第二十四話 日々を送る
さて、彼等は出会った。
月の王子さまに似た皇月レノン。
爽やかな人気者の速水颯太。
若葉春流の知らない、彼等の胸中とは……。
蝉の鳴き声が耳へと掠れて入っていく中、俺は手を差し出した。
「俺、速水颯太、よろしく」
「『ほら、握手だってハヤミくんが』」
彼等の会話の術はチリチリと何かを焼き付ける。分かっているんだ。アレは言葉だということには、コウヅキだとかいうあの転校生には必要だということが。
若葉春流はボランティア部に入っていて、やるべきことや知りたいことに前進する子だ。それが良いなって、俺は思う、けど。
目の前にいる少女の日に焼けた肌の小さな手が、あの青白い手の中に入っていく。それは一心の優しさを受け取っているようで。
だからかな。
思うけど、俺はコウヅキが気に入らないんだ。
白檀香が漂う。懐かしいあの家屋の匂いだと身を引き締めてしまう僕を、Fことワカバが手を引いて連れていく。
これは僕達の間では普通のこと。その普通さが面映いようで、苦しくて、情けなくて。それは、きっと、本来の意味での“普通”ではないからだ。
彼女が動く度に緑色を捉えることができるのに、その先も周りも見えない。
だが、僕とFを取り巻く人々は、彼女の姿が見えるのだろう、彼女の声も聞けるのだろう。アイツが僕に与えた驚きも、呆れも、喜びさえも、きっと先に彼等に届いていることなんて考えるまでもない。
『よろしく』
目の前にいるハヤミという人にも、ワカバハルルの様子が目に映って聞こえている。
それが、何となく羨ましく思える。
……のは気の所為だろう、恐らくは。
若葉春流に知らない彼等の胸中。
一方は焦げていくような想い。
もう一方は羨望で。
そんな彼等は出会った。




