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ブレイブエンブレム ~僕、勇者なんて出来ません!~  作者: 真田 貴弘
第一章 偶然か必然か
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第七話 村長の我儘息子

 珠紋と魔法の説明回。

 なんで、ちょっと長め。

 元気を取り戻したイオリは翌朝から日課の家事手伝いと武術鍛錬を行った後、アル達が

居ない為にルビアと家畜の世話や畑の農作業を手伝う。

 それが終われば魔道具関係の本を読み漁る。

 十歳のイオリには本来、難しい内容のものだが、魔道具の翻訳指輪の力やそれでもわ

からない所はアル達がトリビアを交えながら教えてくれたので殆ど理解できるようになって

いた。

 本を読んでいる間に昼食の時間が遣って来る。

 昼食をルビアと一緒に摂り、昼食が終わってしばらく休憩した後、再び本を読み進める。

 今日の分の本を読み終えたら珠紋作製の練習を行う。

 とは言ってもイオリは既に珠紋作製のスキルを極めているので復習としてやっているに

過ぎない。

 

 此処で遅まきながら珠紋の説明をさせて頂こう。


 珠紋とは魔法を使うための媒体と語らせてもらったのを覚えておいでだろか?

 珠紋には属性があり、無、土、水、火、風、光、闇の全七種類が存在している。

 ちなみに、ブレイブエンブレムだけは例外で属性がわからない謎の珠紋だ。

 珠紋を使った魔法を珠紋術、その珠紋術を行使する者を珠紋術師と呼ぶ。

 珠紋の属性は、そのまま使える魔法の属性系統となる。

 つまり、火の珠紋なら火と熱の魔法、水の珠紋なら水と氷の魔法、風の珠紋なら風と雷

の魔法、無の珠紋なら他六属性以外の魔法、という感じである。

 珠紋術は珠紋と魔力さえあれば誰にでも使えるが、属性に関しては個人で得手、不得

手があったりする(相性というよりは使用者の気持ちの問題や技術的な)。


 魔法の発動に関しては詠唱と無詠唱、刻印の三つの方法がある。

 詠唱は魔法名を唱えながら効果を想像して魔法を発動させる初心者向けの方法。

 無詠唱は効果のみを想像して魔法を発動させる熟練者向けの方法。

 刻印は珠紋に直接術式を刻み込み魔法名を口頭で唱えるか心での中で唱えるだけで

良い発動方法。


 詠唱、無詠唱は使用者の魔力を消費し、刻印は周辺の魔力を集め消費するので使用者

の魔力を消費する必要がないが、もし周辺に魔力がなければ使用者の魔力を消費する、

主に魔道具等に使われる技術である。

 その他にも刻印は珠紋に刻んだ術式の術以外使用できない、刻める術式の数は核石の

純度が高くなければ多く刻めない等の欠点も存在するが、使用者の魔力を消費しないです

むのは大きなメリットである。

 

 さて、話を戻そう。

 珠紋を作るには核となる魔力を持つ石が必要になる。

 ただ、魔力を持つだけなら良いという訳でなく、ある一定以上の魔力を持つ石が必要な

のだ。


 それは以下の四つの内どれかである。


 1、魔石の使用。一般的に使われている珠紋の核石は魔石である。魔石とは魔力含有

   量が最も高い石であり、純度が高ければ高いほど効果のより高い珠紋が出来る。


 2、魔法を使用する魔獣や魔物を討伐し体内にある魔石を剥ぎ取る。魔法を使う魔獣や

   魔物は体内で魔力を練り上げて魔法を使うので、結晶化した核石を体内に持ってい

   るので討伐出来れば核石が手に入る。


 3、魔力量の足りない核とする石に魔力をブースト(増幅)処置を施す。これは魔石の代

   用としてよく使われ通常の珠紋の半値以下で手に入るので一般人や低級冒険者の

   間で良く使われている。


 4,魔力を練り上げ結晶化する事で核石を作り出す。此の方法は膨大な魔力が必要で、

   最も難易度が高く一般的ではない。と言うか普通は出来ない。


 だが、イオリが作る珠紋に使用する核石は四つ目の方法で生み出した物を使用する。

 大量の魔力を消費する為、魔力の限界値を上げる修行にもなるし、核石も手に入る。

 此のやり方をアル達に実演して見せたら、目が飛び出さんばかりに驚かれた。 

 その後、珠紋に使う核石はイオリが作り出し、アル達に大変喜ばれたた。

 何せ核石を手に入れる手間暇や金が掛からないのである。

 しかも混じりけが無い高純度の核石であるから尚の事。

 核石一つでも馬鹿に出来ない金が掛かるのだから。


 イオリはそれらもやり終えたら、珠紋術のスキルを使ってブレイブエンブレムの珠紋の鑑

定を行なう。

 ブレイブエンブレムの効果を調べていたのだ。

 普通、道具等の鑑定は鑑定スキルが必要なのだが珠紋の効果を調べるだけなら珠紋術

のスキルで代用できた。

 とは言え、ブレイブエンブレムの術式は複雑すぎて少しずつしか解析できていない。

 わかった事と言えば、

 

