↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自己暗示の異世界無双 〜信じ込めた力だけが、俺の武器になる〜  作者: あちゅ和尚


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/48

第22話 戻るための札

 目を覚ました時、俺は下宿のベッドの上にいた。


 天井が見える。


 木の梁。


 薄い染み。


 窓から差し込む昼の光。


 そして、身体中の痛み。


「……生きてるな」


 小さく呟くと、椅子に座っていたセリアが顔を上げた。


「生きています。かなり迷惑をかけながら」


「開口一番がそれですか」


「事実です」


 書記らしい返答だった。


 俺は身体を起こそうとして、背中と右肩に走った痛みに固まった。


「っ……!」


「動かないでください」


「はい」


「返事は早いですね」


「身体が素直に従いました」


 冗談めかして言ったつもりだったが、声はあまり出なかった。


 右肩が重い。


 太腿は熱を持っている。


 背中は、傷口そのものより周囲の筋肉が怒っているような痛みだった。


 魔物を斬った。


 鉈を振った。


 車止めを投げた。


 投げた。


 あれを思い出した瞬間、右肩がずきりとした。


 やはり、無茶だった。


「荷場は?」


 俺が聞くと、セリアは紙束を揃えながら答えた。


「片付きました。黒爪犬の死骸は領兵と封印係が処理。黒い粉は黒鳴石由来と確認。馬に怪我はありますが、致命傷なし。人足に重傷者なし。半札は散りましたが、大部分は回収済みです」


「セリアさんは?」


「無事です」


「ノルさんは」


「無事です。あなたの命令で私を引きました」


「よかった」


 そこでようやく、息が抜けた。


 人は死んでいない。


 それが一番だ。


 半札は作り直せる。


 荷袋も積み直せる。


 馬も治療できる。


 だが、人は戻らない。


 俺は目を閉じた。


 黒爪犬の赤い目が、まだまぶたの裏に残っている。


 自分の足が、普段よりずっと速く踏み込んだ感覚。


 鉈の重さ。


 刃が肉を断つ感触。


 借り物のような身体。


 借り物のような動き。


 だが、あれは確かに俺がやった。


 俺の身体で。


 俺の意志で。


 頭の中の物語の力を、自己暗示で引きずり出して。


「目つきが、少し変でした」


 セリアが言った。


「目つき?」


「黒爪犬を見ている時です。普段のあなたではなく、別の誰かの仕事を見ているようでした」


 その言葉に、背中の痛みとは別の冷たさが走った。


 別の誰か。


 それは、俺自身も感じていたことだった。


 動けた。


 見えた。


 斬れた。


 でも、その瞬間の俺は、本当に俺だったのか。


 わからない。


 いや、戻れたから今は俺だ。


 だが、戻れなかったら?


