↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴ・ライズ ―最強の守護者を目指す少年と、十の星辰の絆―  作者: 岡山ミロウ
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/25

第3章 - 第1話



 「おい、新人! そっちに一体行ったぞ!」




 「おう! 任せろ――」




 赤い髪の少年が、地を蹴った。


 大剣に、赤い魔力が渦を巻く。


 逆立った剛毛のような野犬が、牙を剥いて飛びかかってきた。




 「『竜の爪』!」




 振り抜かれた刃が、空を切り裂く。


 斬撃は、魔獣化した野犬を正面から捉えた。


 その身体を一閃で断ち、獣は力なく地面へと転がっていく。



 少年――ドラゴは、大剣を肩に担ぎ、あたりを見回した。周囲には、すでに事切れた野犬が何頭も横たわっている。




 「……なんだ、もう終わりか」




 物足りなさそうに、鼻を鳴らす。



 あの初任務から、二カ月が過ぎていた。


 王都近郊の渓谷で繰り広げた、賊たちとの死闘。


 あの日々が遠い昔のように、守護者たちの毎日は、穏やかに進んでいる。



 試験を勝ち抜いた新人十人が、同じ任務に就くことは、もうほとんどない。


 多くて四、五人。


 それぞれが先輩守護者のもとで小隊に組み込まれ、要人の護衛や、魔獣の討伐、街の見回りをこなす日々だ。


 今日、ドラゴが割り振られたのは、街道を荒らす野犬の群れの討伐だった。




 「お疲れさん。近くに魔獣の反応はないし、任務はこれで完了だな」




 先輩守護者の一人が、汗を拭いながら歩み寄ってくる。




 「そうか……俺としちゃ、もう少し暴れたかったけどな」




 大剣を鞘に戻しながら、ドラゴが不満げに漏らした。




 「はははっ、さすが若いだけあって、力が有り余ってるな」




 先輩は、腹の底から愉快そうに笑った。




 「まあ、こういう任務を続けていれば、そのうち、どデカい任務だって任されるようになるさ。気長にがんばれよ、新人!」




 「ふーん、そういうもんか」




 ドラゴは、燃えるような赤い髪をがしがしと掻いて、口の端を上げた。




 「なら、さっさと慣れて、早くすげえ任務をやってみてえな」




 その顔には、退屈すら楽しむような、不敵な笑みが浮かんでいる。


 新人とはいえ、こうした任務にも、少しずつ体が馴染み始めていた。





 一方、同じ頃。王都の、また別の一角。


 穏やかな昼下がりの街並みを、グレンは見回っていた。


 組んでいるのは、気のいい先輩守護者が一人。


 石畳の通りを歩いていると、一人の老婆が困り顔で駆け寄ってきた。




 「守護者さま、すみません。うちの猫が、屋根から降りられなくなっちまって……」




 見上げれば、民家の屋根の縁。一匹の白い猫が、心細そうに鳴いていた。




 「お任せください。すぐに、下ろします」




 グレンは、迷いなく壁の出っ張りに足をかけ、屋根へよじ登った。



 そろり、そろりと、猫へ近づいていく。刺激しないように、ゆっくりと。


 腰を落とし、両手を構え、一歩ずつ間合いを詰める。




 「さあ、猫さん、こちらに来てください」




 絶対に、失敗しないよう。この一匹を、確実に――。


 その顔は、まるで強敵と対峙するかのように、真剣そのものだった。


 眉間には、深いしわ。目つきは、鋭く。



 猫が、ぴたりと鳴きやんだ。


 じりじりと迫ってくる、鬼気迫る表情の少年。白い猫の毛が、ぶわりと逆立った。




 「にゃーっ!?」




 驚いた猫が、後ずさる。その足が、屋根の縁を踏み外した。




 「――しまっ!」




 小さな体が、宙に投げ出される。


 グレンが手を伸ばす。だが、届かない。


 落ちる。



 その真下へ、先輩守護者がすっと回り込んでいた。


 両手を広げ、危なげなく――ぽすん、と猫を受け止める。




 「っと。ほーら、大丈夫だぞ」




 腕の中で、猫が安心したように鳴く。


 老婆が、何度も頭を下げた。



 屋根の上で、グレンは呆然と立ち尽くしていた。




 「……申し訳、ありません。自分の、詰めの甘さで」




 降りてきたグレンに、先輩は猫を返しながら、からりと笑った。




 「気にすんな。けどよ、グレン」




 ぽん、と肩を叩かれる。




 「猫捕まえるのに、そんな怖い顔してどうすんだ。あれじゃ猫だってビビって逃げるさ。……もっと、力を抜いていいんだぜ」




 「力を、抜く……」




 グレンは、その言葉を繰り返した。


 けれど、うまく飲み込めなかった。



 どうすれば力を抜けるのか。それが分からない。


 誰に見られているわけでもない。


 それなのに、制服の乱れがないかを確かめ、通りを行き交う人々の視線を、無意識に拾ってしまう。


 胸元に手が伸びる。指先が触れたのは、上着の内側に留めた小さな紋章。スザク家の証だ。


 握りしめると、ひやりとした金属の感触が、てのひらに染み込んでくる。


 


 「スザク家の人間として、恥じない振る舞いを――」




 その声が、いつも頭の奥で響いている。鎖のように、ほどけない。




今日から第3章が始まります。引き続き、読んでいただけると嬉しいです。


あと、お知らせがあります。

申し訳ございませんが、体調を崩してしまったこともあり、第3章からは毎日更新ではなく、不定期更新とさせていただきます。

なるべく週に2,3話は更新したいと思っておりますが、お待ちいただけますと幸いです。

もしよければ、ブックマークをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。