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ドラゴ・ライズ ―最強の守護者を目指す少年と、十の星辰の絆―  作者: 岡山ミロウ
第2章

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第2章 - 第11話


◆◆◆


 王都へ戻るころには、空はすっかり夜の藍色に沈んでいた。


 昼間は賑やかな大通りも、すっかり静まり返っている。


 そんな王都を、十人は、ドラゴとトジに連れられて、歩いていた。




 「よし、打ち上げだ、打ち上げ!」




 「トジのお店、楽しみだニャ―!」



 

 ドラゴとミーナがテンション高く、声を弾ませる。




 「……俺は、帰る。馴れ合う気はない」




 あれだけの死闘をともに戦い抜いたというのに、ガロウは相変わらずだった。


 くるりと背を向け、ドラゴたちとは逆方向へ歩き出そうとする。

 


 だが。




 「まあまあ、そう言うなって!」




 ゴウエンが、その太い腕を、がしりとガロウの脇へ差し込んだ。



 

 「……っ、おい、離せ!」



 

 「観念するニャ! パウル教官も、仲間との絆が大事だと言ってたニャ!」




 ミーナもガロウの反対側の腕をつかむ。


 ガロウも抵抗するが、昼間の傷と疲労、何より、周りの全員がガロウを逃がすまいと、包囲網を敷き、そのまま連行されていった。



 たどり着いたのは、赤提灯がぽつりと灯る小さな店だった。


 暖簾には、『麺処・一里』の文字。



 ドラゴが勢いよく戸を開ける。




 「おっちゃん、おばちゃん! ただいま!」




 カウンターに立つ、トジの父――リコイと、母――ステンカに元気よく声をかける。




 「なんで、あんたがトジよりも先にあいさつすんのよ」




 サシャが呆れたように呟く。




 「おお、ドラゴ、トジ! 無事に帰ってきたか!」




 「ただいま、父さん、母さん」




 カウンターの向こうから、リコイは、息子の仲間たちをぐるりと見回すと、目を細めて、にっと笑った。




 「いやあ、あんたたちがトジの仲間か! 頼りないやつだけど、よろしく頼むよ!」




 リコイは父親らしい優しい笑顔で、みんなに挨拶をする。




 「もう、父さん! 余計なことは言わなくていいから、早く作って! おなかペコペコなんだ」




 「おう、任せとけ! うちの自慢の逸品、出してやるからな!」




 リコイは双返事をすると、厨房で作業を始める。



 客席では十人がわちゃわちゃと楽しそうに盛り上がっている。




 「ちょっとゴウエン、もっとそっち寄ってほしいっす! おいらのスペースがなくて狭いっす!」




 「すまんなカイト、でかい筋肉で。ガハハハッ!」




 「ミーナさん、熱い麺ですが大丈夫ですか?」




 「ニャ!? 猫の獣人のみんなが猫舌なわけじゃないニャ!」




 「仲間と同じ釜の飯を食べる。これほど素晴らしい時間はないな」




 「私こういうお店初めてだからワクワクしちゃう!」




 「えっ? シエルって普段どういうところで食べてるの?」




 「うおお! 早く食いてえ!」




 「ふんっ、うるさい奴らだ」




 トジは、そんな仲間たちの姿を見て、思わず笑顔がこぼれた。


 数日前までは、魔力がない自分が本当に守護者になれるのか、不安で押し潰されそうだった。


 でも、ドラゴと出会って、守護者になって、かけがえのない仲間と出会った。


 もう、あの頃の迷いは、すっかりなくなっていた。

 


 ほどなくして、母のステンカが、大量のどんぶりを運んできた。

 

 ことり、ことりと、机に並べられていく。



 白く濁った、濃厚なスープ。その表面で、湯気がゆらゆらと揺れている。


 ふわり、と。出汁の香りが、店中に広がった。




 「うわぁ……いい匂い」




 全員が、ごくりと喉を鳴らす。




 「これが、うち自慢の『白龍麺(はくりゅうめん)』よ。さあ、遠慮しないでたくさん召し上がれ!」




 「「「いただきます!」」」




 一斉に、麺をすすり始める。


 ずるるっ――と。熱いスープと麺が喉を通り抜けた瞬間。


 全身に、じんわりと熱が広がっていく。



 戦いで張り詰めていた体の隅々に、その温かさが、染み渡っていくようだった。




 「あっつ……はふっ、う、うまいっす……!」




 カイトが、口をはふはふさせながら、食べ進める。




 「ふふっ、本当に美味しい」




 シエルは、上品に麺を手繰り、ほうっと息をつく。


 ミーナは「おかわりニャー!」と早くも丼を掲げ、ゴウエンが「俺もだ!」と豪快に笑った。



 その、賑やかな喧騒の片隅で。


 ガロウだけは、腕を組み、麺に一切手をつけず、どんぶりをじっと睨んでいた。


 その様子に、ドラゴがにやりと笑う。




 「なんだガロウ、食わねえのか? なら、その麺――」




 ひょい、と。ドラゴが、ガロウの丼へ手を伸ばした。

 

 その瞬間。



 パシンッ!


 目にも留まらぬ速さで、ガロウの箸が、ドラゴの手の甲を打ち落とした。

 



 「いてっ!?」




 「……気安く、触るな」




 低く吐き捨て、ガロウはどんぶりを、自分の手元へぐいと引き寄せる。


 そして。

 

 無言のまま、麺をすすり始めた。


 黙々と食べ進める。いくら食べても何の感想も出てこない。


 しかし、一口、また一口。その箸は、止まらない。



 誰とも目を合わせず、不機嫌そうに眉を寄せたまま、あっという間にどんぶりの底まで食べつくした。


 スープは、一滴も、残っていなかった。




 「……ふんっ、まあまあだな」




 ぼそりと、それだけ。


 その様子を見ながら、隣でトジが、くすりと笑った。



 外は、もうすっかり夜の闇だ。


 冷たい夜風が、店の入り口の暖簾を小さく揺らしている。


 けれど、このお店の中だけは、赤提灯の優しい灯りと、美味しそうな白い湯気と、最高の仲間たちとの温もりで、いっぱいに満ちていた。


 そんな、ささやかで、温かい夜だった。



第2章も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

簡単でもいいので感想をいただけると嬉しいです。

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