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私が召喚したのは天使なのだろうか!?  作者: 澤田とるふ
学園生活編
20/32

19.属性の天使

 私の目の前で、従僕の天使は火を使った。

 そう、火の魔法を使ったのだ。


 4属性のうち、火の天使が降臨しなくなって約1000年と言われている。今までいくつもの国や貴族が儀式を行い、弱まった火の力を借りようと上位天使を降臨させ、契約を結ぼうとした。

 だが、すべてがことごとく失敗し、最下位の属性をもつ第六位の天使ですら火属性は降臨したことがない。


 他属性である水、土、風の天使からの情報では、火の天使は人族との交流を絶っているとのことだ。

 この世界の上位魔法はほとんど天使から伝えられ、魔具や儀式魔法も属性を使う高位の天使や悪魔から伝えられる。また、属性を付与するためのアイテムも火の眷属がいなければ手に入れることはできない。

 そして現在、火の知識を伝えてくれるのは悪魔のみ。

 だけど、悪魔との契約はリスクが高いため、火の魔法や技術は衰退する一方だった。


 火の天使が降臨しない理由は簡単。私はもちろん、子供でも知っているおとぎ話が原因だっていわれてる。

 だから、この世界に火の天使は降臨しない・・・はずだった。


 それが今、目の前でのんきに私の名前を呼んでいる。

 降臨しないはずの火の天使のくせに、しかも、従僕として私に付き従っているこいつは、ことの重大さがわかっていないんだろうか?

 これだけ多くの人の前で、火の魔法を使った。

 学園中に知れ渡ったのは間違いない。


「どうしたんだ?早く砂アラシのところに行こう。」


 のんきにこんなことを言っている私の目の前に、教員らしき人が現れた。


「ちょっとこっちに・・・いえ、こちらにお越し下さい。」


 メガネが似合うポニーテールの美人さん・・・胸の名札を見ると、特級クラスの担任らしい。


「メリット?」


「セロ、とりあえずついていきましょう。」


 私は特級クラスの担任の先生について行くことにした。私自身何がなんだかわからないけど、このままここにいるのはダメな気がしたから。

 黙って後ろをセロが付いてくる。


 私達はそのまま校長室と書かれた部屋に通された。

 部屋自体は広くないが、大きなソファーが目立つ。


「とりあえず、こちらに。」


 私にソファーを進める先生。

 私が座ると、セロも隣に座った。


「しばらくお待ちを。」


 先生はそのまま退出していってしまった。


「なんなんだ?いったい。」


「あんた・・・わかってないの!?」


 私の問いにセロが首をかしげた。


「ていうかあんた!なんで火の天使だって黙ってたの!?私にも黙ってるってどういうこと!?」


「いや、別に隠してたわけじゃないぞ?聞かなかっただろう?」


 こいつ・・・何言って・・・。

 けれど、言われてみて考える・・・確かに、私はセロに属性のことを聞いたことはない。階位がない時点で属性は無関係だと思い込み、さらに入学のクラス分け結果を見て、属性のない天使の亜種だと思い込んでいた。


