第三十九話 馬淵君の返事は……? ですわ
「――悪い。やっぱり俺はぴあのを傷つけることはできない」
「……そう」
覚悟できていたからかしら。思ったほどショックは受けなかった。とはいえ、それでもまったく大丈夫だったわけじゃなくて。辛いのが顔に出ていたかしら。
「でも、正直言って六花にも落ち込んでほしくないんだ」
「え……?」
馬淵君の一言に、私は驚いた。なんでそんな、優しいことを言うの……?
「ぴあのに対する『好き』とは違うが、六花のことも『好き』だからな――なんて言ったら調子のいい男だって思うよな」
照れくさそうに馬淵君は言う。そして、私の頭の上に手を載せて。
「抱きしめるわけにはいかねーからな。とりあえず、今はこれで」
と、私の頭をなでてくれた。
ここで馬淵君に甘えちゃうのって、正直ぴあのさんに申し訳ないけれど。でも。
私はしばらくそのまま、おとなしくなでられていた。
それからしばらくして、私と馬淵君は『お友達』としてたわいのない会話をしながら、学校の前の道を南に向かって歩いていた。
せっかくだからこの後、ぴあのさんも誘って遊ぼうってことになったの。フラれたらもうおしまいなんじゃないかと思っていたけど、なんだかんだで友達を続けられるみたいで、不幸中の幸いかも。
「しっかし、なんだってフラれるってわかってて、場合によっちゃあぴあのに怒られるってわかってて告白なんかしてきたんだよ」
馬淵君が私に訊いた。確かに普通告白って、フラれる前提でするものじゃないわよね。
「昨日あの後枇々木先生がうちに来て。それで、まだ馬淵君がぴあのさんにOKをしてないって訊いたから、言えるチャンスは今日で最後だと思ったから」
「は!?」
大声で驚く馬淵君。何がそんなにおかしいのよ?
「つまり枇々木は、昨日俺がぴあのに告られた状態で、六花の家に行っておきながら、特に何もしないで、どころか俺に告白することを勧めてきたってことか?」
「そうだけど……それが?」
別におかしなところなんてないと思うけれど……何をそんなに驚いているの?
「六花。前言撤回させてくれ。やっぱり俺たち付き合おう」
突然そんなことを言い出す馬淵君に、私は目が点になる。
「はい!? ぴあのさんはどうするのよ?」
「もちろんぴあのも諦めない。でもダメだ。六花を独りにしておくわけにはいかねー。どこか一夫多妻の国に行って三人で暮らそう」
どうしよう。馬淵君があまりにキョドっていて、本気なのか冗談なのか区別がつかないわ。いや、話の内容からしてどう考えても冗談よね? ずいぶんとセンスのないジョークだけれど。
「――悪いけど、二番手になる気はないわ。それよりは一番の女友達でいさせてよ」
私は努めて冷静に返した。
「そうか。いや、それならいいんだけど、な」
馬淵君が苦笑する。
ええと、もしかして、私のほうからぴあのさんを無視して告白してフラれたってなると、これから具合が悪いだろうと思って、自分が変な告白してフラれたって体にしてくれようとしているのかしら?
「馬淵君は気を使いすぎだわ」
私はクスリと笑った。
そもそも今日何があったかぴあのさんに話さなければいいだけの話だと思うけれど、もし訊かれたら、気持ちに甘えさせてもらおうかしら。
枇々木先生が奥手すぎて馬淵君が崩壊しました。すべて枇々木先生のせいです←
短いですが三章はこれで完結、全体の流れとしてはやっと起承転結の「起」が終わった感じです!
しばらく番外編を挟んだ後、四章に続きます!




