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ブレイブエンブレム ~僕、勇者なんて出来ません!~  作者: 真田 貴弘
第一章 偶然か必然か
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第五話 伝説の杖

 ちょっと眼精疲労ぎみ痛いです。

 調子にのって書きまくりすぎました。

 「目が~目があぁぁぁ~!」


あれからイオリは部屋に閉じこもって出てこなかった。


「イオリ……、夕食、ドアの前に置いておくわね」


 ルビアからの呼びかけにも返事はなく、ただ静寂のみが続く。

 溜息を一つ吐いてルビアは階下に下りる。


「どうだ? イオリの様子は?」


 居間に戻ってきたルビアにアルが尋ねる。


「ダメね……。返事もしてくれないわ……」


 ルビアが首を横に振る。


「そうか……。仕方が無い。自分の両親が死んだんだ。イオリはまだ子供だ。ショックはデ

カイだろう……」


 アルが溜息を漏らす。


「せめて、肉親か親しい人でも近くに居れば悲しみも和らぐのに……」


 ハボアはアルを見つめてどうにか出来ないかと目で訴える。


「こればかりは俺にもどうにも出来……ん?」


 アルが言葉を言い切る前に奇妙な声を出す。


「どうしたの? 父さん」


「いや、もしかしたら異世界転移が可能かもしれん!」


「どういう事、父さん?」


「イオルが魔神タイランの珠紋で異世界転移したと言っとった! なら、魔神タイランの遺

体の近くにその珠紋が落ちとるかもしれん! それなら、魔神タイランが住んどった居城に

行けばもしかしたらまだ在るかもしれん! ハボア! 旅の準備をしろ! 魔神タイランの

居城に行くぞ!」


「わかった! 父さん! ……でも、イオリはどうするんだ?」


 ハボアとしてはイオリの今の状態を心配している。

 アルはそんなハボアの様子を見て嬉しく思う。

 ハボアは普段、感情を表情に出さない。

 イオリの潜在能力は神懸(かみが)かっていた。

 そんなイオリにハボアが嫉妬しないかとアルは心配していたのだ。


 確かにハボアにとって、イオリの能力は素直に嫉妬していた。

 だが、イオリとて万能ではない。

 苦手な事もあれば、出来無い事もある。

 逆にイオリが出来て自分が出来無い事があれば、頭を下げて協力してくれるように頼め

ば良いだけの事だ。

 幸い、イオリは良い奴だ。

 素直に頼めば大抵の事は快く引き受けてくれる。

 イオリは自分を兄の様に慕ってくれていて、自分もまた弟の様に思っている。 

 ならば、お互い協力関係を築く事は可能なはず。

 と、ハボアは柔軟にイオリについて考えていた。

 それに、他人の能力を羨み、嫉妬に狂い、尊敬している父を貶めたアイツ(・・・)の様

になりたくは無いと強く心に刻んでいた。

 

「……今の俺達がイオリにしてやれる事は、元の世界にイオリを返してやる方法を見つけ

てやるくらいだ。イオリの悲しみはイオリ自身が乗り越えなくちゃあならん」


「……そうだね」


アルとハボアの二人は早速、魔神タイランの元居城に向けての旅の支度を始めた。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 翌朝、アルとハボアの二人は早朝、魔神タイランの元居城に向けて旅立つ。

 アルはルビアに留守中の事、イオリの事を頼む。


「わかりましたわ。あなた、気をつけて行って下さいね」


「ああ、わかってる」


「じゃあ、母さん行ってくる」


「ハボアも気を付けて」


 旅立つ二人をルビアは見送った。

 ルビアはイオリの事を任されたのは良いとして、どうしてあげられるかを考えながら、イオ

リの部屋に朝食を持って向かう。

 イオリの部屋の扉の前には昨日の夕食が冷めた状態で昨日と同じ位置に置いてあっ

た。

 ルビアは溜息を吐き、朝食が()った食器と入れ替える。


 昼、夕とルビアは食事をイオリの部屋に持って行くが全く手が付けられた様子が無い。

 さすがにこのままではイオリの体に障ると思い、部屋の扉をノックし、イオリに呼びかけ

る。


「イオリ、部屋に入っても良いかしら? 大事な話があるの」


 部屋の中からイオリの返事はない。

 思い切ってドアノブを握り、回してそっと扉を開き、部屋の中に入る。

 ベッドの上でイオリは布団を被り蹲っている。


「あのね、イオリ、イオリの世界に戻る方法が見つかったの。今朝、アルとハボアがそれを

調べに旅に出たわ。」


 ピクッとイオリがほんの僅か反応する。


「……でも…、お父さん…、お母さん……は…生き返らない……。僕が…戻っても……お

父さん…、お母さん……は、何処にもいない」


 嗚咽混じりにイオリは話す。

 それに対してルビアは、


「貴方にはお祖父さん、お祖母さんがいるじゃない。アルやハボア、私がいるわ。……貴

方は一人じゃない。」


 ルビアは優しくイオリに話しかける。

 それに対してイオリは何も答えない。

 ルビアはどうにかしてイオリを元気にさせたかった。

 色々考えを巡らせている内にルビアは昔、アルから聞いた話を思い出す。


「ねぇ、イオリ。むか~しむかしの話なんだけど、この世には死んだ人を生き返らせる伝説

の杖が在るんですって。その杖は陽月の石とダグザの木の枝という物から作られていて、

もし、此の二つを揃えて伝説の杖を作る事が出来たら、貴方のお父さん、お母さんを生き

返らせる事が出来るんじゃないかしら?」


 イオリは被っていた布団を放り出してルビアに詰め寄る。


「ほ、本当! 本当にその杖でお父さん、お母さんを生き返らせる事が出来るの!?」


「え、ええ、そう言い伝えられているわ。」


 泣きはらして腫れた両瞼を見開き、その話を聞いたイオリは決意する。


「僕、陽月石とダグザの枝を見つけてその杖作る! そして、お父さん、お母さんを生き返

らせる!」


 ルビアはイオリが元気になるのならと此の話を聞かせたのだが、予想以上に元気になっ

てしまったイオリを見て顔を引き(ひきつ)らせる。


(どうしよう……、まさかここ迄効果があるとは思わなかったわ……。でも、いずれそれが

不可能だと気づくでしょう。その時は気を落とすでしょうけど、それはまた後の話。今はイ

オリに気力を取り戻させる事が必要だから仕方がないわね……。)


 だがこの時、ルビアはイオリを見誤まっていた。

 イオリにはそれを実現できる可能性がある事を……。


 次話は三日後以降に投稿します。

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