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【書籍化決定】誤解は解きません。悪女で結構です。  作者: 砂礫レキ@悪役令嬢覇王伝コミカライズ原作
第二部

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23.

 考える時間が欲しいと言われて私とカーヴェルはロンの寝室を出る。

 やはり即レオと会話しようという気持ちにはなれなかったようだ。

 でも仕方がない事だ。二人の兄弟の溝は昨日今日出来た訳では無いのだから。

 どうしたって性格の相性はある。仲良し兄弟にならなくても私は良いと思っている。

 けれどロンの表情は明るかった。それは確かに私の気分を楽にした。


 部屋を出るとマーサが誰かと和やかに会話している。

 相手を確認するとレオ付きの侍女のシンシアだった。


「すっかり仲良くなったみたいね」


 私が声をかけると二人は慌てて私に対し礼の姿勢を取った。

 気楽にするように言って私はマーサに話しかける。


「私もカーヴェルもロン君に伝えたいことは伝えたわ、彼は落ち着いて私たちの話を聞いてくれた」


 すぐ冷静になるのはロン君の長所ね。私が褒めるとマーサが嬉しそうな顔をした。

 私よりずっと彼女の方がロンの母親の様だ。

 でもマーサはそれでも自分が侍女でしか無いと弁えている。だから安心出来る。


「ところでシンシアはどうしてここへ?」


 私がもう一人の侍女に話を向けるとマーサが説明してくれた。


「奥様、シンシアさんは謝罪にいらっしゃったのです」

「謝罪?」

「はい、レオ坊ちゃまがロン坊ちゃまを怒鳴ってしまったことに対して侍女として詫びねばと」


 シンシアが引き継いだ言葉で私は納得した。


「ああ、そういうことね」

「でもロン坊ちゃまもレオ坊ちゃまに怒鳴ったので、お互い繰り返し謝罪し合う形になってしまって……」


 そう二人の侍女は苦笑いを浮かべる。

 私はマーサとシンシアが謝罪合戦を繰り広げる様を想像しこっそり笑いを堪えた。

 前世の私も似たようなことを息子の友達の母親とした事がある。

 世界が全く別物に変わってもそういった事は変わらないのだと少し愉快になったのだ。


「侍女同士の仲が良いのは結構なことだわ、レオ君の様子は大丈夫?」


 私がシンシアに尋ねると彼女は思慮深い表情に戻った。


「落ち込んでいらっしゃいますが落ち着いてもいらっしゃいます。今は一人で考えたいと」

「ロン君と同じね」


 こういうところは兄弟なのだなと思う。


「なら自由にさせて。思い詰めていないかだけ気にかけてあげてね」

「かしこまりました奥様」


 そうシンシアに伝えてロンの子供部屋を出る。

 後ろを歩くカーヴェルに私は告げた。


「あの画材店には明日一日猶予をあげるわ」

「はい」

「もし明日中に向こうから何も連絡が来なければ抗議を申し立てて制裁に動きます」

「かしこまりました」

「抗議文については私が自分で書くわ。字の練習になるもの」 


 そう軽くジョークを言ったがカーヴェルが笑った様子は無かった。

 良く考えたら家令である彼が笑えるような内容でも無い。こっそり自省した。


「気になるのは先々代の公爵夫人との繋がりを向こうが散々強調していたところね」


 もしロンたちの祖母が画材商を庇おうが屈するつもりは無い。

 ただ相手にその気も無いのに画材商が一方的に寵愛を気取っているとしたら向こうに伝えなければいけない。

 息子の死をきっかけに精神に問題が生じているらしき彼女に言って伝わるかは不明だが。  


「父に確認して対処が必要か報告致します」

「お願いね」


 カーヴェルの返答に私は頷いた。彼の口から出た父という言葉に引っかかり私は口を開く。


「先程ロン君に貴方が話していたことを思い出すと、ホルガーに次会った時に睨んでしまいそうだわ」


 親としてどうかしているとは前から思っていたけれど。

 無遠慮な私の言葉にカーヴェルが笑う気配がする。

 振り返ると穏やかな目をした彼が私を見ていた。


「貴方もロン君みたいにホルガーに怒鳴って良いのよ」

「私はもう子供ではありませんし、そういう激しい気持ちを父に抱く時期も過ぎてしまいました」


 少し前にはお見苦しい所をお見せしましたが。

 そう言われたが私には思いつかなかった。父親に対する葛藤を打ち明けられたが見苦しくも何ともない。


「ただ兄には父に対して言いたいことを言って欲しいとは思いますが、思い出すと昔からそれはしていましたね」


 父に言葉が届かなかっただけで。

 そう苦く笑うカーヴェルを見ているともどかしい気持ちになる。


「私がもっと早くこの屋敷に来ていたらホルガーに怒鳴ってでも定期的に帰宅させたのに」

「奥様はまだ十七歳です、それよりお若い年で輿入れは難しいでしょう」

「そうね……」


 そうだった、忘れがちだがこの体はまだ十七歳なのだ。

 だから公爵夫人という立場なのに度々軽く見られる。


「それでも、もっと早く奥様に出会えていたなら……」


 まるでそよ風のように微かな声が聞こえる。

 カーヴェルは眼鏡の奥でどこか悲し気な瞳をしていた。


「レオ様とロン様が受けた傷はもっと浅く、二人は笑い合えたかもしれないですね」


 カーヴェルの言葉に私はそうねと先程と同じように答えた。

 ただそれは彼の言った通り、有り得ないことなのだけれど。



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当サイトで連載していた悪役令嬢覇王伝がジーンピクシブ様でコミカライズ開始いたしました。
コミカライズ担当は伝子れんぢ様になります。下のイラストから掲載サイトにジャンプできます。 r3ol7zc823igv6ph2pz4znqa65s_18aa_1vf_2bv_14q2r.jpg
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そういえばまだ17歳だった
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