俺の嫁
ぐうたら時間でとりあえず書いてるので、更新は不定期です。
適当ですみません。
佐藤流人18歳、高校3年生。
どこにでもいそうな高校生男子、それが俺だ。
いや、俺だったというべきかもしれない。
俺が教室の窓際の自席で、憂鬱になりながら外を眺めていると、
「りゅうとーーーっ」
校庭から教室に向かって手をブンブカ振ってくる長い黒髪をポニーテールにした美少女がいた。
今時小学生でもしないような無邪気な行動と学年最下位をひた走る成績を気にしない能天気さを擬人化して制服を着せたような陽キャの権化たる明るい笑顔が、今の俺の陰鬱な気分をさらに暗くする。
あれが俺の嫁、環珠稀18歳。
えっ、何、高校生で嫁?
すまん、自分で言っててもよくわからん。
つい先日4月の誕生日を向かえた俺に両親が用意したサプライズプレゼント、それが珠稀だ。
うん、巨大な箱から裸でリボンをグルグル巻き付けただけの珠稀がケーキを切り分ける用の包丁を持って登場してきたときは、どんな高レベルな変態が我が家に襲撃を仕掛けてきたのかと驚いたもんだ。
まあ、ゆっくり事情をきいても何一つ納得する内容はなかったけど、とりあえず納得したことにする。
残念ながら、珠稀が実はアンドロイドとか、そんなSF的な要素はなく、実在する生身の人間だ。
誕プレが生身の美少女って、なんだこれ?
大丈夫か、俺の両親。
珠稀は俺の両親の幼馴染みの娘だけど、もちろん俺たち自身も幼馴染み。
「おい、珠稀、お前の人生それでいいのか」って言ったときの珠稀の言葉は忘れられない。
珠稀は「ようやく物心ついたときからのタマキンとかタマタマとか呼ばれ続けた私の人生が変わる時がきたのよ」と拳を突き上げながら血の涙を流さんばかりに喜んでいた。
あー、本人はすごく満足そうだな。
えーと、それで俺の意見は?
そう思った俺に母親がある条件を提示してくる。
「今なら小遣いに扶養手当をつけてあげるけど」
「うっ!」
そっと、提示された小遣いの増額。
それに抗える高校生がいるだろうか。
いや、いない。
俺はあっさり敗北した。
こうして、周りをガチガチに固められた俺は、晴れて高校3年生男子でありながら既婚者となってしまった。
まあ、珠稀が嫁となっても、とくに俺の学校生活は変わらんだろ。
あと一年お互い隠し通せばなんも問題ないんだ。
そう思ってた俺の認識は正直甘かった。
昼休み。
クラスの男子と購買にでもいこうかとしていると、珠稀が大きな弁当包みを持ってきた。
「りゅうとー、お弁当作ってきたよ」
「助かる」
「おっ、流人、彼女の愛妻弁当かいいな」
「彼女じゃなく、マジもんの愛妻弁当だけどな」
「へっ?」
「なんでもない。木ノ下、細かいことは気にすんな。それより早くいかないと購買のパンが売り切れるぞ」
「おっと、そいつはまずいな」
木ノ下を見送り、周りに誰もいないのを確認して俺は弁当を受け取り開けてみる。
どうやったのか、そこには俺への愛がヒジキの煮物を使った長文で綴られていた。
「うわっ、細かいし重すぎるだろっ! というか、よくヒジキ文字を崩さずに学校まで持ってこれたな」
「あー、それは4時間目の授業中に頑張って書いたんだよ」
「いや、そこはお前は成績良くないんだから、ちゃんと勉強しとけよ」
まあ、見た目はともかく味は大丈夫なのはよく知ってるし、俺は急いで弁当をかきこみ証拠隠滅した。
「これで大丈夫」と思っていると、教室でクラスメートの女子生徒と話している珠稀が目に入る。
「うちの流人がお世話になってます」
「あはは、環さんって、まるで佐藤君の奥さんみたい」
「あー、みたいじゃなく」
「!」
ちょっと待ったーーーーーー!
俺は珠稀の口を強引に塞ぐと、そのまま教室から連れ出した。
「ハアハア、おい、珠稀、お前さっき俺のクラスの女子に何言おうとした?」
「えっ、私は流人の妻なんだから、奥さんなんだよって言うつもりだったんだけど、ダメだった?」
「ダメに決まってるだろ!」
さっきの俺、ナイス判断!
もう少しで俺と珠稀が夫婦ってバレてしまうとこだった。
「お前な、もし学校側にバレでもしたら俺たち仲良く退学ものなんだぞ」
「えっ、なんで? 校則に結婚したらダメって書かれてないよ?」
「…………」
マジか、こいつ。
珠稀の成績や普段の行動からバカだバカだと薄々思っていたけど、まさかここまでだったとは。
俺は珠稀の実力を見誤っていたかもしれない。
主に悪い方向に。
「いやいやいや、書いてなくても普通はそういうもんなんだよ。一般常識まで書いていたら広辞苑みたいな生徒手帳になるぞ」
「それは重そうだし、やだね」
「そういう問題か? 他に誰にも言ってないよな」
急に気まずそうに冷や汗をかく珠稀。
めっちゃ怪しい。
俺は珠稀を睨み付けながら確認する。
「おい、珠稀。まさか、もう誰かに言ったのか?」
「…………先生に言っちゃった」
最悪だ。
よりによって、なんで教師に言ってんの。
こいつバカなの?
いやバカだよ、バカなのは知ってたけど、まさかここまでとは。
「マジか……」
ガックリと項垂れる俺の耳に校内放送が流れ込んでくる。
『3年の佐藤流人、同じく3年の環珠稀は至急職員室までくるように。繰り返す、ーー』
繰り返される校内放送。
それは、俺には死刑宣告のように聞こえた。




