第六十話 幽霊宝珠? ですわ
「幽霊の正体がわかったって、本当なの、ぴあのさん!」
「うん! ええと、ちょっと待ってて、トシ君が今持ってくるから!」
持ってくる、って、幽霊を?
「どういうことなの、待ってる間に説明してよ」
タカヒロ君が訊く。
「あのあと私とトシ君は教室で自習してたんだけど、隣で吹奏楽部の練習が始まっちゃってね。騒がしくて集中できないから、一回場所を移して私の部屋で勉強しようって話になったの」
ぴあのさんの部屋って……自室で一緒に勉強できる幼馴染カップルって、なんだか少女漫画みたいね。やっぱり私は悪役令嬢ポジションなのかしら。要件に関係ないところで悲しくなってくるわ。
「それで、帰り道の途中で、幽霊ガードレールを通りかかったときに、トシ君が見つけたんだけど」
「おーい、ぴあの! 待てよ」
後からやっと馬淵君が追い付いてきたみたいで、こっちに駆けてくる。
「もう、トシ君ってば遅いよ」
「お前が速すぎんだよ……どんな体力してんだ」
体育の成績は馬淵君がいい方で、ぴあのさんは真ん中。その上男子と女子なのだけれど……実際の道を走る時の速さって、単純な体育の成績で換算できないのよね。わかるわ。
「馬淵君、ガードレール幽霊の正体がわかったって訊いたけど?」
タカヒロ君が訊く。
「ああ。六花が見ればわかると思うんだが――これ、ただのでかいビー玉じゃないよな」
馬淵君がポケットから取り出した丸い石は。
「――宝珠!?」
間違いなく魔法の宝珠ね。でも、色が青いわ。
「俺が拾う前にポチが出したやつか?」
「ううん、ポチは火龍だから、赤い宝珠しか生み出さないはずよ」
私はカバンの中の筆箱から、魔法の杖を取り出す。
こうして比べると、青い宝珠のほうが少し大きいみたい。
「でも、ポチがいたんだから、他にもドラゴンがいてもおかしくないわよね」
「誰かがこれで魔法を使って高尾に幻覚を見せたんだろ?」
馬淵君が私に詰め寄る。
「せっかくだけど……こんな小さな宝珠じゃ幻覚なんて複雑な魔法は使えないわ。最初に出てきた霧だけなら水魔法で何とかなるかもしれないけれど……」
でも、ピンポイントで幽霊ガードレールに宝珠があったなんて、偶然とは思えないのだけれど……。
「待って」
私たちに口を挟んできたのはタカヒロ君だった。
「全部幻覚で見せることは無理でも、本当にあるものと魔法を組み合わせれば、僕が見たものと同じものを作れるんじゃないかな」
さっきまで幽霊におびえていたのも忘れて、目をキラキラ輝かせている。
新しい何かを思いついた時の目、って感じ。前世の前世で学生さん、前世で大賢者、そして現世で生き字引。タカヒロ君はやっぱり何かを考えるのが好きみたい。
――タカヒロ君、完全復活!
お久しぶりです!
ちょっと前に書けてたんですけど、熊本で地震があって、宣伝ツイートで震災関連ツイートを流すのもと思い投稿を控えていました。
(投稿しつつ宣伝しないという手もありましたけど)
被災地の一日も早い復興をお祈り申し上げます。