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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第一章 第四節 シリアルキラー

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砂漠越え

 雲ひとつない空に浮かぶ大きな太陽。

 それが照らすのは一面に砂の海が広がる世界。


 そんな世界を3つの人影が歩いていた。


「はぁ……暑い……」


「言うな。ライト……さらに暑く感じる」


「ウィン殿。その言葉をそのまま私も言おう……」


 ライト、ウィンリィ、デフェットは汗を浮かべながら、砂丘の上を歩いていた。


 なにも遮るものもなく、砂の丘がどこまでも続くその光景に飽き飽きしてはいるが、それだけならばいい。


 問題は気温だ。


 時期としては7月の中旬。いわゆる夏真っ盛りという時期。

 日差しが厳しく、風は吹いてはいるが気休めにもなっていない。


 ただ1つマシな点といえば、汗を掻き続けてもマナリアたちが作ってくれた服はあまりベタつかないことぐらいだ。


「はぁ、誰だよ……南副都に行こうって言い出した奴は」


 呟いたライトを後ろにいたウィンリィとデフェットが無言で指差す。


「ああ! そうだよ! 俺だよ!! 俺が行くって言い出したんだよぉ!!

 だぁああああッッ!!!」


 ライトはあまりの暑さで狂い始めていた。


「ばっ! そんな声で叫んだらーー」


「もう遅い! 来るぞ」


 デフェットは言うやいなやすぐさまレイピアを抜き取り構える。


 その瞬間、地面から現れたのは全長は一メートルほどの大サソリ【スピーリー】だ。


 当然のように尻尾には即死ではないにしても毒を持ち、下手に当たってしまえば痺れて動けなくなる。


 スピーリーは獲物を見つけた喜びを表すかのようにハサミを鳴らした。


「ほら、ライトも武器出せ。すぐにやるぞ」


「……わかった」


 ウィンリィが剣を抜き、ライトはルマク・ボウガンを取り出すとカートリッジをセットする。


 その巨体では異常とも呼べる速度で迫るスリーピーにライトはボウガンを放ち牽制。

 わずかに怯んだ隙を逃さずデフェットが突っ込み、レイピアで突き出した。


 だが、正面の甲殻は固く、鈍い音と共に弾かれた。


 姿勢を崩し、隙だらけになったデフェットめがけてスピーリーの尻尾が向かう。

 今からでは回避も防御も間に合わない。


 隙だらけのデフェットへと真っ直ぐに向かう尻尾。

 それに向けてライトはボウガンを放った。


 攻撃の軌道がそらされた尻尾は何もない砂の丘を突き刺す。

 その間に後ろに回り込んだウィンリィが横薙ぎで根元近くでそれを切り落とした。


 生まれた隙を逃さず、デフェットはバックステップで大きく後ろに下がった。


 それに入れ替わるようにライトが前進しながらボウガンを連続で放つ。

 スピーリーの甲殻はそれを弾き続けているため無傷。


 だが、狙いはライトへと移った。


 尻尾はないが前腕のハサミは残っているため、それを振るう。


「マーシャル・エンチャント」


 唱えると同時にライトは跳んだ。


 空中で一回転するとスピーリーの上に着地、その頭部にボウガンを突きつけると同時に唱える。


「ストライク・エア!」


 魔術の力を得て何倍も引き上げられた速度で杭は打ち出された。

 それがスピーリーの頭部を貫いた瞬間、ライトは高く跳び退く。


 杭が砂の地面へと陥没していった衝撃で地面が爆発するように砂柱が高く上がった。


 それが落ち着いた場所では頭が吹き飛んだスピーリーがあった。


「ふう、こんなもんか……」


「ああ、さっさと殻を回収するぞ。この騒ぎで他の奴らが群がってくる」


 スピーリーの殻は丈夫であり、軽いため鎧の繋ぎの部分に使われている。

 その実用性の高さから、そこそこの値段で売れるのだ。


