マリーア、気遣う
今話短いです(修正したらそこまで短くもなくなった)
11/11 キャサリンの関わりを示す描写が抜けていたのを修正
11/20 アンジェロの台詞を変更とそれに関わる文章を加筆修正
メイド長の叫びに、ハンナだけでなく館に携わるほとんどの者が何が起きたのかと駆けつけた。
そして見たのは、額から血を流し足を引きずりながらキャサリンの部屋から出てきたアンジェロと、傷口にハンカチを当てながらキャサリンを非難しているメイド長の姿だった。
メイド長が求めた救急と警察は、駆けつけたマリーアの「大事にしてはいけないわ。ね?」という言葉で無いものとなった。
そして「素行の悪いお嬢様の評判をご自分の息子より優先するなんてお優しい」と使用人達の間でマリーアの評価が上がったのだ。
「僕が不快にさせてしまったせいだ。キャサリンは悪くない」
手当を受けながらもキャサリンを気遣うアンジェロ。だがその言葉を信じる者はいなかった。
キャサリンとアンジェロは年の近いはとことして幼い頃から交流があり、それなりに仲が良かった。アイゼンとマリーアは残念な事になってしまったがこの二人を結婚させるといいのでは、と祖父である先代が考える程度には。
そして先代の望み通り、二人が年頃になるとアンジェロはキャサリンに好意を示すようになった。だがキャサリンはそれを受け入れず、アンジェロから距離を置くようになった。
そんな中起こったこの事件。
アンジェロは「軽く振り払われただけだ」と言っていたが、その程度で流血騒ぎになる訳が無い。キャサリンが癇癪を起こして花瓶でも投げつけたのだろう、とメイド達の中で話がまとまった。
そして、その日からキャサリンは自室に謹慎させられている。
誠実な貴公子の求愛を拒むだけでなく暴力までふるうお嬢様。元々低かったキャサリンへの評価が若い使用人を中心に更に落ちてゆく。
しかしハンナはこう思った。好きで無い相手から一方的に迫られるのは私だって嫌だなぁ、と。その上受け入れない事を周囲から責められるなんてたまったものではない。
実はハンナも同級生の勘違い男に迫られ、嫌いだと言ってるのに照れ隠しだと曲解され、クラスメイトにまで微笑ましいカップルと誤解されて苦労した事がある。
嫌だからといって暴力に訴えるのは良くないが、はっきりお断りされた相手に付きまとうのも良くないと思う。一途な純愛で羨ましいと話す同僚には曖昧な笑みを返すしかない。
もやもやするハンナにある日、先輩メイドがこんな事を言ってきた。
「あのね、私、謹慎中のはずのキャサリン様を街で見かけたのよ」




