95 赤ジェネルをもらってみた
「おねえちゃん。これ苦い」
「頑張って飲みなさい。飲んだ後はちゃんと寝てなさい」
ルリアはまずそうな表情をしながらも薬を飲んだ。
薬を飲み終わったルリアをセリアは寝かしつける。
しばらくするとルリアの寝息が聞こえてきた。
セリアは自分の分のヤギの乳が入ったグラスを持って俺の前の椅子に座る。
「ふう、これでルリアもきっと病気が治るわ。ハリーさん、今回は本当にありがとうございました」
ペコンとセリアは俺に頭を下げる。
泥棒したことは悪いことだけどルリアには俺も元気になってもらいたいし俺も他国で目立つことはできないからこれで良かったことにしよう。
「ううん。俺はセリアが約束を守っていつかあのお店の人に代金を支払ってくれれば別にかまわないよ」
「はい。約束は守ります。ところでハリーさんはこれからどちらへ行くんですか?」
「ハルファ王国のハルシンだよ。俺は隊商に雇われている人間なんだ」
「隊商?…それなら今回のお礼にお渡ししたいものがあります」
セリアは椅子から立ち上がり棚の引き出しから何かを取り出してくる。
テーブルの上に置かれたのは小箱と何か地図のような紙だ。
「この箱開けていいの?」
「どうぞ」
俺が小箱を開けるとそこには赤い色をした不思議な光を放つ石が入っていた。
「これはなに? セリア」
「私の父がくれたハルファ王国でも希少な『赤ジェネル』です」
ジェネルって確か高額で取引されてるハルファ王国の鉱石だよね。
『赤ジェネル』って言ってたけどジェネルって種類があるのかな。
「『赤ジェネル』ってことは他にもジェネルの種類があるの?」
「はい。一般的に出回っているジェネルは青く輝く『青ジェネル』です。でも『赤ジェネル』はとても珍しくてハルファ王国でも所有しているのは王族くらいだって父が言っていました」
王族しか所有できないくらいの貴重な物か。
それならかなり高く売れそうだけど何でセリアは生活に困っているのにこの『赤ジェネル』を売らないんだろ?
「これって高く売れるんでしょ? それならこれを売ればルリアの薬になる野菜も買えたんじゃないの?」
するとセリアは首を横に振る。
「高く売れるから売れないんです。私のような者がハルファ王国の王族しか持ってないような物を売りに出したら盗んだ物だって言われて捕まってしまいます」
なるほど。セリアには失礼かもだけどその可能性は高いよね。
でもセリアのお父さんはどうやって『赤ジェネル』を手に入れたんだろ?
まさかお父さんも泥棒したのかな?
「セリアのお父さんはどうやってこれを手に入れたの?」
俺が訝し気に聞くとセリアは慌てたように俺に言う。
「か、勘違いしないでください! 父は泥棒なんてしてませんから! 父は偶然『赤ジェネル』がある洞窟を見つけてそこで手に入れたんです」
「洞窟?」
「はい。これがその『赤ジェネル』を手に入れた洞窟の位置がある場所を父が書き記した地図です」
今度はセリアは地図を俺に見せてくる。
地図にはある場所に印がついていた。
ここが洞窟の場所ってことか。
「俺に渡したい物ってこの『赤ジェネル』と地図のこと?」
「そうです。父は自分に何かあったらこれをハルファ王国の国王様と取引きしてお金にしろって言いましたけど私は国王様と取引きするような勇気もありませんし貧しいなりにここでの生活が気に入ってるんです」
「でも国王様とうまく取引きすればセリアはお金持ちになれるかもだよ?」
ジルヴァニカ帝国でも鉱石の新しい鉱脈が見つかる度に大きな利益を生んでいる。
この地図がハルファ王国の国王も知らない鉱脈がある洞窟の場所を示しているなら喉から手が出るほど欲しいはずだ。
「いえ、私は国王様と取引きできるような身分ではありませんし。もし仮に国王様に取引きを持ちかけてもきっと国王様に地図を取られて秘密を守るために最悪殺される可能性も…」
う~ん、確かにその可能性はあるか。
「でもハリーさんは隊商に雇われているなら商人なんですよね? 商人のハリーさんならハルファ王国の国王様とうまく取引きできると思うんでこの地図をハリーさんの商売に役立たせてください」
え? 俺は隊商に雇われているけど商人じゃなくて護衛としてなんだけど。
だけどセリアの身分で国家機密になりそうな物を持っているのは逆にセリアの身に危険が及ぶ可能性はあるよね。
この地図と『赤ジェネル』は俺が持っておいた方がいいかもしれない。
「分かったよ。この『赤ジェネル』と地図は俺がもらうよ」
「ありがとうございます! きゃあ!」
セリアが勢いよくテーブルに両手をついて立ち上がったのでグラスが倒れてグラスに入っていたヤギの乳がセリアの服にかかってしまう。
「つ、冷たい! やだ! 服が濡れちゃったわ!」
濡れた服の胸の部分が透けてセリアの胸の形が見える。
その姿に俺の欲望が刺激された。




