110 ハルファ王国の王宮に入ってみた
「ローゼンさん。ご苦労さん。おかげで助かったよ」
「いえいえ、こちらこそ雇ってもらって助かりました」
ローゼン将軍はジャルデルの隊商と共にハルシンに着いた。
荷物持ちとして雇われたおかげで無事にジャルデルの隊商と一緒に砂漠を越えられたローゼン将軍は荷物を置いて一息つく。
そこに一人の男がやって来た。
「ジャルデル。ご苦労だったな。旅は順調だったかい?」
「これはモーガン様。はい、全ての荷物を無事に運んで来ました」
「そうか。では休んだら商売を始めるから準備を頼むぞ」
「はい。承知しました」
モーガンが去るとジャルデルはローゼン将軍に小さな袋を渡した。
「ここまでの荷物持ちの賃金だ」
「ありがとうございます。ジャルデルさん」
ジルヴァニカ帝国から商会を通じて必要なお金は送金してもらっているのでローゼン将軍は本当は賃金などいらないのだが受け取らないと怪しまれるので素直に受け取った。
そしてジャルデルにお礼を言ってローゼン将軍は隊商から離れてハルシンの街を歩き始める。
「さて、とりあえずは無事にハルシンに着いたことをラッセンド宰相に知らせるか」
ローゼン将軍は送便屋を探すことにした。
「ここがハルファ王国の王宮だな」
俺は高い石壁に囲まれた宮殿までやって来た。
「入り口はどこだろう?」
石壁に沿って歩きながら王宮の入り口を探す。
すると大きな門らしき場所で多くの人々が集まっているのを見つけた。
どうやらここが入り口みたいだけどこの人々はみんな王宮に用事があるのかな。
門に近付くと門番が大きな声で人々に話しかけている。
「今からゾーマ帝国からの使節団が到着する。使節団が門を通過するまでは一時王宮への出入りを禁ずる!しばらく待つように!」
確か、ゾーマ帝国って西大陸の西側に位置する西大陸最大の国だったよね。
その国から使節団が到着するまで王宮には入れないのか。
ハルファ王国が一般の国民より他国の使節団を優先するのは当然のことだ。
使節団ということはその国の代表だから何か重要な話し合いがあるのかもしれないし使節団に対して失礼なことをすれば国同士の揉め事にもなりかねないのだから。
俺が皇帝をやっていた時も周辺の国からよく使節団が来ていた。
その度にジルヴァニカ帝国の皇宮では歓迎の宴が開かれたものだ。
仕方ない。ゾーマ帝国の使節団が通り過ぎるのを待ってから王宮に入れてもらおう。
足止めをされている人々と一緒に俺はしばらく門の側で待機する。
すると使節団だと思われる集団が姿を現した。
ラクダに大きな荷物を背負わせてゾーマ帝国の旗を持った兵士を先頭に使節団が王宮に入って行く。
周囲の国民は頭を下げているので俺も頭を下げた。
チラリと使節団を見ると貴人が乗っていると思われる人が担いでいる輿が通って行く。
あの輿の中にいるのが大使かな。
ラクダの荷物はオスカス国王への贈り物だろうな。
使節団が無事に門を通過したので再び門番は王宮に用事のある一般の国民への対応を始めた。
俺もその列に並んでいたがけっこう人が多いので時間がかかりそうだ。
う~ん、あまりジーフ王子を待たせたくないんだけどなあ。
「ハリーさん! ここにおられましたか」
「え?」
自分の名前を呼ばれて振り向くとそこにはヤクルがいた。
「ヤクルさん!」
「ジーフ王子様にハリーさんを迎えに行くようにと言われて来たのでお会いできて良かったです」
「すみません。ちょっと用事があって遅くなってしまって…」
まさかキキとヤッて寝坊したなんて言えないので俺は言葉を濁す。
「いえ、こちらがお願いして王宮に来てもらうことになってたんですから気にしないでください。私が案内しますから王宮に入りましょう」
「はい。お願いします」
ヤクルが一緒だったので俺は門番の受付を通ることなく王宮へと入れた。
宮殿は広くて廊下も豪華な装飾品で飾られている。
やはりハルファ王国は豊かな財力があるんだな。
ヤクルに連れられて俺はある部屋の前に来た。
「すみません。本当ならオスカス国王陛下がすぐにお会いする予定だったのですがゾーマ帝国からの使節団が突然来訪して来ましてオスカス国王陛下とジーフ王子様は使節団を迎えるため他の宮殿に行っております。ハリーさんとの謁見は明日になるので今日はここにお泊りくださいとのオスカス国王陛下のお言葉です」
申し訳なさそうな顔をしてヤクルが部屋の扉を開けた。
そこは豪華な部屋で大きなベッドやソファがあり壁にも豪華な飾り用の剣や絵が飾られている。
「ゾーマ帝国からの使節団は急にやって来たんですか?」
俺はソファに座りながらヤクルに訊いた。
普通は使節団が他国を訪れる時は事前に連絡があるはずなのだ。
「はい。ゾーマ帝国は私が言うのもなんですが少々常識外れな行動をする国でして…。しかし西大陸では一番の大国なのでこちらも強くは出れないのです」
ヤクルは困ったような表情をしている。
ふ~ん、ゾーマ帝国は大国だから強気な態度の国なのかな。
そういう国との付き合いって大変なんだよね。
中央大陸ではジルヴァニカ帝国が最大の国だったので面と向かってジルヴァニカ帝国と対立する国はなかったがそれでも文化の違いから付き合うのが大変な国はあった。
皇帝経験者の俺はオスカス国王の苦労が分かるのでなんとなく気の毒に思ってしまう。
「それでは後で食事などもこの部屋に運ばせますのでごゆっくりお過ごしください」
「はい。分かりました」
ヤクルが部屋を出て行ったので俺は一息ついた。
オスカス国王との謁見は明日か。
さて地図と引き換えに何をもらおうかな。
そう考えていると静かに扉が開いて女が部屋に入って来る。
白い布地に金糸で刺繍した豪華な服を着た20代半ばくらいの女性。
金髪は長く瞳は青くとても美人だ。
「あの、どちら様ですか?」
「シー! 静かに」
女は指を口に当てて静かにするようにと言って俺を見た。
誰だろう? この女。




