扉からはじまる 04
気を楽にしたメリーが、白い柱に向かっていく。
その細い背を見て、ラトスは胸中に不安をよぎらせた。
頼り合うと決めたところで、出会ったばかりの三人がどれほど協力できるというのか。
悪夢の回廊という不慣れな場所で、夢魔などという不慣れな相手と戦うのである。信頼し合えていない相手に、隣を、背を任せられるだろうか?
――面倒なことだ。
メリーの存在は、復讐を果たすうえで役に立つ。ラトスにとってそれ以上でも、それ以下でもなかった。身に着ける道具や武具のような存在と割り切れたならいいが、そこまで薄情になれる気もしない。
ラトスは無意識に腰の剣へ手を伸ばした。
白剣の柄に手が触れ、カチと剣が鳴る。
「……ラトスさん?」
白い柱を前にして、メリーがラトスへふり返った。
「……なんだ?」
「いえ、その、怒っているのかなと」
「なにをだ」
「その、えっと……頼ってしまうこととか……」
不安そうな表情を浮かべ、メリーの視線がラトスの手へ落ちる。腰に納めている剣に触れている様が気になったようだ。ラトスは一拍置いて剣から手を離すと、頭を横に振ってみせた。
「問題ない」
「そう、ですか」
「あんたは定期的にしおらしくなるな。ずっとそうしていればいいものを」
「し、しお……!? え、ちょっと!?」
メリーの声が大きくなると同時に、ラトスは白い柱へ手を触れた。
指先に、震えるような感触。風のような音が、光を連れてラトスの身体を駆け巡っていく。次第に周囲の景色が白く包まれ、溶けはじめた。白い光の向こう側に、しかめ面のメリーがかすかに見える。なにか叫んでいるようであったが、ラトスには聞こえなかった。
慣れそうもない転送の力が、ラトスの身体の感覚を奪う。
意識だけとなり、真っ白な光の中を、ラトスは泳いだ。とはいえ、自らの意思で泳ぎ、進んでいるわけではない。まるで自分と、自分以外のなにかが混じり合い、流れていく先を決めているようであった。