「わかってるの!?火の天使がどういうものか!」


「・・・神によって火の属性を与えられ、火の魔法を得意とする天使・・・だろ?」


「違う!そういう意味じゃない!」


「じゃあなんだ?」


「だから!」


 私が説明しようとしたタイミングでドアが開けられた。

 つかつかと入ってくるのは、確か学園の校長に、先ほどの女教師、そしてティーチ先生だった。

 校長が私の対面に座り、2人の先生はその後ろに並んで立つ。


「さて、今報告を聞いたのだが・・・火の天使というのは本当かね?」


 校長は、伸ばした長い白ひげを触りながら、私に目を向ける。

 かなりの高齢に見えるが、その眼光は鋭かった。


「え、ええ。そう・・・みたいです。」


「みたいとは?」


「あの・・・私も先ほど初めて・・・火を使うのを見たので・・・。」


「君は自分の従僕が属性の天使だと知らなかったということかね?」


「・・・はい。」


 嘘をついても仕方ないので、私は正直に答えた。

 校長は自らの髭を撫で、何かを考えるように少し黙ったあと、セロの方に目をやった。


「君は主に何も伝えなかったのかね?」


 校長の目がセロに向く。


「誰だ?お前は。お前に答える義務はない。」


「ぶほっ!」


 セロのまさかの答えに私が吹いてしまった。

 急いでセロの頭を叩く。


「こらっ!あんたなんてことを!こちらはこの学園の校長先生よ!」


 セロの頭を無理やり押さえつけて校長先生に頭を下げさせる。


「痛い・・・メリット、校長とは偉いのか?担任よりも?」


「当たり前でしょう!少なくともこの学園で大人はみんな私より偉いわっ!」


 手を離すと、セロが叩かれた部分を撫でながら、校長に向き直った。


「失礼しました。特に聞かれなかったので答えませんでした。階位はありませんので、メリットは俺が火属性だということを知ることはなかったはずです。」


 急に丁寧になったセロを見て、校長が急に笑いだした。


「フォフォフォ、従僕契約を結んでいることは間違いないらしい。それにしても階位なしか・・・元々の階位は?」


「元の階位は言えません。これは階位剥奪時に誓約されています。」


 階位剥奪?


「なるほど・・・剥奪か、君が火の天使ということは間違いないかね?」


 剥奪とはどういう意味だろう?


「階位はありませんが、間違いありません。」


「そうか・・・。」


 校長はまた髭を触りながら何かを考えている。

 私は、セロのことをあまり良く知らない自分を恥じていた。

 確かに日は浅いけど、なぜここまで自分の従僕のことを知ろうとしなかったんだろうか?


「ティーチ、彼の記録は天使族(亜種)となっておるが・・・。」


「・・・はい、記載ミスですね。問いただしておきます。おそらく、階位なしというところから安易に判断したものかと。」


「なるほどな・・・考えねばならんか。」


「ロフェッサよ。今回の演習はどうじゃった?」


「私の指導力不足です。すべてネット・ボアンヌの行動が原因と判明しています。また、ボアンヌ卿にはホワイトウルフの件、問いただします。」


「あれは従僕ではないと?」


「はい・・・あの実力は間違いなく契約されたものです。」


「わかった。では、そういうことじゃ。すまんな。わざわざ呼びつけて。」


 校長はニコリと笑いながら、私とセロを見ていた。

 退出していいということだろうか?

 ティーチ先生の方を見てみる。


「構いませんよ、医務室にライナとスティンガーがいるでしょう。スティンガーの怪我も大丈夫でした。行ってあげなさい。」


「はい、ありがとうございました。」


 私は頭を下げると、セロを引き連れて退出した。


「結局、なんで呼ばれたんだ?」


「・・・わからない。とりあえず、医務室に行きましょう。」


 セロの疑問は確かにそうだ。

 けど、考えてもわからないだろうし、とりあえず私は医務室に向かうことにした。

 ・・・そうだ、帰ったらセロに問いただそう。他に何か秘密がないかどうか。




<Selo>--------


 戦いが終わり、ボーッとしているメリットを声をかけ、砂アラシのところにいこうとしたら、知らない女が来て、メリットと一緒に応接室のような部屋に通された。


「なんなんだ?いったい。」


 状況がわからなかったから出た言葉だったが、メリットがばっとこちらを向いて胸ぐらをつかんできた。


「あんた・・・わかってないの!?」


 なんで怒ってるんだ?

 試合にも勝ったし、何も悪いことをしていない気がするが。


「ていうかあんた!なんで火の天使だって黙ってたの!?私にも黙ってるってどういうこと!?」


 火の天使?

 ああ、そういえばメリットに聞かれなかったから言わなかったが、それがどうかしたんだろうか?


