第十九話「傲慢なる女王の庭」1
第一章 神獣たちの狂宴、その後
夜明け前の闇が最も濃くなる刻限。魔王城の正面ゲート前広場は、神話の時代が蘇ったかのような、極彩色のエネルギーが奔流する地獄絵図と化していた。耳をつんざく爆音。大気を焦がす熱波。 そして、絶え間なく響く魔獣の咆哮と、金属がひしゃげる音。
上空では、朱 焔陽の遺志を継いだ少女、李 小蓮が、真紅の翼をはためかせて空を駆けていた。彼女は不慣れな飛翔に戸惑いながらも、その身に宿した業火を惜しみなく解放し、空を埋め尽くすガーゴイルの群れを焼き払っていた。
「熱い……! 熱いよぉ……!」
シャオが叫ぶ。 自身の体から噴き出す炎の熱さに、皮膚が焼けただれる感覚がある。 だが、彼女は退かない。
「でも、負けない! ……響ちゃんが、見てるんだから!」
彼女は両手を突き出した。 掌から放たれた火球が、城壁からせり出した無数の魔導砲台を次々と溶解させていく。 その軌道を、一筋の青い風がサポートする。 王 麗琳だ。 彼女は風の結界を展開し、シャオへと集中する対空砲火を弾き飛ばす。
「前だけ見てなさい、シャオ! ……背中は私が守るわ!」
リーリンの声が、無線のように風に乗って届く。彼女は、真空の刃で敵の装甲を切り裂きながら、妹分であるシャオを導いていた。
「うん! ありがとう、リーリン!」
赤と青。 二つの翼が交差し、螺旋を描く。 かつては敵対し、今は姉妹のように共鳴する二匹の若き龍と鳥。
一方、地上では、陳 幽寂が、文字通りの「虎」となって暴れまわっていた。老いた肉体から噴き出す気功は、物理的な質量を持つ白い巨獣の幻影となり、機械化された悪魔の群れをなぎ倒す。
「ふんッ! ……最近の悪魔は、腰が入っとらんわ!」
一撃必殺の掌底。 触れた瞬間に敵の内部構造を破壊する「浸透勁」が、巨大なゴーレムを粉々に粉砕する。 老いてなお盛ん。いや、死線をくぐるたびに若返っているかのような気迫。
「ヒャッハー! じいさん、張り切りすぎだぜ!」
その足元を、漆黒の水流が走る。 チャーリー・Sだ。 彼は、アヴァベルの魔力で変質した大地から強引に地下水を汲み上げ、戦場を泥沼へと変えていた。 泥に足を取られた敵兵を、水の氷柱が貫き、串刺しにする。
「へへっ。……ここらで一発、デカいのが来るぞ!」
チャーリーが叫んだ瞬間、城壁から新たな敵増援――重装甲の機械兵団が雪崩れ込んできた。
「おい、響! ガス欠じゃねえだろうな!?」
チャーリーが、後方へ向かって怒鳴る。その視線の先。戦場の中央で、辰巳響が膝をついていた。
彼女の全身から放たれていた雷光が、チカチカと明滅し、弱まっている。 リーリンからの供給はある。エネルギーは足りているはずだ。 だが、肉体的な疲労と、何より「美咲がメシアとして覚醒してしまった」こと、そして「彼女を戦場へ送り出してしまった」という精神的な重圧が、彼女の動きを鈍らせていた。
(アタシが……あいつを、死地に送った……)
「ハァ、ハァ……! うっせぇ! ……まだ、食える!」
響は、震える手でポケットからチョコレートを取り出し、包み紙ごと噛み砕いた。ジャリッ、という音。糖分が脳に回る。 無理やり体を動かす。
「……アタシが道を開けなきゃ……灯たちが……!」
その時。 城壁の最上部、巨大な主砲塔が鎌首をもたげた。砲口に紫色の魔力が充填され、その照準が、動けない響へと固定される。
「響ちゃん!?」
「いかん!」
上空のシャオと、地上のチェン爺が同時に叫ぶ。 間に合わない。 極太の魔力ビームが、響を消し飛ばそうと放たれた。
ドゴォォォォォン!!
爆炎が上がる。響は、反射的に目を閉じた。 熱波が肌を焼く――はずだった。
だが、痛みは来なかった。恐る恐る目を開けると、彼女の前には、巨大な「壁」があった。
氷の壁。風の障壁。そして炎の渦。三つの力が重なり合い、絶対的な盾となってビームを防いでいたのだ。
「……へっ」
響が顔を上げる。 そこには、四神全員が彼女を守るように立っていた。チェン爺が構え、チャーリーが盾を作り、リーリンとシャオが空から援護している。
「水臭ぇことすんなよ、東の龍」
チャーリーが、ニカっと笑った。
「お前は、俺たちの希望を迎えに行くんだろ? ……ここでへばってる暇なんざねえはずだ」
「……」
響の胸に、熱いものがこみ上げる。そうだ。 ここで立ち止まっている場合じゃない。 美咲が、灯が、待っている。
「……ああ。そうだな」
響は立ち上がった。 膝の震えが止まる。 仲間がいる。背中を支えてくれる神々がいる。 そして、その先で親友が待っている。 なら、アタシがやるべきことは一つだ。
「……道を開けるぞ! 灯たちのために!」
響が咆哮した。 その呼びかけに応じ、四神たちの力が響の元へと集束する。風、林、火、山。 五つの力が一つになり、城門をこじ開ける巨大なエネルギー弾となって炸裂する。
自分が読みたい物語を書いています。
可能な限り更新できるようにしていきたいなぁと思っています。
(制作に関してAIを利用しています)




