第五十九話 おじいさまおばあさまの証言、ですわ
私と同じで前世の記憶を持つタカヒロ君は、やっぱり『ツルギ』って名前に反応していたけれど、すぐに思い直したみたいで、何事もなかったように取り繕う。
「いえ、被害者の名前までは知りませんけれど……剣君というのですね」
それから私にそっと耳打ちをして。
「事故があったのは僕らが生まれてくる直前だよ。勇者ツルギが転生者だとするなら計算が合わないし、だいたい転生前後で名前が同じっていうのも珍しい。きっとたまたまだよ」
って、言った。
うーん、それじゃあたまたま同じ名前なのかしら。
ま、引っかかることには引っかかるけれど、今そこについて詳しく訊いても多分わからないでしょうし、ひとまず置いておくしかなさそうね。
「剣君ねぇ……昔は弟君と一緒によくこのお店に来てたんだけど、それがあんなことにねぇ……」
しみじみとした口調で、おばあさまが言う。
弟がいたのね。弟って言うとつい小さい子を想像してしまうけれど、私たちが生まれてくる前にいたってことは、私たちより年上のはず。剣君が枇々木先生や夏目先生の同級生だから、それよりは年下で――私たちと先生たちの間の歳の知り合いが、丘目木だと織牙さんしかいないから、なんとなくその年代で想像。
「まだ死体が上がらないんだよねぇ。だからご両親はまだ生きてる希望を捨てていないみたいだけれど……あの事故じゃねえ」
おじいさまがため息をついた。
あれ、事故の規模のほうにばっかり触れて、『幽霊がいるから死んでいるんじゃないか』ってことは言わないのね。
やっぱりお弁当屋さんも、幽霊は信じていないのかしら。
「でも、幽霊を見たって人はたくさんいるし……私の友人のお母様も見たらしくて」
ぴあのさんのお母様の話を出して、私は訊いた。
「そりゃあ、だってあの幽霊って」
「君たち、丘目木高校の生徒だろう? 盾君――枇々木先生から聞かされていないのかい」
「枇々木先生?」
確かに枇々木先生は剣君と同級生らしいけれど、生前の剣君を知っているだけじゃなくて、幽霊騒動についてまで知っているの?
「あの、それってどういう――」
「おーい! 六花ちゃーん」
突然大声が聞こえて、私の質問はさえぎられた。
このやたらめったらよく通る声は……!
「ぴあのさん、どうしたのよ!」
私の声はぴあのさんほど大きくないから、一回自動ドアから出て声を張り上げた。
「馬淵君が、タカヒロ君を襲った幽霊の正体を見つけたの!」
なんですって!?
コバルトの短編賞に応募する短編を書くため、今後しばらく更新遅くなると思います。
でももちろんこの小説のことも忘れるわけではないので、気長に待っていてください! よろしくお願いします!




