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第31話 新・みんなのたまり場

 その日、いつものようにカオスねこ団本部という名の僕たち三人のたまり場へ向かうと、応接室のテーブルの上に一通の僕宛ての封筒が置いてあった。怪訝に思いつつも、中を確認してみると、そこにはセネリーからの手紙が入ってあった。


『ユイトへ

 カオスねこ団本部は移転したよ!

 新しい住所はここ↓ね!

 住所 エリュシウス ◯◯区 ◯◯通り ◯◯番地

 じゃあ新しい本部でミサキと一緒に待ってるから!


 貴方のセネリーより(キャ~♡)』


(…………え、なにこれ……)


 というか何が貴方のセネリー(キャ~♡)だよっ! こっちの方が恥ずかしくなるんですけど! 僕は心の中でツッコミを入れつつ、現在の状況を整理する。……えーと、どうやらカオスねこ団本部はクランマスターの僕の同意はもちろん事前連絡もなく、いつの間にか新しい場所へと引っ越してしまったということらしい。


 ……ほんとセネリーと一緒だと毎日飽きなくていいなぁ。


 僕はセネリーに指定された住所に向かうために部屋を出た。



「うーん、この通りのはずだけど………………げっ」


 僕はセネリーに指定された住所がある通りまでやってくると、すぐに新しいクラン本部がどの建物かわかった。なぜなら、そこには見るからに周りから浮いている何やら大きな酒場のような建物が建っていたからだ。外観的には現代で言うところの西部劇に出てきそうな酒場だった。


 そして、入り口の上にはでかでかと『カオスねこ団本部』と書かれた看板が掲げられていて、さらには何やら変なねこのような絵まで描かれていた。はっきり言って目立ちまくりだ。


 僕は何がどうなっているのかよくわからないまま建物のドアを開ける。すると、建物の一階は大きなラウンジのようになっていて、奥にはバーのようなものがあり、手前にはいくつかのテーブルやソファがあった。雰囲気はもう完全に酒場のそれだった。


「お、ユイト! ようやく来たね! ちょっと新しく建ててみたんだけどさ、どうこのデザイン? いいでしょ!」


 近くのテーブルに座って何やら魔導具の手入れをしていたセネリーが僕に話しかけてくる。


「……あのさ、これどういうこと? ちゃんと説明して欲しいんだけど」


 僕はそうセネリーに言った。


「ん? だから新しく建てたんだよ。やっぱり前のやつだとさ、ちょっと手狭だしクラン本部って感じしないでしょ? こっちのほうが広いし断然クランって感じがするかなと思って。……あ、も、もちろん別に私がもっと広い研究室を欲しいからとかそういう理由で新築したわけじゃないよ?」


 ……最後のセリフにセネリーの本音がだだ漏れだなと僕は思った。


「……ミサキは賛成したの?」


「ミサキなら『別にこれでも構わないし、むしろ広くなっていい』って言ってたよ。さすがミサキ、物わかりいいよね」


 セネリーはそう言った。きっとミサキはあんまり興味がないんだろうと僕は思った。


「二階にはクランマスターである君の部屋もあるし、隣には副クランマスターであるミサキの部屋もある。あと数部屋空きがあるかな。それでそこの階段は地下にある私の研究室へと続いているんだ」


 セネリーはそう言うと、地下の研究室に続いているという階段の方に顔を向けた。


「ま、そんな感じ。……あ、あと新築お祝いってことでネフィも呼んでおいたよ。ほらあそこ」


 セネリーがそう言ってバーの方を向くと、そこにはネフィの姿があった。ネフィは僕の姿に気づくと、ひらひらと軽く手を振る。僕はとりあえずネフィに挨拶するためにネフィの方へと歩いていった。


「や、やぁネフィ。……げ、元気?」


「元気だよ」


 ネフィはやや気だるげにそう返事をした。


「わざわざ来てもらってごめんね。僕も事前に知らされてなくてさ」


「別にいいよ。私も暇だったし」


「そ、そう? それならいいけど……」


 僕がそう言うと、ネフィは目の前のカップへと手を伸ばし、中に入った紫色の液体に口をつけた。その液体からは何とも形容しがたい香りが漂ってくる。……お茶か何かだろうか。


 僕がその液体を見て少し怪訝な表情をしていると、ネフィは言った。


「これね、私特製のハーブティーなんだ。飲むと心が安らいですごくリラックスできるの。たまにそこにあるはずがないものも見えたりもしてね……すごく楽しいよ。……ユイトも飲んでみる?」


「い、いや今はいいかな……」


 僕はやんわりと断った。……ネフィはさらっと言ったけど、あるはずがないものが見えるってそれ幻覚じゃない? 大丈夫?


「そう? 別に変なものは入ってないんだけどな……。まぁ新築祝いということでたくさん持ってきたから後で飲んでね」


 ネフィはそう言って隣の席に置いてあった箱を持ち上げてみせた。中には紫色の粉末状の粉がいっぱいに入っていた。僕は少し顔を引きつらせつつも「あ、ありがとう……」と言った。


「そ、そういえばミサキがどこにいるか知らない?」


「ミサキなら二階にいると思うよ。君の部屋も二階にあるんだっけ? ついでに見にいったら?」


「そ、そうしようかな」


 僕はそう答えて、二階へ上がる階段へと向かった。



 二階に上がると、ちょうど部屋から出てきたミサキに出くわした。


「あ、ユイト。……どう? 驚いたでしょ」


 ミサキは開口一番にそう言った。


「えっと、驚いたってレベルじゃないんだけど……。いきなりクラン本部の移転なんて聞いてないよ。しかも相談とか事前連絡もなかったし」


「私もびっくりしたわ。でもまぁ部屋とかは前よりも相当広くなってるし、悪くはないと思う」


「それはいいけど……費用はどうしたの? もしかしてクランのお金使った?」


 僕はそうミサキに尋ねた。クラン用のお金は魔石を売却したときなどに、その都度差し引いて貯めるようにしていた。そして、クラン用のお金の管理担当はミサキだった。とてもじゃないけど、セネリーにお金の管理を任せるわけにはいかなかった。


「一切使ってないわ。今回のクラン本部の建造は全てセネリーの私費によるものね。これだけの建物となると相当費用がかかっただろうから、セネリーにどうやって資金を捻出したのか聞いてみたんだけど、そしたら、なんかパパから出してもらったって」


「ぱ、パパ!?」


「そう、パパ……。詳しくは教えてくれなかったけど、多分セネリーってすごいお金持ちの家の生まれだと思う」


 ミサキはそう言った。セネリーの家族に関しては、僕は以前にセネリーに何気なく聞いてみたことがあったけど、そのときははぐらかされてほとんど何も教えてくれなかった。しかし、ここに来てまさかセネリーパパが建物の建造費用を全額出していたとは……。


 僕はいつかセネリーパパにお礼を言いに行かないとと思った。


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