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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第一章 第四節 シリアルキラー

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マーキナー

 土煙がゆっくりと晴れ始める中にライトとその脇に抱えられたミードが降り立つ。


 降り立った地下室は少し暗いが最低限の灯りは確保されているため全く周りが見えないほどではない。

 その灯りに照らされているのは魔術に関する道具、本だ。


 しかし、ライトが無理に穴を開けた時の衝撃のせいであろう。

 瓦礫が散乱し、本や道具も床に散らばっている。


「……ビンゴ」


 そんな場所でライトは呟きながらミードを床に降ろす。


 二人は己の獲物をゆっくりと構えて土煙が晴れた先にいた男性、アヴィケーへとその刃を向けた。


 剣を向けられた彼は恐怖のようなものを感じていない。

 むしろ怒りの色を強くさせ、ライトたちへと言葉を向ける。


「……邪魔をするなと言ったはずだ」


「悪いけど、それは無理だ。

 お前が、二人を殺したのだからな」


 ミードの憎悪に満ちたその声にアヴィケーは首を傾げた。


「なんのことだ?」


 それはミードを嘲るようなものではなかった。


 本当に今初めて聞いたかのような反応。

 その証拠に彼の声にはわずかだが戸惑いのようなものが混じっている。少なくとも、ライトはそう感じた。


「貴様ッ!!」


「ま、待て! ミード!」


 ミードは嘲りと取ってしまったらしく、重心を下げると一息に地面を踏み込み、走り出した。


 ライトもすぐに制止の声をかけたが、彼には届いていない。


「よくわからんが、私は“彼”を止めなければならない。

 その邪魔をすると言うのであれば私は君たちを殺す」


 怒りから殺気へと変わった視線がライトとミードを射抜く。

 それに続くようにアヴィケーはその名を呼んだ。


「来い、マーキナー!」


 その声が聞こえた瞬間、ライトは何かに弾かれるように走り出した。


 ブロンズソードを投げ捨て、マントから白銀と黒鉄を引っ張り出す。


 マーシャル・エンチャントで強化されたその身体能力でミードとマーキナーと呼ばれたそれの間に入り込み、二本の剣をクロス字で構えた。


 瞬間、両腕に今まで感じたことがないほどの衝撃を受ける。


 咄嗟の行動であまり強く踏み込めなかったせいでライトが吹き飛ばされた。


 その後ろにいたミードが受け止めることができたため、怪我らしい怪我はしていない。


「あ、ありがとう。ミード」


「いや、いい……それより、なんだ……あれ」


「わからない……。

 たぶん、ゴーレムなんだろうけど」


 先ほどの一撃を放ったのは目の前にいるゴーレムだろうと思われるものだった。


 大体三メートルほどのサイズ。

 表面はゴツゴツしておらず、まるで巨大な石で加工したかのようにパーツとパーツのつなぎ目がなく、金属特有の光沢を帯びている。

 そして、頭部の逆三角形に並んだ三つの目。


 体型的にはゴリラに似ており、両腕は大きく、両足は少し小さく見えた。

 それらのせいか下半身に比べて上半身の方が大きいように感じる。


 しかし、体型や大きさが普通のゴーレムと違うなどは些細なものだ。


 明らかに出力が普通のゴーレムとは違っている。

 それは先ほど攻撃を真正面から受けたライトがよくわかった。


 反射的に白銀と黒鉄で受け止めたが、もしいつも使っているブロンズソードだったら、おそらく簡単にへし折られてしまっていただろう。


「これを普通のゴーレムと一緒にしないでもらいたいな。

 未完成だが、こうなってしまっては仕方ない。まとめて殺させてもらう」


 その言葉に反応するようにマーキナーの剛腕がライト達へと振り下ろされる。

 ライトはすぐさまミードを押し出すとその攻撃を今度はきちんと踏み込み受け止めた。


 歯を食いしばり踏ん張っていると頭に声が響く。


『すごいマナの量だ』


『うん。でも、暴走しかけてる。

 たぶん、そう長くは持たない』


 白銀と黒鉄の言葉にライトはギョッとしながら恐る恐る聞く。


(ぼ、暴走ってまさか、爆発とか?)


『マナ自体に起爆性はないよ。自己崩壊するだけだ』


 よかったと胸を撫で下ろそうとしたところでふと思い留まる。

 マナを制御しきれていないマーキナーは自己崩壊する。それはわかった。


 しかし、一体いつ崩壊すると言うのだろうか。


 まるでその考えを悟ったかのように白銀と黒鉄は口を揃えてこう言った。


『『わからない』』


「くっそ!!」


 その悪態の言葉と共にライトは受け止めていたその拳を地面へと下ろすと一気に後退。

 ミードもいつの間にか後退していたようで偶然隣に並んだ。


「ライト、あのデカブツやれるか?」


「結構キツイ。でも、なんとかする。ミードは」


「ああ、わかっている。あいつを捕らえる」


 彼にそれを任せるのに不安を感じないといえば嘘になる。

 だが、今は任せるしかない。


 この場には自分とミードしかない。


 そして、あのマーキナーと呼ばれるもの相手に生身の人間がどうにか出来るというわけはない。


(やるぞ、白銀、黒鉄)


