のんびり生き…る?
まだまだ寒い2月、校舎裏に二人の少女が立っている。
一人は茶色の髪をふわふわに巻いた可愛らしい少女、もう一人は長い黒髪を高く結んだ長身の少女。
茶髪の少女は顔を真っ赤にし、黒髪の少女は困ったように苦笑いを浮かべている。
「あの、ずっと前から好きでした…!よければ私と付き合ってくださいっ…」
黒髪の少女こと、夏目 環は、呼び出された校舎裏で一人の少女から告白を受けていた。
「えーっと、ほんとに申し訳ないんだけど…ゴメンナサイ…。今はそうゆうの考えられなくて」
私は女なんです…その言葉を飲み込み、ぺこりと頭を大きく下げる。
茶髪の少女は、さらに顔を赤くして、すいませんでしたっと言って走って逃げてしまった。
「…何回目だろこれ」
高校2年生17歳、身長169センチ、特技は武道全般、好きな食べ物は寿司、苦手な食べ物は特になし、夏目環です。ちゃんとスカートもはいてるよ。
「さむ…もどろ…」
いたって普通?の女子高生です。
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「環ちゃんおかえり〜、また告白?」
教室に戻ると、私の親友、高峯小鳥が声をかけてきた。
黒縁のメガネは彼女のトレードマークだ。
「うん、一年生の女の子、ちゃんと断った」
「学園の王子様を射止めるプリンセスはまだ来ないかぁ。もういっそ付き合っちゃえばいいじゃん」
「おばか、んなの一生ないわ」
「ふふっ、あ!ねえそういえば進路希望の紙書いた?私お金持ちか石油王のお嫁さんで迷ってるんだけどどっちにすればいいと思う?」
「やっぱばかだことり、働けよ」
そう言う私もまだ具体的な進路が決まっていない。
大学に行って今やっている弓道を続けたいとは思っているけど…。
特にやりたいことも何もない。
進路希望の紙には、未定と記入しておいた。
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「また明日ね〜環ちゃん、っちゅ」
「はいはい、また明日」
小鳥とは家が近所で、部活がない日は一緒に登下校をしている。
気持ちの悪い投げキッスをした小鳥が家に入るのを見て、たった数十メートル先に見える家に帰ろうと私は一歩を踏み出した。
え、
踏み出した足は地面を蹴らず、空中に浮いた。
否、浮いたのではなく、地面に巨大な黒い穴が空き、"落ちた"のだ。
勢いを止めることもできず、バランスを崩した私はその真っ黒い穴に吸い込まれていった。
「えっえ、うわああああああぁぁぁ!!!」
巨大な穴がふさがれ、青い空が見えなくなるのを私は途切れる意識の中で見ていた。




