002. 到着、ガレッツ城下町
「ほら、着いたよ、キューイ」
「キュイ、キュイ」
吾輩が呼びかけると、キューイは興奮気味に翼をばたつかせた。
ほとんど一日中歩き続け、やっと到着――ここが、この国の中心、ガレッツ城下町だ。
すっかり夜になってしまったけれど、さすがは都。
灯りによって彩られた通りには、笑顔で行き交う人々の姿もある。
夜遊びに慣れている者は、これからの時間が楽しいんだろうな。
「よしよしキューイ。君はきっと、こういう場所は初めてだよね? 町の散策ついでに、奥の方へ行ってみ――」
「はい、ストップ、ワガハイくん」
キューイを連れだって歩こうとすると、クーリアが吾輩を制止する。
「ん、どうしたのさ?」
「確認だけどワガハイくん、お金は持ってる?」
何やら鋭い目つきで、クーリアが吾輩を見ていた。
「……いや、そういえば、まったく」
「そうだよ。ワガハイくんは、すっからかんの無一文――つまり、このパーティーで持ち合わせがあるのは、もう私しかいないってことなんだよ」
「でも、それに関しては、クーリアに原因の発端があるんだけどね」
オーヌの町での一件。
濡れ衣で投獄されたあげく、手持ちの硬貨は、すべては没収されてしまったから。
「過ぎた話は忘れる、忘れる。どうせ元々、たいしたお金なんてなかったでしょ、ワガハイくん?」
「まぁ基本的に、吾輩はその日暮らしだからね」
野宿でも、十分に休めるタイプだし。
「ほら、そうでしょ。なら、いくら強いワガハイくんでも、事実上は私に養われているみたいなものなんだから」
「それはどうも」
「ワガハイくんのせいで、今の私は盗賊活動ができないし」
「それは、これからもしなくていいよ」
「町や村に滞在するには、少なからずお金が必要になる。私だって裕福な旅人じゃないんだし、とてもぜいたくなんてさせてあげられないんだから」
「……世知辛い話だね、何とも」
正論すぎるから、文句も出てこないけれど。
「キュイ?」
こういうこととは無縁だったはずのキューイは、首を傾げるだけだ。
「とりあえず、今は私の持ち合わせでやりくりするしかないの――ということで、さっそく安宿探し。都にだって、庶民的なところはあるはずだからね」
「了解」
吾輩が答えると、なぜかキューイも、素直にうなずくような仕草を見せる。
「キュイ」
この新しい仲間は、すでに吾輩の貧乏旅に慣れてくれたらしい。




