↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴ・ライズ ―最強の守護者を目指す少年と、十の星辰の絆―  作者: 岡山ミロウ
第4章 ──「カイトと、純粋な誓い(前編)」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/66

第1話 ──「サボり魔の、守護者」


 守護者本部の食堂は、昼下がりの柔らかな光に満ちていた。


 大きな窓から差し込む日差しが、長いテーブルの木目をあたたかく照らしている。


 あちこちで食器がカチャカチャと鳴り、湯気を立てるスープの匂いが、賑やかな話し声と一緒に天井のほうへ昇っていく。



 その一角で、ドラゴたちは少し遅めの昼食をとっていた。




 「しっかしまあ……平和っすねえ」




 間延びした声が、のんびりと漏れた。



 声の主はカイト。


 椅子に深く背中をあずけ、半分閉じかかった眠たげな目で天井をぼんやり眺めている。


 腰に下げた水筒が、椅子の脇でだらりと揺れていた。




 「しばらく任務も入ってないし、おかげで連休っす。あー、サイコー。こういうのを幸せって言うんすよ」




 その向かいで、サシャがスプーンを止めた。


 黒髪の隙間から、緑色の瞳がじとりとカイトを見る。




 「あんたって、ほんとやる気がないわよね。いっつも休むことばっかり考えてるじゃない。それでも守護者?」




 「そりゃそっすよ」




 カイトはまったく悪びれない。むしろ胸を張るくらいの勢いだった。




 「人間、ほどほどが一番なんす。無理をせず、必要以上に働かない。これがおいらのモットーっす」




 「はぁ……」




 サシャの口から、深いため息がこぼれた。


 その隣で、麺をずるずるとすすっていたトジが顔を上げる。




 「じゃあさ、カイト。なんで守護者になったの?」




 箸を持ったまま、不思議そうに首をかしげた。




 「守護者って、結構ハードな仕事だと思うけど。命がけだしさ」




 カイトは器に残ったスープを飲み干してから、にやりと笑った。




 「もちろん――いずれ『警護隊』に入って、田舎のほうでのーんびり暮らすためっす」




 「警護隊?」




 ドラゴが大盛りの皿から顔を上げた。口の端に米粒をくっつけたまま、きょとんとしている。



 「あんたは、相変わらず常識がないわね……」




 サシャが呆れたように呟く。




 「守護者ってのは、ざっくり三つに分かれてるんす」




 カイトが指を一本ずつ立てていく。




 「偉い人を護る『護衛隊』。魔獣とか賊をぶっ倒しに行く『討伐隊』。そんで、街とか大事な場所を見張る『警護隊』。ある程度、経験を積むと、このどれかに配属されるってわけっす」




 「で、おいらは迷わず警護隊一択っすね」




 カイトの目が、うっとりと遠くを見た。




 「敵なんてめったに出ない、のどかーな田舎の街にでも配属してもらって。事件もない、魔獣も来ない。縁側で日向ぼっこでもしながら、のーんびりスローライフっすよ」




 「へえー! そんな先のことまで考えてるんだ。すごいね、カイト!」




 トジが素直に目を輝かせる。




 「どこがすごいのよ!」




 すかさず、サシャの鋭いツッコミが飛んだ。




 「ただ暇なところに行って、楽したいだけでしょ!」




 「人聞きが悪いっすねえ……」




 カイトは頭の後ろで手を組んで、ますます椅子に沈み込んだ。




 「だったら、オレは全部の隊を極めてやる!」




 ドラゴが勢いよく立ち上がった。後ろの椅子がガタンと倒れる。

 



 「護衛も討伐も警護も、ぜーんぶだ! そんで世界No.1の守護者になる!」




 「そんなの無理に決まってるでしょ!」




 サシャが額に手を当てた。




 「全部とか言ってる時点で、何にも分かってないわね……」




 「うっせー! やるって言ったらやるんだよ!」




 わいわいと言い合うドラゴとサシャ。


 トジが苦笑いでそれを眺め、カイトは「仲がいいっすねえ」と他人事のようにあくびをひとつ漏らした。



 窓の光の中、のどかな昼の時間がゆっくりと流れていく。


 ――そんな空気を、不意に断ち切る足音があった。



 食堂の扉が開く。


 入ってきたのは、教官・パウルだった。



 厳しい顔つきで食堂をぐるりと見回し、誰かを探すようにキョロキョロしている。


 そして、その視線がぴたりと止まった。



 ドラゴたちのテーブル――いや、その中の一人に。


 パウルは大股で歩み寄ると、カイトの肩をがしりと掴んだ。




 「カイト。お前に新しい任務だ」




 「……は?」




 カイトの眠たげな目が、ぱちりと開いた。




 「ちょ、ちょっと待つっす! なんでっすか! しばらく休みのはずじゃ……」




 「新しいのが入ったんだよ」




 パウルはあっさり言い放つ。それからドラゴとサシャのほうへ視線を移した。




 「それから――トジは明日から別の任務だったな。だが、ドラゴとサシャは空いてるはずだ。お前らも一緒に来い」




 「「えっ!?」」




 ドラゴとサシャが、思わず顔を見合わせる。




 「おいおい、何の話だよ教官」




 「いいから来い。説明は向こうでする」




 有無を言わさぬ口調だった。




 「……なーんか、嫌な予感がするっす」




 がっくりと肩を落とすカイトの背中を押すように、パウルはもう歩き出していた。



◆◆◆


 連れてこられたのは、本部の奥にある一室だった。


 ドラゴたちが足を踏み入れた途端、ぴりっと張りつめた空気が肌を刺した。



 中には、見覚えのない先輩守護者が三人。


 そして、壁にもたれて腕を組む、ガロウの姿もあった。




 「……お前もかよ、ガロウ」




 ドラゴが声をかける。


 だがガロウは、鋭い眼光をちらりと向けただけで、何も答えなかった。



 ただならぬ雰囲気に、ドラゴたちは思わず首をかしげる。




 「よし、揃ったな」




 パウルが部屋の中央に立ち、低く言った。


 先輩守護者の一人が、不思議そうに口を開く。




 「パウルさん。今回はずいぶん新人が多いみたいですけど……いったい何の任務なんです?」




 「今から説明する」




 パウルは、一度言葉を切った。


 そして、隣の部屋へと続く扉のほうへ、ゆっくりと身体を向ける。


 その横顔が、わずかに引き締まった。




 「だが――その前に」




 パウルは大きく息を吸い込み、扉の向こうへと声を張り上げた。




 「入ってきてくれ!」



第4章が始まります。

引き続きよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。