浮かぶ謎
「……原因はこれ、か」
ライトたちが村を去ってから三日が過ぎた。
あまりにも不自然だったネスクの大量発生、その原因をようやく見つけた守人は一人呟く。
彼が今いるのは洞窟だ。
洞窟といってもそう立派なものではない。穴蔵のようなものでそう広くもなければ深くもない。
しかし、そんな場所を目一杯に使って描かれているものがあった。
魔術に精通しているものならばまず知っていてる。魔術陣、転移陣だ。
今は効力は失っているが、これが描かれている洞窟とマナリアの村とはほぼ一直線で結ぶことができてしまう。
ネスクたちは確実にここから現れた。
その証拠に地面にはなにかが這った後が残っている。
これから出る結論は––––
(ネスクの大量発生は自然ではなく何者かが行った……)
しかし、と守人は立ち上がる。
「何が目的だ?
マナリアを滅ぼすため……いや、あまりにも生温い。では……何が」
自分の持つ知識をフル動員し探る。
いくつかの候補は出るがどれも真実味にかける。
この召喚陣は元々使えなくなっており、ネスクの群れがたまたま別のところからこの森に移って来てそのせいで時期がずれた可能性もなくはない。
しかし、それは違うと第六感が告げる。
なんとなくそれは違うと断言できてしまう。
近くの人間たちが行ったという可能性も捨てきれないが今のところは商売上での問題はないはず。
もし知らぬ問題があったとしても皆殺しにすることなく、奴隷にするだろう。
そうやって思考を編むうちに行き着いた先の存在はたった一つ。
「……魔王、か」
だが、いくら魔王とはいえ遠くから魔術陣を書くことなど出来るわけがない。
だとすれば自ずと予測できることがある。
それは魔王の手の者がどこかに潜んでいるということだ。
それも遠くなどではない。近くにたしかにいる。
守人は描かれた魔術陣を靴で消しながらも続けて思考し続ける。
(いや、副都の近くまで来ているというのになぜこんな場所を襲う必要がある……)
その理由がわからない。
どうせならネスクではなく、もっと強力なものを出せばいい。
そうすればマナリアの村は容易に落とされていただろう。
もっと言えば、副都の中でネスクなり魔獣なりを出してしまえば混乱に貶めることもできたはずだ。
しかし、そうしなかった。
違和感を感じる。
誰かの手の上で踊らされているのうな不快感を感じてはいるが、わからないことが多すぎて何もできない。
(ひとまず、ケニッヒに報告だな……)
何も出来ない自分に歯がゆさを感じながら守人はその洞窟から出てケニッヒにこのことを報告をするために森を歩く。
嫌な予感がする。何かが自分が知らないところで始まっている気がする。
そんな気配を強く感じていた。
それを感じながらも願うのは彼の旅の無事だった。




