第42話 エアリアル
久しぶりの投稿です。
なんとか物語を完結まで書きたいです
その妖精の様な生き物は俺たちの前で止まりこう言った
「私はダヌ様の僕、エアリアル。ここから先は入れないように仰せつかっております。お引き返し下さい」
ゆらゆらと蜻蛉のように宙を飛びながら、丁寧な物腰だ。
「あの、エアリアルさん。質問があるんだけどいいかにゃ?」
「……答えられるものでしたら」
「この先にエリザベッタという女はいないかにゃ?」
「さあ? 存じ上げません。私の使命は侵入者を排除するのみです。 立ち去りなさい」
なんか口調が荒くなってきたぞ。
「無理矢理通ると言ったら?」
そう言った瞬間、辺りに風が巻き起こる!
「去れ!!」
エアリアルがそう叫ぶと、激しい突風が俺たちを襲う。
猫の俺は簡単に飛ばされ、シグヴァールに掴まった。
サラは四つん這いの姿勢でなんとか耐えている。
さらに風が強まると、サラは飛ばされて石垣の下まで転がる。
なんとか耐えてるシグヴァールの腕の皮膚が裂け血が噴き出た!!
「くっ、これは!?」
俺は闇の壁を三角錐の様な形で展開して風をやり過ごす。
「大丈夫かにゃ? おそらく真空波の様な攻撃にゃん。 風が直撃するとやばいにゃ!」
「ええ、大した事は無いわ。 でもあれに近づくのは難しそうね」
「とりあえず聖術で身体強化するにゃ。 細胞ひとつひとつを強化するイメージで!」
「わかった!」
シグヴァールの体は白いオーラに包まれる。
ここ最近の修行のおかげで、魔力量は以前とは比べ物にならないくらい多い。
おそらくアザエルと戦った時の2倍くらいのバフがかかるはずだ。
突風で飛ばない俺たちを見て、エアリアルは顔を歪ませる。
「アルラウネ!! トレント!!」
地面からボコボコと人の顔がついた植物が生えて来る。
崖の上からは枯れた樹木がわらわらと現れた。
アルラウネは地面から這い出ると金切り声を発すると一斉に岩を飛ばしてきた。
「くっ、ストーンバレットか!!」
シグヴァールが横に回避すると、まるで瞬間移動した様な速さで動く!
「……想像以上だにゃ!」
シグヴァールは素早く、アルラウネを切り裂く!
俺は振り落とされそうなのを必死にしがみついたまま、シグヴァールと同様に闇の刃でアルラウネを切り裂いていく。
シグヴァール本人も驚いていて、理解が追いついてない様子だ。
崖の上からトレント共が降りてくる。
ウネウネと気持ち悪い動きで地面をズルズルと這いずってこちらに向かって来る。
枯れた幹をこちらに向けギチギチと軋む音を響かせるその様は、まるで呪言を飛ばす老婆のようにも見える
サラが再び石垣を登って来た。
吹き飛ばされた事が気に入らないらしく、牙を剥いて怒っている。
白銀の短髪を逆立てながら空に向かい咆哮を上げると、オーラが炎に変わりサラの体を包み込んだ。
地面を力強く蹴ると、風をもろともせず一瞬でトレントの側に距離を詰めた!
爪を一閃すると、トレントの胴体は引き裂かれ、裂傷から炎が上がる。
サラは崖から降りてくるトレントに次々と襲い掛かり、一瞬のうちに殲滅させた。
「強いにゃ!」
想像以上の力を発揮するサラに感嘆の声が思わず出る。
エアリアルは力強く空中をひと回転すると、先程より強い突風が俺たちを襲う!
サラが素早くエアリアルとの距離を詰めると、纏わる炎が熱風になりアルラウネを焼いていく。
耳を劈く断末魔の叫びを置き去りにして、エアリアルに爪が届きそうな瞬間、今までよりもさらに強力な風が辺りを包み、竜巻状にエアリアルの体を包み込んだ!
サラの爪は虚しく空を切り、エアリアルはそのまま上空に飛び上がった。
エアリアルが何やら叫ぶと、それに呼応する様に森の中から巨大な魔獣が飛び上がった。
「あれはなんだにゃー?」
「大きい鳥かしら? 」
「あ、あれはワイバーンなの!!」
「ワイバーン?レッサードラゴンの?」
謎の生物に注目をしていると、上空のエアリアルが上空から強い突風を放つ。
俺の闇の壁でガードするが、ここから一歩も動けない。
突風は威力を増し、真空波が闇の壁にぶつかり金属がぶつかる様な鈍い音が辺りに響いた。
その瞬間!!
ワイバーンが風に乗り急降下し、爪で闇の壁を打ち砕いた。
エアリアルの突風が俺たちを襲い吹き飛ばされてしまった!
体重の軽い順に遠くに飛ばされて、俺はかろうじて石垣の手前で踏みとどまった。
シグヴァールは剣を構えてワイバーンを牽制する。
サラは四つん這いの姿勢から一気に加速してエアリアルに襲いかかるが、軽々と躱されてしまった。
流石に空を飛ぶ相手とは相性が悪すぎる。
「サラ、少しの間だけエアリアルの注意を引いてくれるかにゃ!?」
「わかったの、頑張ってみる!!」
サラが再びエアリアルに突撃する!
俺は妖術のオーラを練り、大きい猛禽『グリフォン』を作る。
俺を背中に乗せて、低空で飛び立ったグリフォンはシグヴァールを嘴でつかみ高く舞った。
「まずはワイバーンを落とすにゃ!!」
「ふぁ、ちょっと待って!」
シグヴァールは首にしがみつき、なんとか背中に乗った。
グリフォンはワイバーン目掛けて急加速する。
彗星の如くワイバーンに向けて一閃するとワイバーンの頭をかすめた。
グリフォンの鉤爪は俺の闇の刃で強化されている。
負けじとワイバーンも体勢を立て直し上空に舞い上がり、蝙蝠の様な羽を短くたたみ急降下して鋭い爪を槍の様に突き立てる。
先程俺の闇の壁を打ち壊した一撃だ。
この爪を目掛けてシグヴァールの剣がうなりを上げる。
細剣であるクレイブソリッシュは風切り音を輝かせ容易にワイバーンの片足を切りおとした。
うめき声を上げ錐揉み状に落ちていくワイバーン。
グリフォンはそこに向けて急下降する!
『ジャリッ!!』
ワイバーンと交差する際に石と石がぶつかる様な乾いた音がした。
ワイバーンが地面に叩きつけられた時には、首と胴体が離れて転がっていた。
俺たちは地面をスレスレで飛び、再び上空へ。
サラの方を見ると、エアリアルを追いかけ回していた。
素早く距離を詰めるが、風に邪魔され体を捉えることができない。
しかし絶え間ない攻撃にエアリアルの方も余裕がない様に見える。
俺たちが加勢をしようと体勢を整えた時だった。
分厚い壁にぶつかる様に、サラの体が何もない所で固まった。
「空気爆弾」
エアリアルがそう詠唱すると、激しい爆発音と共にサラが吹き飛んで崖に叩きつけられる。
「サラ!!」
俺たちはサラの下に急降下した。
作品を読んでいただいてありがとうございます。
・ブックマークへの追加
・画面下の「☆☆☆☆☆」からポイント評価
などをしていただけたら励みになります
https://x.com/Gerashwin_Ira
Xのアカウント作りました。
よろしくお願いします