 『ブレイブエンブレムは戦闘に特化した能力を付与、もしくは引き出すもの』


 と、言う事ぐらいである。

 もしかしたら伝説の杖を作るヒントにならないかとやり始めたのだが、膨大な量の術式

の情報を解析するのは骨が折れる作業で、やり過ぎると知恵熱を出す程である。

 だが実際、ブレイブエンブレムの術式の解析を行おうとすればイオリのL級(伝説級)の

 珠紋術のスキルが必要で、S級以下では解析など出来無いのだ。


 そんな毎日を過ごしていたある日の事であった。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 


 「おい!」


 一人で畑の世話をしていたイオリは子供達に呼びかけられて作業の手を止める。


「何か用?」


 イオリは疑問に思いながら子供達に尋ねる。


「お前、もぐりの魔道具職人の弟子なんだってなぁ!」


 子供達の中央にいるイオリと同じ年位の子供が前に出て、偉そうに話し掛けてくる。


「……」


 イオリは此の不躾な子供の言葉遣いに一気に不快になる。


「それが君たちに何か関係あるの?」


「大有りだ! 此の村はオレのオヤジの村だ! だから、怪しヤツを尋問する義務がオレ

にはある!」


 言いがかり以外のなにものでもなかった。

 どうやら此のベルン村の村長の息子のようである。

 なら、下手な事は出来ない。

 何故ならルビアから『此の村では村長の言うことは絶対で守らなければならない』と言

い聞かせられていたからである。


 何でも先代、先々代の村長は村人思いの良い人達でアル達妖精族や獣人族にも別け

隔てなく優しく接してくれていた人族だが、今代の村長ガルフォードに代替わりしてから妖

精族や獣人族を差別し、村人を扱き使い、村に収める税金を誤魔化して多めに村人から

徴収し自分の懐に入れていると言う噂があるのだ。


 その事を訴えようにも徴税官に賄賂を握らせている為、逆に訴えられ下手をすると牢送

りにされてしまうので、村人達は怯えてガフォードの言う事を嫌々ながらも聞かなければ

ならいのだ。


 その事を知っているイオリはどうしたものかと頭を悩ませる。

 下手な対応をしたらアルやルビアに迷惑を掛けてしまう。

 そんな事を考えていると、痺れを切らしたガルフォードの息子――ファイは怒鳴り声を上

げながらイオリに詰め寄る。


「おい!お前、オレを無視するな! もし、お前の身の潔白を証明したければオレの言う

事を聞け!」


「どうすればいいの?」


「お前! オレの子分になれ!」


 ファイはふんぞり返り、イオリに自分勝手な要求を突きつける。


「無理」


 一言でバッサリその要求をぶった切る。


「なんだと! お前、オレが怖くないのか! オレのオヤジは此の村の村長なんだぞ!

オレに逆らえば此の村にいられなくなるんだぞ!」


「悪いけど、僕、修行中で仕事もあるし、遊んでる暇ないから」


 農具を片付け家に戻るイオリ。

 そのイオリの前に立ちはだかるファイ。


「オレの言う事を聞かないならこうだ!」


 殴りかかるファイ、それを避けるイオリ。

 その行為を延々と繰り返す二人。


「お前らもかかれ!」

 

 業を煮やしたファイが他の子供達にもケンカに参加するよう強制する。

 だが、イオリはただひたすらに避けるだけ。

 やがてファイ達の体力が切れ地面に突っ伏す。


「お、おま…え……ゼェ…こ…こんな……ゼェ……ことし…て…ゼェ…ただで済むと……お

…思うなよ!」


 ファイ達は振り返り、イオリに背を向けて千鳥足で村の家々がある方向に向かってノロノ

ロと歩き出した。


 イオリは子供達の背を見ながらため息混じりに、


「あの子達と関わりたくないなー」


 と、心底嫌そうに呟く。


次の投稿は日曜あたりに投稿します。

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