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黒騎士来世の恋愛事情 前編

馬淵君視点の告白話です!

 思えば俺は昔からどっちつかずが災いして損ばっかりしている。


 小さい頃からおやつの選択で迷っているとぴあのに先を越されていた頃から……ならまだいいが、あろうことか俺は『前世から』どっちつかずだった。


 前世について俺が覚えていることはひどく断片的で、記憶と呼べるほど確かなものじゃないが、それでも向こうがいわゆる剣と魔法のファンタジーの世界で、自分が魔王と勇者の間でどっちつかずしてたら殺された、ぐらいの雑な覚えはあった。


 そんなかっこ悪い過去を前世と認めたくなかったから、見覚えのあるドラゴンのポチを、羽の生えたトカゲって主張したりなんかしてな。


 ――で、俺がそんな男だったからだろうか。


 ぴあのに告られた次の日に、六花からも告られて『嬉しい』と感じてしまったのは。




 いや、ちょっと待てよ。六花が俺のことを好き!? そんなのってあり得ないだろ。


「え……? はァ!?」

「ちょっと、驚きすぎではなくて?」


 だって六花って、枇々木のことが好きなんじゃないのかよ!?


 いつも目で追ってるし、話した後なにか考え込んでぼーっとしてたりするし……正直俺だけじゃなくてクラスのほとんどがそう勘違いしてると思うぞ?


「いや……悪い。別に嫌ってわけじゃないんだが、その」


 俺は茶を濁した。


「六花はほかに好きなやつがいるんだとばかり思ってた」


 さすがに誤解でとばっちりくらわすのは気が引けたから、俺は枇々木の名前を何とか飲み込んだ。


「ほかに? 誰のことかしら?」

「ああ、いや、いい。心当たりがないなら俺の勘違いだ」


 そっちが誤解となると、逆のほうはどうなんだ? 枇々木が六花に手出ししようとしてる変態教師という噂も訊くんだが……。


 確かに枇々木から六花への評価がやたら高いと感じることがないではない。だが、六花はひいきするまでもなく優秀だからひいきなのかよくわからない。それに、例えひいきだとしても好きだからかか社長令嬢だからかか、理由が区別できないし。こっちはこっちで眉唾っぽいな。


「そうか……六花もか。聞こえてなかったのかもしれないけど、実は俺、昨日ぴあのにも告白されて」


 三角関係ってやつなのか? 正直六花は枇々木狙いだとずっと思ってたから、恋愛対象として意識していなかった。


「うん、知ってるわ」

「知ったうえで告ってきたのかよ⁉」

「あら、OKを出す前ならアタックしても自由のはずよ?」


 不敵に笑う六花は相当強かだ。ぐだぐだ悩んでばっかりの俺から見たら、かっこいいとさえ思う。


「なんていうか……六花って本当に悪役令嬢って感じだよな」


 なんて俺は強がる。正統派ヒロインのぴあのに対してまったく譲らない姿勢がうらやましかった。


「知ってるわよ。それで――返事は?」


 なんて、泣きそうな顔で訊かれて、俺は戸惑う。


 一夫多妻アリだった前世ならいざ知らず、この現代日本じゃあ、どちらかを選ばないといけないんだよな……。


 正直六花を今まで全くそういう対象として見ていなかったから、こんな急に意識しろと言われても無理だし、俺の気持ちはかなりぴあののほうにある。


 でも、素直にそれを言って六花を傷つけるのもつらい。恋愛でこそ考えてこなかったが、女友達としては六花のことは好きだ。


 かと言ってここで答えを先延ばしにしたって、ぴあのと六花の両方を傷つけるのは目に見えている。


 あー、くそ。どうすればいいんだ。


 考え込みながら、六花の真剣な表情をちらりと見る。


 六花だってきっとぴあのを傷つけたり俺に嫌われるかもと悩んだうえで、それでも正直に気持ちを俺に伝えてくれたんだよな。だから、ここでいいやつぶるのは六花に対してフェアじゃないと思った。


 俺もひとまず損得勘定は抜きにして、思っていることをそのまま伝えようと思う。


まさかの馬淵君からも枇々木先生狙いと誤解されていた六花ちゃん!

どんまい!

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