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エルフが書庫に籠ってばかりいた理由の一つは、種族的問題によるものだ。


森の民は時間のかかる趣味を見つけなければならない。

この異世界の常識を知らないから、いったいどのような趣味があるのかわからない。

絵画、彫刻に楽器演奏。芸術関係の趣味はそれなりにやってみたけれど、他にも何か面白いことがないものかと探している。

ラソロが話してくれた、星や植物の書物も読んでいる。真面目に授業を受けているのもその一環だ。



二つ目は、結婚相手についてだ。

異人種に関する資料を探している。

こっちの世界、隠れ里の外にいるかもしれない森の民の情報は手掛かりすらない。

魔人の情報も少ない。千年くらい前、人は魔人に支配されていたという歴史資料は見つかるが、悪魔のような姿の挿絵が描かれている。しかし、特徴が一致するものはなくて想像上の出鱈目の可能性がありそうだとエルフは感じた。恐怖の対象という漠然としたイメージを描いただけだと。

なによりそんな化け物を、両親が結婚相手として勧めはしないはずだ。

情報はほとんどない。



三つ目は、異世界人。

強い魔力と強靭な体、高い知能を持つ種族。魔人からの解放運動、その後の国家の乱立など歴史の転換点に現れる謎の英雄たち、と書かれていることが多い。彼らの情報は多いけど、前回現れたのは約百年前のことで、今回現れた者たちに会った場合の参考程度にしかならない情報だった。



そして、最後がエルフにとって何よりも重要だ。

「あった。ついにみつけた!」

エルフが探していたのは変身魔術の秘伝を集めた本だった。

鳥に変身して飛びたい、ドラゴンに変身して強くなりたい。

そんな楽しい目的ではない。


「さすがファンタジー。性別を変える魔法もあるなんて!」


エルフはハーレムを諦めきれなかった。魂からの、男であるという主張は変えられない。


「ふむふむ。魔法薬のレシピか?さっそく材料を集めなくては!」





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