第四十八話 タカヒロ君の悩み、ですわ
「タカヒロ君、どうしたの?」
ぴあのさんが私の後ろから回り込んで、タカヒロ君に駆け寄る。
学年一位を取った日にこんな落ち込んでるなんて、よっぽど何か嫌なことがあったに決まっているわ。私も心配よ。
「南さん……」
タカヒロ君はなにも載っていない机をじっと見つめて、何か言うべきかどうかを考えている様子。
「どうしよう。こんなこと言っても信じてもらえないだろうし」
「話してくださいませんか?」
私たちの後ろでずっと黙っていたケロちゃんが口を開いた。
「蛙ヶ口さん!?」
タカヒロ君が驚く。
廃ビル事件以来腐女子をオープンにしてちょっと明るくなったケロちゃんだけれど、引っ込み思案は相変わらずで、今でもあんまり自己主張をするタイプじゃない。
だから、私もケロちゃんの行動はちょっと意外に感じた。
「その……高尾君には、やっと根暗を脱する勇気を出したばっかりで、本当に不安でいっぱいな時に図書室に誘っていただいて。できれば私、その恩返しがしたいです!」
ケロちゃん……そんなこと思ってたんだ。
確かに幼馴染の国木田君以外だと、ケロちゃんと仲良くしてる男子ってタカヒロ君ぐらいかも。根暗時代はもとより、腐女子もちょっと男子からしたら近寄りがたしね。
馬淵君をはじめとして、ほかの女子とわけ隔てなく接する男子は何人かいるけれど、特別に仲良しなのはやっぱりタカヒロ君かしら。
「そうね。私もケロちゃんに賛成だわ」
ケロちゃんの決意を察して、私は同意した。
「そうそう」
と、一緒になって同意するぴあのさんは、こっちは多分いつものおせっかい。
でもこのおせっかいに、結構回りが救われていることも最近わかってきたわ。
「それにタカヒロ君のこと信じないんだったら、前世がどうこうの話しの時点で信じてないよ」
ぴあのさんが続ける。
私は前世の記憶があるけれど、そうじゃないぴあのさんから見たら、確かに前世の話も信じられないことよね。
でも、タカヒロ君はさらに重苦しい表情になって。
「ううん……その話をしちゃったから余計に信じてもらえないかもしれないって思ったんだけど」
なんて言うじゃないの。ますますどういうことなのか気になっちゃうわ。
「でも、そうだね。みんなの気持ちはうれしいから、相談するけど、びっくりしないでね」
意を決した感じで、タカヒロ君は自分の悩みを打ち明けた。
「実は、ガードレールの幽霊に呪われたみたいなんだ」
『ガードレールの幽霊に!?』
それって、幽霊ガードレールの交通事故で死んだ子の幽霊ってこと!?
皆さん忘れてたかもしれないガードレール幽霊の伏線に今回は迫っていこうと思います!
勘のいい読者さんはもう正体わかってる気がしますが: