4.0
ERT(緊急時初動対応部隊)が現場に到着し強襲したものの、
年配男性を背後から撃ち殺害した容疑者は、
女性警官の業務遂行能力のみを一時的に抹消するに留め、姿を消していた。
周囲の防犯カメラの記録も改ざんされ、足取りは不明。
現場ではAK47カラシニコフが2丁回収された。
背後から撃たれた男性は、オンラインカジノをして
姿をくらました27歳の警察官の父親だった。
息子の悪事を表沙汰にしないよう、裏組織に嘆願したが、
現金だけを取られ存在を抹消されてしまった。
特務捜査情報の中から漏れ出た情報の中で、
我々が掴めたのはその程度の限られた内容に過ぎなかった。
27歳の警察官はフィリピン・マニラ近郊のバタンガス州の
とある工場にいる。しかし、我々はその事実をまだ知らない。
そこには大型港があり、日本企業の電子部品工場、
化学工業、重工業が集結している。
江上は3ヶ月半の特殊任務を終えた。
道庭りおの元で闇アルバイトをして彼女と接点を持った。
実際に会うことはなかった。
報告書は八王子署にて受理され、特務捜査本部に届けられた。
近藤勇が特務捜査本部でどのような取調べを受けたのかは
全く漏れ出て来なかった。
本社ビルがどうしても揉み消さざるを得ない事実があるのだろう。
殺害された賀神しのぶの会社を継承した
是取凛花の事業は、順調に軌道に乗っていた。
山野の姿は九州大学病院東側の通用門防犯カメラに映っていた。
福岡県警本部から逃走したのだ。
福岡県警本部の建物と九州大学病院は徒歩圏内だ。
福岡県警の知人から、山野は後輩警官に
オンラインカジノで荒稼ぎさせていたことを聞かされた。
山野は口を割ったようだ。
27歳の警察官の後輩が警察の捜査にかかりそうになった際、
カジノのアカウントを削除してどうにかもみ消したのが、
賀神しのぶの会社(是取凛花に継承された会社)の子会社のフィリピン法人だ。
道庭りおがデータのかいざんを行ったのだろう。
賀神しのぶは、不正に得た利益のマネーロンダリングを
子会社のフィリピン法人で行っていた。
非公式な調書によると、福岡県警の山野は賀神しのぶから直接はゆすられていない。
フィリピンの海外法人スタッフからゆすられ3000万円を支払っていたという。
後輩を利用してカジノで勝った額のほとんどが吸い上げられた。
山野の言語習得能力は桁違いだ。
外事にいた頃も警察通訳を通さず対象を説得していた。
フィリピンの言語であるタガログ語も流暢に話せたのだ。
江上もその昔、外事にいたことがある。
江上は帰国しても尚、江上であり続ける事情がある。
山野が賀神しのぶを殺害し、
賀神しのぶの会社のナンバー2を取締役に押し上げ、
報酬として3500万円を手に入れていたという。
これがもし事実なら、類を見ない大捕物になる。
しかし山野もまた、姿を消した。
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左目が左側へ移り、右目がそれに追く。
直後に顔も左側を向く。
両目が右側へ移り、
それを追い越すように顔も右を向く。
右側をずっと遠くまで見ても、なお長く
永く続くエメラルドな海。
正面を見上げた。
雲が浮かんでいると言うよりも、むしろ
右上から左下にカタカナのノを書くように
幅の広い刷毛で払ったような形状をしていた。
ジャン・シベリウス交響曲第2番ニ長調
作品43が両耳の奥深くで流れる。
デジタルな空を見つめて
私たちは誰なのか、なぜここにいるのかと考えながら
小さな微笑みを浮かべ
しばらくここに座っていよう
「思いやり」や「気品」を口にするけれど
この場所にはどこか冷ややかで
空中に築かれた砦は
本当にそこにあったのか定かではない
深慮と繊細な絵
計られた心
人間が見ることができるものは
ほんの一部にすぎない
手放そう、緑の野原に息を吹き込ませて
古き樹々の天蓋の下で
騒音も、苦々しい影も、すべて置いて
ありのままの自然の静けさ