「いや、別に隠してたわけじゃないぞ?聞かなかっただろう?」


 メリットが掴んでいた手を離し、こちらを睨みつけてくる。

 どうやら俺が火の天使だといわなかったことを怒っているらしい。

 まさか、土の天使じゃなかったから怒っているというわけじゃないだろうな?


「わかってるの!?火の天使がどういうものか!」


 よかった。違ったらしい。

 なんで土じゃないの!なんて言われたらしばらく立ち直れなかったかもしれない。


 にしても、火の天使がどういうものか?メリットも不思議なことをきくな。


「・・・神によって火の属性を与えられ、火の魔法を得意とする天使・・・だろ?」


「違う!そういう意味じゃない!」


 違ったらしい、どうもメリットと会話が噛み合っていない気がする。

 俺が何かを見落としているんだろうか?


「じゃあなんだ?」


「だから!」


 メリットが何か言おうとしたタイミングで、部屋に3人の男女が入ってきた。

 目の前には老人が座り、後ろに控えているのは、担任のティーチと、俺たちをこの部屋に案内した女だ。


 老人がメリットに質問している。

 なんとなく、メリットが問い詰められている感じだ。

 ・・・面白くない。


「君は主に何も伝えなかったのかね?」


 急に矛先がこちらに向いた。

 というか、こいつは誰だ?名乗りもせず、メリットを問い詰めるとは。


「誰だ?お前は。お前に答える義務はない。」


 苛立った答えを返してやる。


「ぶほっ!」


 俺の答えを聞いて、老人とティーチは目を丸め、後ろの女は目を細めた。

 わずかだが、殺気を放っている。得意属性は・・・土か?人間にしてはなかな・・・


 バシン!


 突然、頭に衝撃があり、それがメリットの手によるものだと気づいて、されるがままになる。


「こらっ!あんたなんてことを!こちらはこの学園の校長先生よ!」


 メリットは俺の頭を叩いたあと、そのまま押さえつけて頭を下げさせようとしているらしい。

 なぜだ?校長とはなんだ?

 もしかして、この目の前の老人は偉い人物なのか?言われてみればティーチが後ろに控えている時点でティーチより格上!?ティーチがメリットの担任で格上だから・・・俺は自分の失敗に気づいた。


「痛い・・・メリット、校長とは偉いのか?担任よりも?」


 だが、念のために聞いてみる。


「当たり前でしょう!少なくともこの学園で大人はみんな私より偉いわっ!」


 やはり、俺は主人の顔に泥を塗ったことになるらしい。

 この学園の大人はみんなメリットより偉い、ということはあのブリーダー達も実は偉かったのか!?

 いや、考えるのは後だ、まずはきちんとした態度を示さねばっ!


「失礼しました。特に聞かれなかったので答えませんでした。階位はありませんし、使う機会もなかったので、メリットは俺が火属性だということを知ることはなかったはずです。」


「フォフォフォ、従僕契約を結んでいることは間違いないらしい。それにしても階位なしか・・・元々の階位は?」


 きちんと対応したつもりだが、なぜか老人が笑いだした。

 俺の階位を聞いてくる。

 嘘をいうのは簡単だが・・・ここは正直に答えるべきだろう。


「元の階位は言えません。これは階位剥奪時に誓約されています。」


「なるほど・・・剥奪か、君が火の天使ということは間違いないかね?」


「階位はありませんが、間違いありません。」


「そうか・・・。」


 老人は満足したように髭をなでている。

 ん?メリットが俺の方を見ているが、なんだ?

 何か言いたいことがありそうな目をしているが・・・やはり剥奪された天使はイメージが悪いのだろうか?

 人の世界では称号の剥奪などは忌避されることで、貴族からすると名誉に関わるらしい。

 天使からすると罰則の一時的なもので、力が落ちるわけじゃないから大したことじゃないんだが・・・。

 そのあたりは人と天使で感覚がかなり違うんだろう・・・説明しても分かってもらえなさそうだ。


 その後も何か話していたが、終始こちらを警戒していた後ろの女が少し気になったぐらいで、会話は頭に残っていない。

 結局何の用だったのだろうか?


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