対策部と酒の味
「お前さあ、脚、自分でもわかってんだろ?」
放課後。
校門を出たところで、そんな声がした。
見ると、校門脇の木陰に清夜歌先生がいる。
彼女の目の前には真亜智先輩。
木の根元に座り込んで、その脇には青いシャベルが立てかけられていた。
「確かに、少しくらいなら大丈夫だよ?
けど、あんま走り過ぎると」
「……大丈夫だよ、先生。
自分の事くらいは自分でわかってる」
「わかってねえから言ってんだよ……」
そう呟きながら、ビールを口にする先生。
なんだか変な雰囲気だった。
「お疲れさまです、先生、先輩……どうか、したんですか?」
「あっ? ……有坂か。
……なんでもねーよ、ただ、稲葉ががんばりすぎって話だ」
「そうなんですか、先輩」
「そんな事はないよ、少し荷物を抱えて走り回っただけだし」
僕の言葉に真亜智先輩は心外と言った感じで返す。
「日がな一日中は少しって言わねーのよ。
しかも、仕事が終わっての夜もたまにやってるだろ?」
「宇宙人の出現は昼夜を問わないんだよ?」
それは……いつ休んでるんだろう?
松畠先輩といい、僕らの先輩は働きすぎの気があるみたいだ。
「まだ出てきてねえだろーが……
出てくる前に動けなくなっちゃ世話ねえよ。
こんな状況だぞ?
その調子だと、あたしじゃ対応できなくなる可能性も……」
と、そこまで言って、先生はふと僕を見る。
なんだろう?
「……やめた。
説教なんざ、酒がマズくなるだけだしな。
有坂、あとはたのんだそー」
そう言って、先生は手をヒラヒラ振って校内に戻って行った。
……いいんだろうか?
「……ありがとう、有坂のおかげで助かった」
別に何もしてないのだけど、真亜智先輩はそんな事を言った。
「何かあったんですか?」
「……先生が、わたしの心配をしてくれてただけさ。
ありがたいけどね」
そう言いながら、先輩はシャベルに手をかけて、そのまま立ち上がる。
「先輩、休んでは、いるんですよね?」
「……もちろん、毎晩快眠さ」
「夜も走り回っているんですか?」
僕がそう聞くと、彼女はなぜか目を逸らした。
「先輩?」
「たまにだよ。たまに」
胡散臭い。
「何時から何時まで?」
「……6時くらいから……たまに12時すぎくらいまで」
走り回りすぎだった。
「いや、違うんだ。
そうまでなるのは週に2、3回くらいだし」
週の半分くらいだった。
「仕方ないじゃないか、ジャバウォックが出てこないとも限らないんだし」
「宇宙人、でしたっけ?
……でも、先生の言う通りだと思いますよ?
いざって時に、対策部の部長がダウンしてたら、みんな困りますよ?」
その言葉に真亜智先輩はムムムと唸りはじめる。
「やっぱり、有坂も、そう思うのか……」
「それだけじゃなくて、真亜智先輩が心配なのもありますよ」
「そ、そうか……すまない。
……わかった、今後は休む様にするよ」
頬をかきながらそう返す真亜智先輩。
どうやら大丈夫そうだった。