私たちが抱える懐疑心を
風はどこかへ運び去る
この終わりのない森の中で
夜空の星々はあんなに小さく見えるのに
私たちはすべてを知っているかのように振る舞う
小さな微笑み
これが望んだ未来
私たちは熟考せずとも切り離す
自分たちの小さな影を「運命」と呼ぶ
しかし大自然は気に留めやしない
私たちが蒔こうとする、ちっぽけな種
手放そう、緑の野原に息を吹き込ませて
古き樹々の天蓋の下で
騒音も、苦々しい影も、すべて置いて
ありのままの自然の静けさ
私たちが抱える懐疑心を
風はどこかへ運び去る
この終わりのない森の中で
息をして
川のせせらぎにすべてを委ねる
もう巧みな言葉は必要ない
大きく広がった空の下で
私たちはようやく、飛び方を学びつつある
自由に
あるがままに
ジャン・シベリウスの交響曲第5番変ホ長調
作品82が何度か流れ
この旅を締めくくる。
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道庭りおは、この3ヶ月半自身の闇仕事である、
顧客アカウントの作成・削除などを
江上に依頼していた。
自身は日本のレアメタル関連企業の元で
専門学校の課題として、
データサイエンスの視点で企業の課題解決を行なっていた。
むしろ真っ当な学生だ。
江上は、顧客データ整理のかたわら、
美顔器フィリピン法人の裏帳簿データにアクセスしていた。
道庭りおのIDを悪用したのだ。
美顔器部品・美容クリーム工場は
表向きの顔であり、実際にはその物流ルートやインフラが、
より高度な技術流出や戦略物資の密輸に利用されているように思えた。
一般的に銅は民生利用としては
電線、モーター、発電設備、電子回路などに使われている。
軍事利用としては、レーダー、通信機器、艦艇・航空機の配線、電力システムに利用される。
通常フィリピンの港湾や工場で行われている業務の多くは、
鉱石・金属の輸送、加工、品質管理、電子部品製造などの民生向けだ。
なので、これだけでは軍事転用だとは断定できない。
しかし、なぜ美顔器の会社の裏帳簿に記載のある銅は、
市場価格の数倍の価格で取引されているのか。
書類上は美容機器部品として輸出しているにも関わらず、
その出荷量が美顔器の生産数と合わない。またコンテナの行き先が何度も変更され、
最終的にどこに荷物が到着したのかわからない。
国際的なマネーロンダリングなのか、産業スパイによる技術流出、
経営者による巨額横領、政治家や官僚との癒着など、
どんな闇が裏に潜んでいるのか今はわからない。
フィリピンはニッケルの産出量も世界有数だ。
電池の材料だけではなく、耐熱合金の原料としても重要で
世界のサプライチェーンの一部を担っている。
ニッケルの民生利用は、EV向けの電池など。
軍事利用は、ジェットエンジンやミサイルに使われる耐熱合金、艦船用鋼材だ。
そこで扱われる素材が結果として防衛産業にも使われる可能性はあるが、
それ自体が軍事目的であることを意味するわけではない。
フィリピンのバタンガス港周辺には、
日本企業が進出した工業団地や港湾施設が数多くあり、
レアメタルに関係する仕事も多い。
銅を採掘するというよりは、金属加工や精錬前後の工程
また電子部品向けの交付価値加工が中心なのである。
ただ、このまま潜って新たな情報を得るしかない。そう江上は思った。
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道庭りおとdiscordで連絡を取り合う江上は慎重に言葉を選ぶ。
ega02: 「次はどんな種?」
Oashh: 「未確認です。また連絡します。」
どことなく事務的だ。
まるで一般企業の確認事項。
江上は以前の道庭りおと今の彼女が置かれている環境が違うように感じた。
警視庁の捜査ニ課は、引き続き是取凛花を泳がせている。
夜通しネットカフェで作業し
外に出た江上は、田舎道を歩いて自宅に戻る。