【自己固定率:93%】


【物語模倣残滓あり】


【推奨:自己確認】


 頭の奥に表示が浮かんだ。


 やはり下がっている。


 数字は俺にしか見えない。


 この危うさも、正確な形では俺だけのものだ。


 セリアは、目つきや反応で気づいただけ。


 それでも十分だった。


 他人から見ても、俺は変わっていたのだ。


 扉が叩かれた。


「入ってもいいかしら」


 落ち着いた女性の声。


 鑑定官エルザだった。


 セリアが扉を開ける。


 入ってきたエルザは、相変わらず整った身なりをしていた。


 だが、その目は笑っていない。


「派手にやったそうね、アスト」


「必要だったので」


「そう言うと思ったわ」


 エルザは椅子を引き寄せ、ベッドの横に座った。


 その後ろには、昨日治療してくれた薬師もいる。


 俺は少しだけ嫌な予感を覚えた。


「先に言っておきます。説教なら、短めでお願いします」


 エルザは微笑んだ。


「説教ではなく確認よ。結果によっては、説教になるけれど」


「怖い」


「怖がれるなら、まだ大丈夫」


 エルザは机の上に小さな水晶板を置いた。


 鑑定で使う道具らしい。


「戦闘時、自分に何をかけたか説明して」


 俺は息を整えた。


「物語の中の剣士や戦士の動きを、短時間だけ自分に重ねました。斬撃、踏み込み、投擲。あと、車止めを投げる時に、怪力系の動きを少し」


 薬師が顔をしかめる。


「少し、であの筋肉の痛みですか」


「すみません」


「謝罪で筋は戻りません」


 薬師たちの言葉は、どうしてこうも似るのか。


 エルザは水晶板に手をかざした。


「その時、自分で危ないと思ったことは?」


「……戻りにくかったです」


「戻りにくい?」


「斬る感覚とか、踏み込む感覚が、身体に残っていました。俺は運び手だって確認しないと、まだ戦える、まだ斬れる、ってそっちに引っ張られる感じがありました」


 エルザの表情が、わずかに険しくなった。


「それは危ないわ」


「やっぱり」


「自己暗示が、ただの身体強化ではなく、あなた自身の輪郭まで変えかけている」


 部屋が静かになった。


 セリアも、薬師も、言葉を発しなかった。


 俺自身の輪郭。


 その言い方が、妙にしっくり来た。


 昨日の俺は、俺でありながら、どこか物語の誰かに寄っていた。


 強い。


 速い。


 斬れる。


 だが、その感覚に引っ張られる。


 戻れなくなるかもしれない。


 俺が、俺でなくなる。


 無双の代償。


 それは、身体だけではない。


 心にも来る。


「でも、使わなければ人が死んでいました」


 俺は言った。


 言い訳ではない。


 本音だった。


 エルザは頷いた。


「だから、使うなとは言わない」


「いいんですか」


「言っても、あなたは必要なら使うでしょう」


「……たぶん」


「なら、禁止ではなく条件を作るべきね」


 条件。


 その言葉に、俺は反応した。


 軽急便。


 黒札。


 半札。


 便利な道具には鎖が要る。


 自己暗示も同じだ。


 物語模倣にも、鎖が要る。


「戻る仕組みですね」


 俺が言うと、エルザは目を細めた。


「理解が早い」


「最近、鎖ばかり作ってるので」


「なら、自分にも鎖をつけなさい。あなたを縛るためではなく、戻すための鎖を」


 戻すための鎖。


 それは、胸にすっと入った。


 俺は今まで、自己確認を声に出していた。


 俺。


 51歳。


 大型トラック運転手。


 今はアスト。


 役割は運び手。


 それで戻っていた。


 だが、戦闘中に深く模倣すると、それだけでは足りないかもしれない。


「札にします」


 俺は言った。


 セリアがすぐに顔を上げた。


「札?」


「戻り札です。自分の確認事項を書いた札。戦闘模倣を使う前と使った後に、それを読む。読めない状況なら、誰かに読んでもらう」


 セリアは少し考えた後、頷いた。


「文字にすれば、外に固定できます」


「はい。頭の中だけだと、引っ張られるかもしれない。だから、外に置く」


