74 セラフ神にお祈りしてみた
「マリンはこれからどうするの?」
「私はラーシエルに戻るわ。私はラーシエルでの仕事が基本なの」
「そうなんだ」
明け方近くまで俺はマリンに口止め料を身体で支払った。
マリンが息も絶え絶えで「もうらめぇ…」と言って許してくれてから寝たから今は遅い朝食を食べている。
「ハリーはセラフ大教会に行くの?」
「うん。その予定だよ。あとはセラートの街も見たいし」
「そうなのね。セラフ大教会はセラートの北側にあるわ。大きな白く輝く建物だから行けば分かるわよ」
「分かった。街の北側だね」
食事が終わり俺は準備をして宿屋の前でマリンと別れることになった。
「それじゃ、またどこかで会った時はよろしくね。マリン」
「ハリーも気をつけてね」
俺はマリンとチュッと口づけを交わした。
マリンと別れて俺はゆっくりとセラートの街中をセラフ大教会を目指して歩く。
そしてふと昨日貰った初仕事の報酬のことを思い出した。
懐から小さな袋を取り出し中に入ってる数枚の銀貨を見る。
せっかく自分で稼いだ初めてのお金だもんね。
何に使おうかな。
生活費自体のお金は旅の前にたっぷり用意してあるけどやはり自分で稼いだお金だと思うと特別なお金に感じる。
これがお金を稼ぐってことなんだね。
俺も少しは平民らしくなってきたかな。
これからはもっと立派な平民になって女とヤリまくろう!
そう言えばローゼン将軍が前に自分で初めて稼いだお金は感謝の気持ちを込めて自分の親に贈り物を買ってあげたって言ってたな。
でも俺の両親は既に亡くなっているから弟のセルシオに栞以外の物を送ってあげればいいか。
先代皇帝だった父は10年前に亡くなり俺とセルシオの母も3年前に病気で亡くなった。
俺の一番身近な家族はセルシオなので俺はセルシオに初めて稼いだお金で贈り物をすることを決める。
何がいいかな?
お店を見ながら俺が歩いていると一人の茶髪の少女が何やら腰を低くして地面を見ている。
少女の年齢は俺と同じくらいに見えた。
「無いわ!どこに落としたのかしら?」
どうやら何かを落として探しているようだ。
困ってる人を助けるのは皇帝を辞めても当たり前だよね。
俺はその茶髪の少女に声をかけた。
「あの、何か探し物ですか?」
「え?」
茶髪の少女が顔を上げて俺を見る。
茶色い長い髪は珍しくないけどその少女の瞳の色に俺は驚いた。
うわ! 綺麗な不思議な瞳!
俺を見る少女の瞳は青銀色だったのだ。
今までこんな不思議な瞳の人間には会ったことがない。
「えっと…あ、あなたは?」
「あ、いきなり声をかけてごめんね。俺は旅人のハリーって言うんだ。君が何か困っているみたいだったから手伝えないかと思って」
「す、すみません。ありがとうございます、ハリーさん。私はメラニーと言います」
「俺のことはハリーでいいよ。俺もメラニーって呼んでいい?」
「あ、はい」
メラニーは不思議な瞳だけでなく顔立ちも整っていて将来は男が放っておかないぐらいの美人になるだろう。
「それでメラニーは何を探していたの?」
「父に貰った指輪です」
「お父さんに貰った指輪?」
「はい。私は田舎の町の父がいない家庭で育ったんですが私の母が三か月前に亡くなる時に指輪を私にくれて「これはお父さんがあなたに残した指輪よ。あなたのお父さんは本当はセラートで生きてるの」と言われたんです」
「もしかしてその指輪を持ってお父さんを探しにセラートに来たの?」
「あ、はい。そうなんです。でも手がかりになる指輪をこの辺りで落としたみたいで…」
う~ん、お父さんを探す手がかりの指輪か。
それは大事なものだよね。
「俺も手伝うよ」
「え? でもご迷惑じゃ…」
「大丈夫。俺は時間だけはあるからさ。指輪の特徴を教えて」
「えっと…紫の宝石のついた指輪です」
俺はメラニーから指輪の特徴を聞いて一緒に近くの地面を探す。
だがなかなか見つからない。
そこでお昼の時間になった。
セラートの街に鐘の音が響く。
すると街中を歩いていた人はその場に跪いて両手を合わせて街の北側に向かってお祈りを始めた。
メラニーも指輪探しを中断してお祈りをしている。
これがセラフ信教のお祈りなのか。
よし! メラニーの指輪が見つかるように俺もセラフ信教の女神様にお願いしよう!
俺もその場で跪いて皆と同じようにお祈りをした。
セラフ神様。メラニーの指輪が見つかりますように。
お祈りの時間が終わり鐘の音は止まった。
俺が目を開けると俺の前方の道でキラリと何かが光る。
もしかして! あれは!?