空き地の脇を通る時、ツンとしたよもぎの匂いが左側の鼻の穴を通り過ぎた。
河面には、緑色の苔のようなものがたくさん浮かんでいて、まるで上空から見下ろした緑の大陸のようだ。上空1000メートル位だろうか、びっしりと黄緑色の苔のような植物が水面全体を覆っている。何かの菌が繁殖してるのか。茶褐色か深緑の部分が一部あり、陸地に見えた。どこか見知らぬ緑の惑星をヘリコプターから見下ろしているような景色だった。
路上脇に生える蔦の壁。それを通り過ぎる時、その匂いをかぎながら、小学生時代の通学路を思い出した。どこだったか、長い階段を登るときだった気がする。
緑地の雑草の上を歩くと、あの時ほどではないが水滴がふくらはぎに跳ね返る。その緑地には白い小さな花が咲いていて、紫色の花も咲いている。菜の花だ。夜歩く景色とは全く違って、心が澄んでいく。
橋の欄干に両腕を添えて、川を覗き込むと
1匹のナマズが僅かに蛇行しながら半径50センチの円を描き、
時計回りに1周し、その場に留まった。
両肘から手首にかけて、橋の欄干と接した部分は冷たく心地よかった。
帰り道、よもぎの葉を右手の人差し指と親指でつまんでちぎり取った。
そのよもぎをその指で丸め、葉の中の汁が染み出たところでその指先を見る。
少し黄緑色に変化している。それを嗅ぐと懐かしい通学路の匂いがした。
道の脇に生える草の中から聞こえる虫の音。心地よかった。
小さな小川を流れる水の音もまた然り。広告板のなくなった鉄の骨組みに空き家のクモの巣が一つ。
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山野は、福岡県警本部の地下2階から西側に隣接する福岡県庁舎の地下へ抜けるドアをこじ開け福岡県庁舎に侵入。監視の目をかいくぐり、地下駐車場まで出た。福岡県が所有する公用車に乗り込もうとする県職員を背後から襲った。両腕で頚動脈を圧迫し、失神した隙に車を奪い地下駐車場から地上に出た。
午前、車はあまり走っていない。逃走には好都合だ。
「どこから抜けるか、あそこしかないな」
山野は呟き、車両を右折させ本線に出るや否や左折した。コンビニ付近の狭い路地を抜け、九州大学病院の敷地内にその公用車で侵入した。
そのまま北東の駐車場まで進み、車両を丁寧に駐車させた。その奥にある白い建物の敷地まで、早足で進み、正面玄関ではなく、通用口に向かいインターホンを鳴らした。屋内で受話器を取ったような、ブツという雑音を聞いた山野はこう言った。
「のまや、かおくふ、いたびとぐす」
通用口のドアの鍵が開いた。山野は3階建ての白い鉄筋コンクリートの中に入った。薄暗い室内にいる人影が小さな声で言った。
「5本」
山野は間をおかず「2本」と言ったが、その人影は「3本だ」といい、携帯端末のアプリを起動した。そこにJPY3,000,000と表示されていた。300万円という意味だ。山野は慣れた手つきで自身のIDとパスワードを入力し、端末のカメラを覗きこんだ。端末のカメラは山野の網膜データをデータソースと照合し、支払いを承認した。
人影は無表情で続ける。
「ニチレイ7番冷凍倉庫前、今夜22時」
山野もまた表情を変えず、頷きもせずその人影の左腕から指先までを伏せ目で視認し、入ってきた通用口からいっさい物音を立てず出て行った。
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Una luna bianca.
In una notte mistica, una falce di luna fece capolino dal lato sinistro delle nuvole, splendente di un bianco intenso.
Sembrava che un alone brillasse dall'alto.
Anche la sua ombra bionda risplendeva.
