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前世魔王の悪役令嬢は主人公になれない!?  作者: 亀梨名光
第二章 パティシエ―ルは前世魔王!?
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第十九話 テラス席でガールズトーク、ですわ

「今日はテラス席が取れてラッキーね」


 私は海が一番よく見える席に座る。と、その時。


「冷たいっ」


 私は思わず言った。さっき織牙さんが撒いてた水が、少し椅子についていたみたい。


「六花ちゃん、大丈夫?」

「ええ。スカートがちょっと濡れてしまったけれど、帰るころには乾くでしょ」


 私はハンカチを椅子に敷いて、改めて座りなおす。


 その様子をなぜか黙ってじーっと見ているぴあのさんとケロちゃん。


「な、何よ? 何かおかしかったかしら?」

「おかしくはないんですけど……」

「なんか六花ちゃんって見た目と肩書だけだと、こういうのにキーキー怒りそうなのになぁって」

「えっ⁉」


 確かに『社長令嬢で銀髪紅眼のキツそうな顔立ち』って、アニメや漫画ならそういう立ち位置だけれど――それ、本人に言うかしら?


 あーあ、ケロちゃん助けて少し図に乗ってたけど、私の悪役令嬢イメージ、あんまり払拭できてないみたい。


「そういうところがかわいいんだけどねー」

「『ギャップ萌え』ってやつですよね! 意中の彼もこれでイチコロです!」

「ちょっと、ケロちゃん⁉」


 よりにもよって私のライバルの前で何を言い出すのよ!


 ぴあのさんが馬淵君を好きなこと、ケロちゃんは気づいていないのかしら……?


「じゃあ二人とも注文決めちゃって」


 ぴあのさんがメニューを広げる。


「六花ちゃんは今日もシフォンケーキ?」

「毎回同じでも飽きちゃうから、今日は――そうね」


 私はちょっと意地悪な笑みを浮かべて。


「オペラをお願いしようかしら」


 と、言った。


 オペラって、ちょっとおしゃれなチョコレートケーキの名前。アーモンドを使ったスポンジと生チョコとコーヒーシロップで層を作って、チョコレートでコーティングしたものなんだけど、要するにいろいろなものを作って一つにまとめたケーキで、どれ一つとして失敗できない。このお店に置いてあるケーキの中では、一番難易度が高いんじゃないかしら。


 つまり、難しいケーキを注文して、織牙さんのお手並み拝見しちゃおうってわけ。


 ――ケロちゃんが投げ飛ばしたからそれでおしまいみたいな空気になっているけれど、私だって怒ってるわよ?


「えーと、私は……あれ、この季節にモンブランなんてあるんですか?」

「うん、輸入の栗だから味は少し落ちるけど、それでも十分おいしいって保証するよ」


 ケロちゃんにぴあのさんが答えた。


「じゃあ私、モンブランにします! モンブラン好きなので!」

「じゃあ私はいつも通りイチゴのショートケーキ。――お兄ちゃん、注文お願い!」


 織牙さんを呼んで、注文を取ってもらうと、いよいよガールズトークのスタート。


「ところでケロちゃん」

「何でしょうか?」

「ケロちゃんが腐女子になったきっかけの夢、って、どんな夢なのか詳しく聞きたいなって思ったんだけれど、いいかしら」


 私はほかの話題が始まる前に尋ねた。私以外の転生者がどれぐらい前世のことを覚えてるのか知っておきたいけど、こんな機会じゃないと訊けないものね。


「あ! この間ケロちゃんが言ってた、何度も同じ夢見る、ってやつだよね。同じ夢を何回も見るなんて珍しいし、私も聞きたい!」


 よかった。ぴあのさんも乗り気みたい。それにしても、前世の記憶があるならぴあのさんだって同じ夢を何度も見てるだろうから、ぴあのさんは転生者じゃないのかしら?


 いえ、世の中転生者じゃない人間のほうがたぶん多いからそれも当たり前なのだけれど。どうも丘目木に来てから転生者とばっかり会うからね……。


「任せてください」


 ケロちゃんは鞄の中から、一冊のノートを取り出した。


「せっかく萌える夢なのに忘れてしまうと悲しいので、あのシリーズの夢を見た日は夢日記をつけることに決めてるんです!」


 ええっ⁉ そこまでしてるの⁉




 ケロちゃんの話を聞いてしばし。


 結論から言うと、ケロちゃんの前世の記憶はかなり正確で量も多かった。

 むしろ、それがただの夢じゃなくて前世の記憶であるという自覚『だけ』が欠けている状態といって差支えないレベルだわ。


 なんで一番大事なところだけ欠けてるのよ! って、思うけれども、ケロちゃんが自分と全然違うケルベロスを見て、自分だって気づくのは難しかったのかも。


 前世のルシファーがほとんど人間型だった私だって、銀髪紅眼がなかったら前世の記憶だなんて自信なかったかもしれないし、ましてや狗頭のケルベロスじゃあ……ね。


「――そしてケルベロスは愛する魔王様を守るために、単身勇者たちを迎え撃つことにしたのです」

「すごい……素敵……」


 聞き入っていたぴあのさんがため息を漏らす。


「それ本当にケロちゃんが見た夢だけの話だよね? なんだか小さい頃に読んだファンタジー小説みたいでわくわくしちゃった! そんな夢見たらわくわくして眠れなくなっちゃいそう」

「夢って眠っているから見るんじゃないかしら?」

「言われてみればそっか」


 ぴあのさんがぺろりと舌を出した。


「でさ、五時間目が終わった後も話そうと思ってたんだけど、ファンタジーっていえばさ――」

「お待たせしました」


 ぴあのさんが何か話し始めようとしたところで、ちょうど織牙さんがケーキを持ってきた。


忙しくて更新遅れましたがちゃんと生きてます!

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