 エルザが微笑む。


「良い方法ね。あなたらしい」


「荷札みたいですが」


「あなたには、それが一番合うでしょう」


 薬師が口を挟んだ。


「ただし、戦闘模倣を使うたびに傷が増えるようなら、札を読んでも意味がありません。身体が壊れます」


「はい」


「使用制限も札に書きなさい」


「使用制限」


 俺は指を折った。


「1つ。戦闘模倣は人命危機か、道が塞がれた緊急時だけ。2つ。連続使用禁止。3つ。怪力系は原則禁止。4つ。使用後は必ず自己確認。5つ。誰かが止めたら止まる」


 セリアが筆を取った。


「誰か、では曖昧です。止める権限を持つ者を決めるべきです」


「セリアさん、ガルドさん、リーナさん、エルザさん。あとオルディンさん」


「多いですね」


「止める人は多い方がいいです」


 エルザが笑った。


「自分を信用していないのね」


「信用していないというか、調子に乗る可能性はあります」


「それを言えるうちは大丈夫」


 セリアが短い木札に文字を書き始めた。


 戻り札。


 表には、自己確認。


 俺はアスト。


 役割は運び手。


 戦闘は目的ではない。


 道を守る手段。


 使ったら戻る。


 裏には、使用制限。


 人命危機。


 道の緊急防衛。


 連続使用不可。


 怪力系原則禁止。


 使用後治療。


 停止命令優先。


 俺はそれを見て、少しだけ息を吐いた。


 文字がある。


 自分を戻す道が、外側にできた。


 それだけで、少し安心する。


【新規補助:戻り札】


【効果予測:自己固定補助・模倣解除補助】


【使用条件:視認または音読】


【役割固定:運び手】


【自己固定率:95%】


 少し戻った。


 93%から95%。


 たった2%。


 でも、今は大きい。


     ◆


 昼前、ガルドが下宿へ来た。


 荷場の襲撃についての報告を持ってきたのだ。


 黒爪犬を引き寄せた黒鳴石の粉は、荷場の西側の空樽裏に撒かれていた。


 見張りの目を避けて入れる場所ではない。


 つまり、内部を知る者か、荷場へ出入りしても怪しまれない者が関わっている。


「内部協力者ですか」


 俺が言うと、ガルドは腕を組んだ。


「可能性は高い。ただし、商人ギルドの職員とは限らん。人足、出入り商人、馬丁、修理職人、日雇い。荷場には多くの人間が入る」


「欠け指側が、誰かを使った」


「だろうな」


「狙いは俺ですか」


 ガルドは少しだけ間を置いた。


「お前か、軽急便の荷場そのものか。あるいは両方だ」


 セリアが静かに言った。


「半札の箱も狙われました」


「偽札対策を壊したかった」


「はい」


 黒爪犬の1匹はセリアと半札の箱へ向かった。


 偶然かもしれない。


 だが、黒鳴石で興奮した魔物が、確実に半札を狙ったとは思えない。


 なら、魔物を誘導した者がいたのか。


 粉の撒き場所。


 人の配置。


 逃げ場。


 魔物の進路。


 考えるほど、ただの無差別襲撃ではない気がしてくる。


「魔物を操ったんですか」


 俺が聞くと、ガルドは首を振った。


「完全には無理だろう。だが、黒鳴石の粉を撒く場所で、寄せる方向はある程度作れる。馬の匂いや血を混ぜれば、狙いも誘導できる」


「馬と半札の箱が近かった」


「そうだ。馬を狙わせ、荷場を混乱させ、その中で半札を壊す。ついでにお前が出てくれば、傷を悪化させられる」


 嫌な作戦だった。


 派手な攻撃ではない。


 荷場の流れを壊す攻撃。


 欠け指は、道を汚す方法をよく知っている。


「こちらの対策は?」


 ガルドが言う。


「荷場の出入り記録を強化する。黒札対象物の保管場所を分ける。半札の控え箱を1か所に置かない。馬と重要書類を近づけない。粉や匂いの確認を朝夕で行う」


 俺は頷いた。


「あと、荷場にも半札と同じ考え方が要ります」


「どういう意味だ」


「重要なものを片方にまとめない。半分ずつ分ける。控えを別室に。荷場の札と書記室の控えを分ける。どちらかが壊れても、全部は止まらないように」


 セリアがすぐ書き始めた。


