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顔なしゴースト『ワガハイ』の、つれづれならない国境なき冒険  作者: 渋谷 恩弥斎
[第1章 第3節] ガレッツ公国>ガレッツ城下町
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002. 到着、ガレッツ城下町

「ほら、着いたよ、キューイ」

「キュイ、キュイ」


 吾輩が呼びかけると、キューイは興奮気味に翼をばたつかせた。


 ほとんど一日中歩き続け、やっと到着――ここが、この国の中心、ガレッツ城下町だ。


 すっかり夜になってしまったけれど、さすがは都。

 灯りによって彩られた通りには、笑顔で行き交う人々の姿もある。

 夜遊びに慣れている者は、これからの時間が楽しいんだろうな。


「よしよしキューイ。君はきっと、こういう場所は初めてだよね? 町の散策ついでに、奥の方へ行ってみ――」

「はい、ストップ、ワガハイくん」


 キューイを連れだって歩こうとすると、クーリアが吾輩を制止する。


「ん、どうしたのさ?」

「確認だけどワガハイくん、お金は持ってる?」


 何やら鋭い目つきで、クーリアが吾輩を見ていた。


「……いや、そういえば、まったく」

「そうだよ。ワガハイくんは、すっからかんの無一文――つまり、このパーティーで持ち合わせがあるのは、もう私しかいないってことなんだよ」

「でも、それに関しては、クーリアに原因の発端があるんだけどね」


 オーヌの町での一件。

 濡れ衣で投獄されたあげく、手持ちの硬貨は、すべては没収されてしまったから。


「過ぎた話は忘れる、忘れる。どうせ元々、たいしたお金なんてなかったでしょ、ワガハイくん?」

「まぁ基本的に、吾輩はその日暮らしだからね」


 野宿でも、十分に休めるタイプだし。


「ほら、そうでしょ。なら、いくら強いワガハイくんでも、事実上は私に養われているみたいなものなんだから」

「それはどうも」

「ワガハイくんのせいで、今の私は盗賊活動ができないし」

「それは、これからもしなくていいよ」

「町や村に滞在するには、少なからずお金が必要になる。私だって裕福な旅人じゃないんだし、とてもぜいたくなんてさせてあげられないんだから」

「……世知辛い話だね、何とも」


 正論すぎるから、文句も出てこないけれど。


「キュイ?」


 こういうこととは無縁だったはずのキューイは、首を傾げるだけだ。


「とりあえず、今は私の持ち合わせでやりくりするしかないの――ということで、さっそく安宿探し。都にだって、庶民的なところはあるはずだからね」

「了解」


 吾輩が答えると、なぜかキューイも、素直にうなずくような仕草を見せる。


「キュイ」


 この新しい仲間は、すでに吾輩の貧乏旅に慣れてくれたらしい。

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