L'immagine della falce di luna, slanciata verticalmente e che a tratti faceva capolino tra le nuvole, era divina.
Ho udito il suono più bello che avessi mai sentito, e mi è sembrata la più grande esecuzione al mondo, capace di abbracciare ogni cosa.
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是取凛花は取締役会が開かれた6月某日、社長室横の応接室に入らなかった。いつもとは違う。是取凛花は社長室西側の壁に掛かる巨大な油絵の額縁の裏を右手の薬指と中指で探り、プラスチックの四角いボタンを押した。
隠し扉がゆっくりと開いた。まるで象のあくびのように。踊り場のある階段を降り、重厚な金属性の扉の前に立った。網膜、指紋、そして顔認証を行い中に入った。
部屋の中央にあるデスク上のノートパソコンを起動し、さらに網膜、指紋、顔認証を行い端末にログインした。
是取凛花はコマンドラインを立ち上げ、何かのコードを打ち込んだ。すると以下が返され出力した。
+------+----------+---------+
| CODE | CURRENCY | AMOUNT |
+------+----------+---------+
| A | PHP | 750 M |
| Y | PHP | 1300 M |
| N | PHP | 500 M |
| G | PHP | 1000 M | NY
| X | PHP | 2100 M |
| K | PHP | 150 M |
| R | PHP | 1650 M |
| B | PHP | 900 M |
+------+----------+---------+
山野が賀神しのぶを殺し、見返りに1300万ペソを受け取った記録がある。
現代版の飛銭を利用して、是取凛花は山野にまとまった金を渡していたのだ。
上から2行目、CODEがYの箇所が山野へ送金された記録だ。
上から4行目、CODEがGの記録を選択し、送金しますかとの問いに、是取凛花 左手の中指でyのコマンドを入力した。
右端のNYの表記が消えた。
是取凛花のプライベートなアパレルショップのアカウントが自動で開いた。10着のアイテムがカートに入り購入された。三度高速で瞬きしている間に。
フィリピンにある是取凛花の拠点から、2650万円相当のペソが現金で持ち出され、別の場所へ移されることになる。
同時に宮城県仙台市の物流倉庫の業務端末が10着のアイテムの写真と商品IDを受信した。
4ナンバーの個人事業主ドライバーが配送ルートから外れ、あるマンションの一室に入る。大きめだが軽いそのダンボールを一箱ピックアップして、自身の軽自動車の荷台、運転席側のスライドドアを開く。座席のすぐ後ろにその箱を置く。その箱に現金約2500万円が入っていることを、配送ドライバーは知らない。
オンラインで購入した一着の服の写真一枚が100万ペソに相当する暗号になっていたのだ。
山野が自宅で日本円を受け取ったときも同じように配達業者によって届けられていた。
是取凛花は、1人秘密の部屋で呟く。
「しばらくこれもお休みね。」
是取凛花は部下に電話しこう伝えた。
「あの島も一旦流すから、すぐやって」
「承知しました。」
部下は最低限の文言で会話を終了し電話を切った。
是取凛花はプライベートSNSで道庭りおにメッセージを送ろうとしている。携帯電話のアプリをタップしたところで、秘密部屋のドアの外、踊り場辺りで物音がした。是取凛花の目線は手元から左斜め前、下方に瞬間移動した。眼球は氷のように固まり、瞼はやや伏せたままいっさいの動きを止めた。
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道庭りおは、江上にメッセージを返した後手際よく自身のスマートホンをバッグにしまいビジター用のロッカーに入れ鍵をした。道庭りおは今とある日本のレアメタル関連企業にインターンしている。
その企業は都市鉱山からレアメタルを回収するリサイクルを行う。
