54 セラフ法王国行きの船に乗ってみた
「それではハリー殿。旅の無事を祈っております」
「ありがとうございます。ドルデン皇帝陛下」
俺は朝になりドルデン皇帝と別れの挨拶をする。
この宿から定期船の乗り場まではゼールデン皇子が馬車で送ってくれることになった。
「ではゼールデン。ハリー殿をきちんと定期船に乗船させるのだぞ」
「はい。承知しました、父上。ハリー殿。では参りましょうか」
「はい。お願いします」
ドルデン皇帝が用意してくれた馬車にはアイデ帝国の皇帝家の紋章が付いている。
あれ? この馬車って俺が頭を下げた貴人の馬車だよね。
あの時に馬車に乗ってたのはドルデン皇帝とゼールデン皇子だったのか。
俺はゼールデン皇子と一緒に馬車に乗り込んだ。
港には西大陸のセラフ法王国行きの大きな定期船が停泊している。
ローゼン将軍は定期船に乗るために準備をしている人々の中にハリードルフがいないか探していた。
「う~む、陛下は昨日の船で西大陸に行ったことも考えられる。一応、私もセラフ法王国までの切符を買っておくか」
切符を購入した後もローゼン将軍は定期船乗り場付近を中心にハリードルフの探索を行う。
乗り場付近は大変な混雑だ。
そこへ人波をかき分けるように豪華な馬車が近付いて来るのが見える。
ローゼン将軍はその馬車を見てハッとして建物の陰に隠れた。
その馬車にはアイデ帝国の皇帝家の紋章が描かれていたのだ。
ローゼン将軍がアイデ帝国に入国したことは秘密にしている。
なぜならジルヴァニカ帝国の王国軍のトップであるローゼン将軍が他国に入国したことがバレたらハリードルフが勝手に入国した時と同じくらいにその国に不信感を抱かれてしまうからだ。
そのことを考えてローゼン将軍はリリアンを出発する際に偽名の身分証明書を作成して持っていた。
以前ハリードルフがアイデ帝国に正式訪問した時にハリードルフの護衛としてこの国の皇族とも顔を合わせている。
なのでアイデ帝国の皇族と顔を合わせたらローゼン将軍の正体がバレかねない。
馬車はローゼン将軍が隠れた建物の側を通過して定期船の方に行ってしまった。
「アイデ帝国の皇族が定期船に乗るのだろうか。見つからないように気を付けねばな」
建物の陰から出て来たローゼン将軍は再びハリードルフを探し始めた。
「定期船の近くまで馬車で行けるんですか?」
「ええ、そうですよ。ハリー殿。貴族室を使う者たちは平民とは違う乗船口を使います」
俺が馬車の中でゼールデン皇子に尋ねると親切にゼールデン皇子は答えてくれる。
「乗船開始も平民よりも先に乗船することになりますし下船する時も平民より先に下船できます」
へえ、そうなんだ。
やっぱり貴族や皇族は特別扱いか。
「他にも貴族室を使う人はいるんですか?」
「もちろんです。貴族室は何部屋かありますし。アイデ帝国の貴族がセラフ法王国と行き来することは珍しくありませんから」
そんなことを話していると定期船のすぐ側で馬車が停まった。
「どうぞ。父上からハリー殿が無事に乗船されたかまで確認するように言われてますから乗船口まで一緒に行きましょう」
「はい。お願いします」
ゼールデン皇子とともに馬車を降りると乗船口の所に立派な船員服を着た男性がいる。
「ハリー殿。この定期船の船長のバリドナ船長です。バリドナ船長、こちらが連絡しておいた父上のご友人のハリー殿です。セラフ法王国までのお世話をお願いします」
「承知しました。ゼールデン皇子殿下。初めましてバリドナと申します。船の中ではハリー様が不自由なことがないように手配いたします」
バリドナ船長は40歳ぐらいの男性だ。
「ハリーと申します。よろしくお願いします」
俺はニコリと笑みを浮かべて挨拶をする。
「では船室にご案内します。どうぞ」
「はい」
バリドナ船長の案内で俺は定期船に乗り込んだ。
『これからセラフ法王国行きの乗船を開始します。切符をお手元にご用意の上順番に乗船してください』
定期船への一般客の乗船の案内があり人々は次々に定期船に乗船して行く。
「うむ。結局、陛下の姿は見つけられなかったな。おそらく昨日の定期船で既に西大陸に向かったのかもしれん。仕方ない。私もこの船に乗船してセラフ法王国に向かうか」
ローゼン将軍は他の一般客とともに定期船に乗り込んだ。
定期船はセラフ法王国に向けて出発をした。