「控え分散ですね」


「はい。あと、半札の箱を抱えて逃げないでください」


 セリアの筆が止まった。


「……昨日のことですか」


「はい。札より人が先です」


「わかっています」


「本当に?」


 セリアは少しだけ目を逸らした。


「一瞬、迷いました」


「俺もたぶん迷います。だから、決めておきましょう」


 札より人。


 記録より命。


 ただし、記録の控えは別に作っておく。


 人が逃げるためにも、仕組みが必要だ。


 ガルドが笑った。


「戦った翌日に、また札の話か」


「戦いを減らすための札です」


「なら続けろ」


     ◆


 午後、俺は短い検証を受けることになった。


 検証と言っても、戦闘ではない。


 エルザが戻り札を使って、模倣の浅い起動と解除を確認するだけだ。


 薬師は渋い顔をしたが、身体を動かさない条件で許可した。


「戦闘動作はしません」


 エルザが言う。


「あなたの頭の中で、軽く戦闘模倣に触れるだけ。身体は動かさない」


「それでも危なくないですか」


「危ないわ。だから検証する」


 怖いことを平然と言う。


 俺はベッドの上で、戻り札を手に持った。


 セリアが横にいる。


 ガルドも壁際に立っている。


 薬師もいる。


 止める人が多すぎる。


 いや、多い方がいい。


 俺は目を閉じた。


 頭の中に、昨日の斬撃を思い出す。


 黒爪犬。


 飛びかかる軌道。


 前脚。


 鉈。


 踏み込み。


 その瞬間、身体がわずかに熱を持った。


【自己暗示候補:斬撃模倣】


【適合率:34%】


【低出力接触】


【警告:身体動作を伴わないでください】


 起動はしない。


 触れるだけ。


 そのつもりなのに、右手が動きそうになる。


 鉈を握った感覚が戻ってくる。


 指先が震える。


「アスト」


 セリアの声。


「戻り札を読んでください」


 俺は目を開けた。


 手の中の木札を見る。


 文字を追う。


 俺はアスト。


 役割は運び手。


 戦闘は目的ではない。


 道を守る手段。


 使ったら戻る。


 声に出す。


「俺はアスト。役割は運び手。戦闘は目的じゃない。道を守る手段。使ったら戻る」


【戻り札:有効】


【模倣残滓:低下】


【自己固定率:96%】


 息が楽になった。


 手の震えも少し収まる。


 エルザが頷いた。


「使えるわね」


「思ったより引っ張られます」


「それを知るための検証よ」


 ガルドが低い声で言う。


「昨日のような動きをした後なら、もっと強く引っ張られるだろうな」


「はい」


「なら、戦った後に必ず誰かが札を読ませろ。自分で読めないなら、耳に叩き込め」


 薬師が追加する。


「そして治療です」


「はい」


「戦闘後の札と治療をセットにしなさい」


 セリアが書く。


 戦闘後手順。


 安全確認。


 武器を手放す。


 戻り札音読。


 自己確認。


 負傷確認。


 水分。


 治療。


 報告。


 また手順が増えた。


 だが、これは命綱だ。


 俺の力は、今後も必要になるかもしれない。


 無双感はある。


 強い。


 一瞬だけなら、本当に物語の戦士みたいに動ける。


 でも、その力には戻る場所が要る。


 戻れなければ、ただの危険物だ。


 俺自身が、黒札対象になる。


 そう思うと、少し笑えなかった。


     ◆


 夕方、オルディンが下宿へ来た。


 ギルド長がわざわざ下宿まで来るのは珍しい。


 俺はベッドの上で頭を下げようとして、止められた。


「そのままでいい」


「すみません」


「謝ることではない。君は荷場を守った」


「守れましたかね」


「守った。人死には出ていない」


 その言葉で、少し胸が軽くなった。


 オルディンは椅子に座り、机の上の戻り札を見た。


「新しい札か」


「はい。俺用の鎖です」


「良い。危ない道具ほど、鎖は必要だ」


 ギルド長は札を手に取り、文字を読んだ。


