不可解な凶刃
加筆しました。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
竜達がタタラ国を出て早くて二週間。竜達は順調に中央都市国への旅路を歩んでいた。
「そろそろなんですか?」
「はい。ここから一時間程で大きくはないですが街があります」
「じゃあ。久し振りの宿だね」
アーシャは久し振りの室内生活に喜んだ。
彼らの道中は早まった。
そして、道中である一行と遭遇する。
「行商人の一行です」
レティシアが道の先から歩いてくる一行を指さす。
馬車に多くの荷物を乗せてこちらに歩いてくる。
竜達は急いで布やフードで顔を覆った。
行商人を装って襲ってくる。そういった事をする者達がいたためだ。
だが竜達の心配はけうに終わった。
行商人の一行は竜達を通り過ぎていった。
今回は違っていたらしい。
安心する。
「!」
咄嗟に竜は素早く動いていた。
手に硬い物を握る感触。
握られていたのは一本のナイフだった。
トーストにバターを塗るために使用されるバターナイフ。
使い方によっては凶器になる。
握った位置から見て自分の頭辺りだった。
急いで行商人達の方を睨んだ。
だが、行商人達の1人が立っていた。
しかし。その表情は困惑していた。
まるで自分が何をしたのか理解できていないという感じだった。
竜は手を掛けていた聖涙から離した。
その人は頭を下げて一行に戻っていった。
「竜!大丈夫!」
「日陰さん!」
仁美達も竜と同じ様に警戒していたために気づいていた。
「大丈夫。問題ないよ」
「ですが。そのナイフ」
仁美は竜の手に持つナイフを指さす。
「大丈夫。毒は塗られていないよ」
「だけど。彼を逃がして良かったの?」
アーシャとしては放っておいたことに疑問を口にする。
「大丈夫です。本当に殺気も何もありませんでしたから」
竜は安心させるように笑顔で答えた。
しかし、竜の内心には少しの不安が残った。
(本当に殺気も感じられない。あの人は自分のやったことに本気で驚いていた)
竜の心に小さな不安が残った。
この小さな不安が後になって大きく振りかかってくるなどこの時は誰も思わなかった。




