第四十二話 前世がばれた…… ですわ
「どうしてそう思うのかしら?」
わたしは訊いた。まだ手に持ったままのメロンソーダの中で、氷がからんと音を立てた。
「だって伊妻さんが使ってる魔法って、アルメギドの技術体系のものでしょ?」
タカヒロ君が席に向かって歩き出しながら言った。
「あ、ああ。なんだ、魔法ね」
一瞬私の前世が魔王ルシファーだってばれたのかと思ったじゃない。
私もタカヒロ君の後に続き、席に着く。オレンジティーとメロンソーダのグラスを座席において、とりあえず一息。
「そうそう。この間のお菓子コンクールで見た時からずっと気になってたんだ」
そうね。まさか来てると思わなくて堂々と使っちゃったけど、確かにタカヒロ君が見たら一目瞭然よね……。どうごまかそうかしら。
「ええと。ママが」
思いつくままに、私は出まかせを言う。
「死んだママが教えてくれたのよ。私は知らなかったけれど、ママがアルメギドからの転生者だったんじゃないかしら?」
ごめんなさい、天国の(って思ってたけど、転生者がここまでいっぱいいると、ママもどこかに転生しているのかしら?)ママ。
でもたぶん直接確認取れないママに訊いたことにしておくのが、一番ばれないと思うから。
「そっか……それ嘘だよね?」
早速ばれた!?
「な、なんでわかったの?」
「ああ、やっぱり!」
タカヒロ君が手をたたいた。
「風魔法を竜巻のように回転させて扱うのは、アルメギドでは三十年ぐらい前に普及した技術だよ。伊妻さんのお母さんがそれから転生したとなると計算が合わない」
人間の風車からヒントを得た魔王軍が、風を回転させてエネルギーを使うって発想に至ったのは、魔王ルシファーと勇者ツルギの決戦から十五年ぐらい前。それで、私が十六歳だから……単純に足し算したら三十一年前ね。
「でも、転生後にママが思いついたとかいう可能性もあったんじゃないかしら」
「そうだね」
「そうだね……って、じゃあなんで嘘だなんて」
「伊妻さん動揺して手が震えてたでしょ」
タカヒロ君が意味深に微笑んで、オレンジティを指さす。
アイスティとオレンジジュースの境界線がかなり崩れているのを見て、私は納得した。そこまで考えていたのね。
「降参よ、大賢者メルキセデク。私は魔王ルシファーの生まれ変わり。これでいいかしら?」
私はため息をついて、わざと悪ぶった口調で言う。
前にタカヒロ君は、もう魔王ルシファーを恨んではいないって言ってたけど……。でも、それが事実かなんてわからないものね。ちょっと威嚇気味に入るぐらいがちょうどいいんじゃないかしら。
「そっか……髪と目の色からもしかしたらって思ってたんだけど、やっぱり魔王ルシファーだったんだ」
タカヒロ君がうんうんと頷く。
「魔王ルシファーが僕と同い年ってことは、ツルギが魔王を倒したのかな?」
「うっ……そうよ。倒されたわよ、悪いかしら」
前世のこととはいえ、あんまり負けた話はしないでほしいわ。自分が死んだことはもちろん、魔王軍とか、守れなかったもののことも思い出すじゃないの。
魔王四天王は、ケロちゃんとまた巡り合えたのと、一人は生き延びてくれたのが救いだけれど……。
「あはは、ゴメン。馬鹿にするつもりはないんだけれど、そうだよね、ツルギはどんどん強くなるからね」
「まったく。人間があそこまで強くなるなんて、チートの類いだわっ」
なんて、多重転生知識チートが目の前にいるのに言うのも変かもしれないけれど。
「さて……私のほうは秘密を話したんだから、タカヒロ君も将来の夢、教えてもらうわよ」
なんて言ってみたけれど、どう考えても私がばらさなきゃいけなかった秘密のほうが重たいような気がするわ。このファミレスの料金もタカヒロ君に持ってもらおうかしら。
「うん、実はね、伊妻さんが転生者だったら、伊妻さんにも協力してもらおうと思ってたんだ」
転生者なら協力できる夢……? どういうことかしら。
多重転生知識チートにはさすがの魔王令嬢も勝てなかったよ……。
どんどんタカヒロ君がブラックになっていって作者も怖いです!