「戦闘は目的ではない。道を守る手段。……君らしい」


「無茶しました」


「したな」


「また必要なら、するかもしれません」


「だろうな」


 オルディンは札を置いた。


「だから、君の戦闘模倣を正式にギルド管理の対象にする」


「管理?」


「軽急便の護衛手段ではなく、緊急防衛手段として扱う。君を便利な戦力として使い潰させないためだ」


 俺は少し驚いた。


 ギルド長は続ける。


「今後、商人や貴族が君の力を聞けば、依頼を持ち込むだろう。魔物退治、護衛、脅し、決闘まがいのこと。君は断りきれない場面があるかもしれない」


「ありそうですね」


「だから、先に断る理由を作る。戦闘模倣は、商人ギルド管理下の緊急防衛のみ。通常の戦闘依頼には使わない。使用後は治療と記録。これを規則にする」


 ありがたい。


 それは、俺を守る鎖だ。


 同時に、俺を縛る鎖でもある。


 だが、必要な縛りだ。


「お願いします」


 俺は言った。


「俺も、自分だけでは危ないと思っています」


「その自覚があるなら、まだ大丈夫だ」


 オルディンは薄く笑った。


「ただし、欠け指はこのままでは終わらん」


「ですよね」


「荷場襲撃は、こちらへの宣戦に近い。正規の道を作る者と、鎖のない道を売る者。その争いになりつつある」


「俺、商人ギルド改革してるつもりだったんですが」


「道を作れば、道を汚す者とぶつかる」


 重い言葉だった。


 道を作る。


 それは、ただ便利になることではない。


 その道で儲けていた者。


 その道の曖昧さを利用していた者。


 危ない荷を流していた者。


 そういう連中とぶつかる。


 欠け指は、その最初の顔だ。


「こちらも準備する」


 オルディンは言った。


「荷場の守り、札の管理、日雇いの受け皿、領兵との連携。そして、君の戻り札」


「俺も仕組みの一部ですか」


「そうだ。だが、部品ではない」


 オルディンはまっすぐ俺を見た。


「君は運び手だ。自分を失うな」


「はい」


 短く返事をした。


 それしか言えなかった。


     ◆


 夜。


 部屋が静かになった後、俺は戻り札を手に取った。


 小さな木札。


 セリアの字。


 俺を戻すための札。


 窓の外には、領都の夜が広がっている。


 荷場はいつもより厳重に見張られているらしい。


 黒鳴石の粉が撒かれた場所は清められ、馬も別の場所へ移された。


 半札の控えは分散された。


 ノルは仮寝所で休んでいる。


 セリアは、たぶんまだ書類を整えている。


 ガルドは巡回。


 オルディンとマルセルは、領兵との連携で動いている。


 みんなが、それぞれの場所で道を守っている。


 俺だけが寝ている。


 そう思いかけて、やめた。


 寝るのも仕事だ。


 治るのも仕事だ。


 戻るのも仕事だ。


 俺は木札を胸の上に置き、声に出した。


「俺はアスト」


 違う。


 その前に、もっと深いところ。


「俺。51歳。大型トラック運転手。日本で事故に遭った」


 言葉が、静かに胸へ沈む。


「今はアスト。固有スキルは自己暗示。役割は運び手」


【自己確認行動を検知】


【自己固定率:96%】


「戦闘は目的じゃない。道を守る手段。使ったら戻る」


【戻り札:有効】


【役割固定:運び手】


【戦闘模倣使用条件:仮設定】


【状態:安定】


 安定。


 その表示を見て、ようやく目を閉じられた。


 無双の力は、確かにある。


 俺は、魔物を止められる。


 物語の戦士たちの動きを、一瞬だけ借りられる。


 道を塞ぐものを斬れる。


 でも、その力に酔えば、俺は俺を失う。


 だから、戻る。


 何度でも。


 札を読み、名を呼び、役割を確かめる。


 俺は英雄ではない。


 戦士でもない。


 俺は運び手だ。


 ただし、道を塞ぐものがあるなら。


 必要な時だけ、斬る。


 それが、今の俺に許された無双の形だった。


第22話─了

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。