 コロサウスでの賞金は確かにあるが、旅を続けていれば何が起こるかはわからない。

 そのため、彼らはこうして倒したものからの素材採取を続け、僅かばかりの金を集めながら旅をしている。


 三人は手早く売れそうな殻を剥ぎ取るとすぐさまその場を後にした。


◇◇◇


 この砂漠の辛さは昼間だけではなく夜間にもある。


「はぁ……寒い……」


「言うな。ライト……さらに寒く感じる」


「ウィン殿。その言葉をそのまま私も言おう……」


 ライトたちは昼間と同じような会話をしながらテントの中で身を寄せ合っていた。


 砂漠では昼間吸収した熱が全て空気中に逃げることができてしまうため、夜は夏場でも一気に気温が下がり、かなり寒い。


 知識として知っていてもこの寒さは堪えるものだ。


 本来なら寝袋に入りたいところだが、もしもの時にすぐに動けないのはでは困る。

 そこで、ライトの創造(クリエイション)で炎を作り、身を寄せ合って暖を取っている。


「それで、後どれぐらいだ?」


 ライトが聞くとウィンリィが地図を広げ、コンパスを持ってテント上部の幕を開いて夜空を見上げた。

 冷たい風が入ってくるが、こうしなければ星の位置確認ができない。


 我慢して身を縮こまらせているとウィンリィがその幕を閉じて地図を指差す。


「だいたいこの辺だな」


「その距離なら……遅くても明日の昼にはつけるな」


「ようやくベッドで寝れるのか……」


 ライトは安心したように息を吐く。

 地図をリュックに仕舞いながらウィンリィはどこか呆れのようなものを含ませながら呟く。


「お前が砂漠越えするって言ったんだろ?

 素直に王都から行くか【ラギナラ】を借りればよかったのに……」


 王都から行けばある程度舗装された道もあり、途中に町や村があるため、少なくとも西副都(ウイスト)から出るよりはずっと楽だ。


 ちなみにラギナラとはラクダのような生き物だ。


 馬ほど速くは走れないが、それでも人間の脚より速く、このような気温の変動が大きいような場所でも普通に行動することができる。


 ライトはそう言うウィンリィに頬を膨らませた。


「だって……砂漠に行ってみたかったし、ラギナラは賃借料とか餌代とか結構高かったし……

 どうせ一頭しか借りれないなら歩くのとそんなに変わらないと思ったんだよ……」


「過ぎたことは仕方あるまい。

 しかし、寒さに対する備えを疎かにしすぎたな」


 デフェットの言葉に二人はうんうんと頷く。


 砂漠越えしたことが全員なかったのがその原因だった。

 暑さについては覚悟を決めていたが夜の寒さがここまで辛いとは思わなかった。


『バカね。あんた』


『うん。世界を舐めてると殺されるよ?』


 白銀と黒鉄の冷たい言葉がライトへと向けられる。


 しかし、彼女らが言うことは至極当然のこと。


 もし自分だけだったら身を寄せ合って暖をとることもできずに死んでいたかもしれない。


(能力で暖房器具でも創れたらよかったのになぁ)


 想像力不足のせいか創れたのはこの炎、【ウォーム・フレイム】だけだ。


 ライトの視線の先には焚き木などがなくても常に一定の大きさの炎が燃えている。

 物が触れても燃えることはなく、熱と光を放出し付け、使い勝手は良い。


「とりあえずいつも通り順番に寝るか」


「うん」


「ああ……」


 このテント内でも寒くはあるがくっついていれば眠っても死ぬことはない。

 そのため僅かばかりだが体力の回復ができているのは上出来だろう。


「んじゃ、先にライト寝ろよ」


「ん、ありがと……おやすみ」


 ライトはゆっくりと目を閉じて息を吐く。


 目を閉じてすぐ眠るということにも、座ったまま眠るということにもいつの間にか慣れてしまった。


 人間の順応能力の高さに改めて舌を巻きながらライトは意識をゆっくりと沈めた。

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