検問と怪しい酒
町を出てしばらく進むと、道が細くなった。
その先に、簡単な柵が立っている。
検問だ。
兵士が二人、
道の真ん中に立っていた。
「止まれ」
素直に止まる。
「どこから来た」
「北の町からです」
嘘ではない。
兵士は荷物を見る。
大したものはない。
「酒は持ってるか」
「少しだけ」
袋を軽く見せる。
兵士は頷いた。
「最近、妙なのが混じる」
「妙?」
「毒とか、劣化とか、
魔族のやつとかだ」
黒蜜酒のことを思い出す。
「飲めるかどうか、
分からんものもある」
それは困る。
ちょうどその時、
後ろから荷車が来た。
商人だ。
樽をいくつか積んでいる。
「止まれ」
同じやり取り。
兵士が樽の一つを開ける。
中の酒を少しすくう。
匂いを嗅ぐ。
眉をひそめた。
「……これ、変だな」
商人が顔をしかめる。
「普通の酒だ」
「怪しい」
兵士は迷っている。
飲むには怖い。
だが捨てるには惜しい。
スイが、
足元で小さく揺れた。
色が、少し濃い。
「……試すか」
思わず口に出た。
兵士がこちらを見る。
「何をだ」
「連れです」
スイを示す。
兵士は一瞬考える。
「責任は取らんぞ」
「大丈夫です」
たぶん。
樽から少しだけ酒を取る。
スイが近づく。
ゆっくりと、
表面に触れる。
一瞬だけ、色が変わる。
濃くなり、
すぐ戻る。
だが今回は、
少しだけ違った。
スイの色が、
わずかにくすむ。
「……ああ」
なんとなく分かる。
「やめた方がいいです」
兵士が眉を上げる。
「分かるのか」
「たぶん」
兵士は酒を見て、
少し考える。
そして樽を閉じた。
「これは通さない」
商人が舌打ちする。
「損だな」
「死ぬよりいい」
それで話は終わった。
スイは、
少しだけ色が薄い。
「無理するな」
声をかけると、
ゆっくり元に戻る。
兵士がこちらを見る。
「助かった」
「たまたまです」
それで十分だ。
検問を抜ける。
道はさらに南へ続く。
風が、少しだけ熱い。
歩きながら考える。
勇者を追っているのか。
たぶん違う。
噂を聞いて、
酒を飲んで、
ここまで来ただけだ。
ただ――
「この先の酒、
どうなってるのか気になるな」
口に出る。
戦があれば、
酒も変わる。
それを見てみたい。
それだけだ。
スイが揺れる。
色は、
元の青に戻っていた。
「行くか」
答えはない。
だが、
足は止まらなかった。




