので、さっき覚えていたものでも、あまり自分に関係なかったり、興味なかったり、あるいはその場だけ覚えていればいいものだったりすると、すぐにそのことは忘れてしまうのです。
短期記憶と長期記憶というものがあって、その場だけ覚えておけばいいもの、あるいは一時的に必要になる記憶は短期記憶で、ずっと自分が使うものは長期記憶で賄われています。
例えば自分の名前だったり住所だったりは長期記憶でずっと覚えていると思いますが、今日の予定だとか、仕事の内容だとかは次の日になったら忘れているのではないかと思います。
こういう風に、人間の記憶も重要度や印象によって記憶の優先度が決まってくるので、小説においてはできるだけ印象の強い話や印象の強い登場人物を出す必要があります。
特に登場人物を複数出す場合、誰がどんな特徴を持った人だったかわかるように、いろいろと工夫をしなければなりません。
たとえば、こんな工夫をしてみるのはどうでしょう。
・時々、フルネームを出しておく
最初にフルネームを出しておいて、それ以降は愛称だったり名前だけだったり、という登場人物の扱いをする人は多いのではないかと思います。
しかし、自分で書く分は理解できているでしょうが、ほかの作品を読んでいると、「あれ、この人どんな人だっけ」と思うことが多々あると思います。あるいは、突然苗字が呼ばれて、「あれ、誰のことだっけ」と思うことはないでしょうか。
かなり話が進んだ場合は、途中で地の文でもフルネームにしたり、会話の中でフルネームを出したりして、時々登場人物のフルネームを思い出させるようにしましょう。
・身体的特徴は、時々地の文で描写する
登場人物の特徴を、最初にまとめて書いて後は書かない、という人も多いでしょうが、それだと途中で印象が薄くなり、「あれ、どんな格好でどんな髪型だっけ」となる場合が多いと思います。
特に連載形式だと、途中の話から読み始めて登場人物の特徴を忘れていたりすることもあります。
例えば長髪の登場人物だったら、「風が吹くと、彼女の美しい茶色の長髪がなびいた」などと入れることで自然と登場人物の特徴を出すことができますし、あるいは小柄な登場人物であれば、「彼はその小柄な体格を生かし、懐に潜り込んだ」などという描写もできます。
こうやって時々身体的特徴を書いておくことで、読者のイメージを維持し続けることができると思います。
・口調を統一する
登場人物の口調は統一するべきでしょう。
もちろん、会話する相手によって変化させることも必要な場合もあると思いますが、この口調がぶれてしまうと、キャラがぶれてしまうことになります。
できればどんな口調で話すのか、メモを取っておいた方がいいですね。
・性格を一貫させる、極端にする
性格も、あっちこっち変わっていると、キャラクターがぶれてしまいますから、しっかりと性格は作り上げておきましょう。
また、現実では極端な性格の持ち主というのはまれですが、小説内の登場人物は、ある程度極端な方が覚えやすいです。
きっちりとした個性を出すためにも性格は極端に、ぶれないものにしましょう。
書いているときはよくても、読んでみると案外性格を忘れてしまう登場人物。
しっかりと作り上げたキャラクターを活かすためにも、読者に印象付けるように話を作ってみましょう。




