台詞と登場人物の特徴づけ
ただ背景描写だけを描いた小説、というものは恐らくほとんど無く(見たことないだけですが)、小説には必ず「登場人物」が出てきます。人物が猫とか犬とかになってもあんまり変わらないと思いますが、この登場人物が動くことによって、物語が進行していくことが多いでしょう。
この登場人物、漫画やアニメ、あるいはドラマでは顔や髪型、服装や体型でそれぞれ個性を出すことが出来ますが、小説は文字だけの世界です。それで特徴を出そうとすると、なかなか難しいものがあります。
ただ単に登場人物の特徴を書き並べていただけでは、恐らく読者のほとんどは途中で忘れてしまうのではないかと思います。
例えば、「身長175cmの大男、歳は20代後半、長い口ひげを生やしており、短いスポーツ刈り。赤と白のチェックの上着にややくすんだデニムのズボン、ブランド物の黒い靴を履いている」などと書き並べられてはどうでしょうか。途中で読むのが面倒にならないでしょうか。
外見の特徴を描くのは、やはりアニメや漫画といった、イラストでの表現にかなうものはありません。小説という文字の世界ですから、文字で表現できる特徴を描いたほうがいいでしょう。
挿絵を使うという手段もありますが、とりあえずは、文字で表現できる特徴を示す方法を考えてみましょう。
小説で登場人物の人柄を示すものの一つといえば、やはり台詞でしょう。この台詞一つで、その登場人物がどういう人なのか、というものが良く表れます。
この台詞の書き方、さてどう使い分ければよいのでしょうか。
・一人称で使い分ける
日本語には実に様々な一人称があります。「私」「僕」「俺」「拙者」「自分」……
この一人称を使い分けるだけでも、ある程度の書き分けが出来ます。
例えば、「僕」と「俺」であれば、男性キャラクターでも印象が違うのがよくわかります。「わし」と使うと、なんとなく高齢者っぽくなりますよね。「拙者」だと、なんとなく変わり者な気がしてきます。
逆に、あえて女性の登場人物の一人称に「僕」や「俺」を使うことで、登場人物に特徴を持たせることもできるでしょう。読者をミスリードさせる手段にも使えます。
・別の登場人物の呼び方で使い分ける
呼び捨てにするのか、「君」「さん」付けなのか、愛称でよく呼ぶのか。たとえば呼び捨てで呼ぶキャラは活発、強気なイメージがありますし、「君」「さん」付けだとおとなしいイメージが出てきます。愛称で呼ぶのが好きなキャラは、人懐っこいイメージが出てきますよね。
・話し方で使い分ける
丁寧語や敬語で話すのと、タメ語で話すのとでも、印象が違ってきます。また、人によって使い分けると、話している人物との関係や立場なんかも、ある程度分かりやすくなります。
・語尾を固定させる
特徴的な語尾で、キャラ付けをする方法もあります。私の「でこぼこ姉妹の変り種職業」シリーズに出てくるカルチェという登場人物は、「~でふ」という語尾にしてキャラ付けをしています。
ただ、このキャラ付けは安っぽくなりがちなので、何人ものキャラに対して使うとあまりいい印象は持てなくなると思います。
・決め台詞をつける
「このキャラクターならこの台詞!」というのを考え、要所要所で言わせる、という方法もあります。ただ、他のキャラ設定と併用してこそ効果があるのではないかと思います。
・思考を偏らせる
一つの物の考え方は、人によって様々です。たとえばやたら否定的だったり、何でも受け入れたり、何でも料理に例えたり、といった具合です。
そういったことを、台詞に取り入れてみることも一つの手段です。
まだまだたくさん方法はあると思いますが、これらを併用するだけでも結構バラエティに富んだキャラクターの設定が出来上がると思います。
ただ、リアリティを出すためには、身近にいる人の特徴を真似てみる、というのも良いと思います。 周りにいる人はもちろん全員が全員同じではありませんから、いろいろ特徴を拾ってみると良いでしょう。
その中で、「この人のしゃべり方は取り入れよう」「この人の台詞はよく聞くな」といったところを組み合わせ、オリジナルキャラを作るのも良いと思います。
今まで出ている小説やアニメでも、身近な人をモデルにしたキャラというのが結構あると思います。
登場人物は小説の華ですから、是非とも個性豊かなキャラクターにしたいものです。