フィリピンのバタンガス港の周辺や、隣接する経済特区インダストリアル・パークには複数の日系企業が進出している。
この会社もフィリピンに拠点を構えたばかりだ。
フィリピンの工業団地から出る電子基板は、レアメタルの宝庫だが、本来は環境ライセンスを持つ日系企業に適正価格で売却される。しかし現地の小規模な無許可のスクラップ業者に安値で流出してしまう闇ルートが後を絶たない。
その会社は課題用に架空データを用意した。過去5年間のフィリピン国内の電子部品出荷量と自社がバタンガス港周辺の工業団地から実際に回収できた基板の重量データ、現地の非鉄金属の闇市場の価格推移だ。
道庭りおはデータの推移を見て不自然な点に気づいていた。現地の電子部品の生産量は増えているのに、その会社に持ち込まれるリサイクル原料(基板)がここ2年で急減しているエリアがあるのだ。
道庭りおは、周辺のGoogleマップのデータや、現地拠点の営業活動ログであるアタック履歴を掛け合わせて分析。その結果、特定の工業団地の近くに、新しく無許可のスクラップ買取業者が乱立し、そこへ資源が流出している。環境汚染のリスクもある状態で処理されているという仮説をデータで証明しようとしている。
「それでは道庭さん、発表をお願いします。」
3名の学生の中で最後に、会議室に入室した道庭りおに、東京本社の総務部の担当者が声掛けをする。
道庭リオは自身のノートパソコンをプレゼン用の大きなスクリーンに接続し、データ解析の結果とGoogle マップにプロットしたドットマップを展開していく。
「着眼点が既に中堅レベルの社員の観察眼と同じです。すばらしい。どこでこの手法を?」
「学校です。あと知人も詳しいです。」
「そうですか?いつもどんなことに関心を持っていますか?」
「そうですね、些細な変化を見逃さないことです。どちらかというと自然と目に入ってくるんです。」
「そうですか、それではもしよければこのまま入社面談ですかね。来年ですかね、卒業は?どうぞよろしくお願いいたします」
その総務部の担当者は、教育担当の課長と営業部長に目くばせをして口を閉じた笑顔で着席した。
道庭りおは一切表情を変えなかった。
「ありがとうございました。」
そう言って、自身のプレゼンテーションを終了し、スクリーンからノートパソコンの接続を切り一礼をした。
道庭の分析をもとに、会社は後に流出が激しいエリアの工場に対して、環境コンプライアンスという適正処理の証明書を発行できる強みを前面に出した営業強化ルートを策定した。データ分析が、現地の環境破壊を防ぎ、自社の資源確保につながる一歩となる。そう願いたい。君もそう思わないか?
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日本中がワールドカップサッカー日本代表チュニジア戦に熱狂していた頃、僕は芸術に没入していた。無心に絵を描いていたのである。
頭の中のイメージは白い月。神秘的な夜、三日月が雲の左側から少しだけ顔を覗かせ白く輝く。後光が上から射しているようにも見える。亜麻色の影もまた明るく輝いていた。周りの景色は現実味があるが、時々雲の隙間から顔を出す、縦に細い三日月だけは神々しかった。
今夜は鯖みりんを食べないことにした。
体中を心地いい何かが覆っていた。
黄金の煌びやかなまた別のスパークリングが上方10メートの高さに輝く。中央が一番明るく、全体として横長な楕円形だ。星型を斜め下から見上げたようにも見える。その楕円の中には、小さな透明な球がいくつも散りばめられている。放射は途切れ途切れだが、その透明な球の周りを取り囲む。
楕円光の塊は上空に8つ浮かんでいる。
幻想的だ。脳内シナプスの中心部の光だけが際立っているようにも見えた。神々のいたずらか。
私はこれまで聞いたこともないほど美しい音色を耳にした。
それは、すべてを包み込む、この世で最も偉大な総合演出のように思えた。
月は地上付近では、凛とした佇まいで微笑み、軽やかに滑らかに氷上を滑るように輝き続ける。
実際に夜空を見つめると、そこにも本物の三日月が雲の合間から少しだけ、姿を我々に見せてくれていた。
気づくと僕は蛙の大合唱の中、野鳥の鳴き声で目を覚ます。辺りはまだ暗いが朝が訪れる。
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