『了解』


『わかってる』


 ライトはその言葉を合図に前進、マーキナーへと接近する。

 その動きに反応し、マーキナーは右の拳を振り下ろした。


 その一撃は明らかにゴーレムの物よりも数段上の威力を持つ。

 そう何度も受け止めてはいくら身体強化しているといっても持たないだろう。


 それゆえに、ライトは向かってくる攻撃を跳躍してかわし、地面に突き刺さった腕に乗るとそのまま走り出した。

 それを振るい落とすようにマーキナーは腕を上げる。


 ライトは左に跳躍。

 重力に従って地面へと落ちながら右手に持つ白銀を振るう。


 その斬撃に合わせ、白銀から放たれた帯状のマナはゴーレムの胸部に鋭い一線を入れることに成功した。


 その先にライトは危なげなく着地、瞬間に放たれたマーキナーの左の拳を後ろへと跳ぶことで回避。


 その一連の動作が終わる頃にはミードはすでにマーキナーの後ろ、アヴィケーの近くへと辿り着いていた。


 彼は剣を構え、何か言葉を発しているようだが今はそちらに聞き耳を立てる余裕はない。


 白銀と黒鉄はガラディーンにしていなくとも強力であることは先程の成果で分かった。


 しかし、それで余裕ができたというわけではない。


 今はまだ一撃一撃を正確にかわすことはできる。

 だが、かわすだけでは注意がミードへと逸れる可能性もあるため、かわすだけではダメだ。


 重い一撃を正確にかわし、適宜正確にカウンターを入れる。


(さて、それがどれだけ続けられるか……)


「ッッッッッ!!!」


 マーキナーは声のような何かを発すると近くにあった瓦礫を鷲掴み、それをライトへと投げた。


 向かってきた瓦礫を横へと転がることで回避。


「ッ!?」


 したところでギョッと目を見開いた。


 三メートルの巨体をかなりの速度で動かしているマーキナーがライトの目前にまでに迫っていた。

 それは両手をしっかりと組み、高く掲げて振り下ろそうとしている。


 奥歯を噛み締めて立ち上がりながら前へと大きく跳んで回避。

 それとほぼ同時、先ほどまでいた場所からは地面をえぐる音、叩き壊す音が耳に届き、その衝撃が着地寸前のライトの体を吹き飛ばした。


「ッ、卑怯だろ、あれ……」


 地面を転がったライトがゆっくりと立ち上がろうとしたところで脳内に叫ぶような声が届く。


『速く立って!』


『上!』


 白銀と黒鉄のほぼ同時の言葉にライトは首と体を動かしていた。


 映ったのはマーキナーの股関節部。おそらくその巨体で押し潰すつもりなのだろう。

 それを理解するよりも早く、体はその場から動こうと前へと飛び出していた。


 スレスレのところでその押し潰す攻撃をかわすことに成功すると立ち上がり、振り向きざまに黒鉄の一閃。

 その斬撃が扇状のマナの一撃となり、飛ぶ。


 マーキナーは立ち上がっている途中だったために、その攻撃をもろに受けた。


 その攻撃のせいで崩れたバランスを立て直そうとするそれに続けて白銀を振るい、マナを飛ばす。


 再び命中したその衝撃で今度こそバランスを失ったマーキナーはゆっくりとうつぶせに倒れた。


 ライトは白銀と黒鉄を逆手に持ち、その背中に飛び乗るとその二本を突き刺し叫ぶ。


「バンカー・バスター!」


 ほぼ同時にマーキナーは地面に両手をつけ、バネのように一気に飛び上がりながら起き上がった。

 しかし、バンカーバスターの爆発と衝撃を受けて再びそれは地面に倒れた。


 ライトも爆風を受けて吹き飛ばされたが地面に叩きつけられる前に空中で姿勢を立て直し、着地。

 ちょうどその近くにはミードとアヴィケーがいた。


 だが、ミードは両膝を折り、頭を抱えていた。

 対するアヴィケーはどこか哀れなものを見るかのような視線を向けているだけだ。


「彼になにを言った!」


「真実を言ったまでだよ」


 アヴィケーはゆっくりとライトの方へと視線を移し、言葉を続ける。


「君は、君たちは利用されている。あの男に……」


 ライトが疑問の言葉を発しようとしたが、それよりも先にマーキナーが大きな声のようなものを上げた。


 ハッとして視線をそちらに向け白銀と黒鉄を構えたがすぐに下ろした。


『自己崩壊ね……』


『ああ、やっぱり、そう長くは持たなかったね』


 二つの声の通り目前にいるマーキナーの各部にはヒビが入り、早い所ではすでに崩れ始めている。


 これ以上戦う必要はもうないだろう。


 アヴィケーはそんな崩れゆくマーキナーからライトへと視線を戻し、言葉を続けた。


「君たちは早く副都から離れた方がいい。

 シリアルキラーが完全に目覚める前に、な」


「……何を言っている。ゴーレムでたくさんの人を殺した。

 直接殺したわけじゃなくてもあんたがシリアルキラーだ」


「違うな。君たちは利用されていると言ったはずだ。

 違和感は感じなかったのか?」


「違和感?」


 訝しむような目を向けるライトに対して、アヴィケーは追い込まれているというのに至って平静に答える。


「彼と接触してから順調すぎるほどに証拠が揃ったのではないのか?」


 言われて考える。


 たしかにある人物たちと接触してからはどこか不自然なほどに手がかりが見つかるようになった。

 しかも、それの全てが犯人を絞ることが可能なものだった。


「……でも、あなたの工房のマナ残滓と事件現場にあった残滓は同じものだった。

 それは、どういう説明をするつもりだ」


「当然だな。私が作ったマナティックコンデンサだ。

 むしろ、同じでなければダメだ」


「なら!」


「だが、それだけで私が犯人と言えるのか?

 ゴーレムはコンデンサがあれば魔導師、と呼ばれるほどの者ならば普通に作れるが?」


 もしそれが本当ならば、本当のシリアルキラーは––––


「君は知っているか?」


 ある考えに行き着いたところでアヴィケーは問いかける。

 その問いかけに答えることすら忘れたライトへと彼は現実を突きつけるように言葉を続けた。


「彼の、ホーリアが研究している魔術は、ホムンクルス。

 人を材料に新たな生物を創造する魔術だよ」

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