61.
許可を貰い使用人たちと一緒に自分たちの馬車へと戻る。
何故か遊園地側の管理人が追いかけて来た。
「公爵夫人、この度は私どもの不手際のせいで……」
「非常識な人たちの対処をしなければいけないことには同情するわ」
ぺこぺこと謝りながら言う相手にそう告げる。
「でも、自分で対処できないと思ったら上席を呼びに行くことをお勧めするわ」
「もっ、申し訳ございません。次からはそのように……!」
別に脅しをかけたつもりも睨んだつもりも無い。
しかし管理人は怯えた様子で私たちから離れて行った。
そして私の少し後ろを歩くアイリが「奥様」と小声で話しかける。
「何かしら」
「あの者たちへ供をするのは私では難しいでしょうか?」
「難しいわね。あの方たちは使用人の身分も求めているでしょうから」
伯爵夫人に対し王妃付き侍女が強気だったのは王妃付きという立場というだけでは無い。
彼女も恐らく同等かそれ以上の身分を持っているのだ。
(だったら相手に対しそれを名乗れば良かったのに)
どうせ自分の家名から馬車の主が王妃だと気付かれたくないとか言い出すのだろう。
別に相手に気付かれても圧力で黙らせればいいのに。そんな物騒なことを思う。
音頭を取ったクリス王子がさっさと一抜けした所に非常識な伯爵夫人の横槍が入った。
その状況には同情するが、だからと言ってこちらを利用しようとする姿勢はシンプルに不快だった。
子供たちを連れていなければ、もう少し粘ったがそれでは本末転倒だ。
そもそも子供たちが望まなければここに来ていないのだから。
(侍女たちが実質育ての親だし、カーヴェルもいるし大丈夫よね……)
ただ私が少し残念に感じるだけだ。
子供たちと一緒に遊園地を回るということを予想以上に楽しみにしていたことに今更気づいた。
「奥様……」
今度はカーヴェルが心配そうに声をかけて来る。
「大丈夫よ、私は上手くやるわ」
そう告げて私は馬車の中のレオとロンに事情を話した。
「……何だよ、それ」
予想通りレオは不満を口にする。
わかる。私だって納得出来ないのだから子供に受け入れろというのは無理だ。
「俺が、行けって言ったから……」
「違うわ。私が口を挟まなければ今でも馬車同士で喧嘩していたもの」
自分を責める方向に行こうとするのを止める。
実際それは事実だろう。
「一緒に、遊園地行きたかったな……」
ぽつりとロンが言う。私も同じ気持ちだと頭を撫でて告げた。
「次は絶対そうしましょう。でも今日も侍女やカーヴェルがいるからきっと楽しめるわ」
「そういう問題じゃないっ」
私の慰めを子供の声が否定する。それはロンではなくレオだった。
「シンシアやカーヴェルたちがいるから、お前が居なくていいとか、それは違うだろ……!」
「レオ君……」
「……絶対、次はお前も一緒に遊ぶんだからな」
思わず目頭が熱くなる。
彼が私をそこまで必要としてくれているとは思わなかった。
「そうね、次はちゃんと全員で遊園地を回りましょうね……」
「うん……」
「それとお前呼びはそろそろ止めてね」
「次、俺たちと遊園地に遊びに行った後で止めてやる」
「即座に条件出して来たわね……」
やはり子ども達も一緒にという王妃の提案を断ったのは正解だった。
公爵令息といえ王妃や王女をお前呼びしてしまったらただでは済まない。
そして王女の子供らしすぎる態度を見ていると、言葉が厳しくなりがちなレオと相性が悪そうだ。
「いいわ、約束だからね」
そう思いながらも私は自分が子供たちにそこまで求められていた事実に喜びを感じた。
レオは私が頭を撫でようとするのを止めず擽ったそうな表情をした。




