猫からはじまる 03
「そう。条件はね。ボクと友達になることだよ!」
「……友達に?」
「そう! 友達に!」
ペルゥが笑いながら、くるりと宙を回る。その笑顔を見て、メリーの両肩がだらりと落ちた。緊張で全身に力が入っていたのだろう。何度か息を吐き、何度かラトスに目配せしてくる。なにか裏があるのでしょうかと言わんばかりの表情だ。
もちろん裏はあるだろうと、ラトスはさらに肩を強張らせた。眉根を寄せ、しばらく考える。やがてメリーとペルゥに向かい、うなずいてみせた。
「やったねー!」
ラトスとメリーを交互に見たペルゥが、再び宙をくるりと回った。その喜びようにメリーもペルゥの小さな手を取り、共にはしゃぎだす。しかしラトスは腕を組み、小さくうなった。
友達という言葉は、どの国、どの世界でも体のいいものだ。
ペルゥの目的は、友達という枠組みを利用してラトスたちを監視することだろう。旅人に立ち去るよう勧告したのに、「帰りません」と返事されて、「はい、そうですか」とうなずく者はいない。普通なら、強制退去か、監視付きの入国である。ラトスたちの扱いは、ペルゥの心のうちで後者となったのだ。
しかし逆に考えれば、「体のいい友達」は役に立つ。この奇妙な世界のことを何も知らないラトスたちにとって、ペルゥの存在は重要な情報源に違いないからだ。メリーのように手放しで警戒を解くような真似さえしなければ、この「友達」がただの目障りな邪魔者となることはない。
「じゃあ、ボクが道案内をしてあげるよ。いいかい?」
ペルゥが二人の周りを飛び回りながら言う。
断る理由はない。メリーはもちろん、ラトスもうなずいてみせた。するとペルゥの口がにこりと開いた。まるで嘲るようだと、ラトスは苦笑いする。
「よろしくね! ペルゥ!」
「やったね! よろしくねー!」
メリーの能天気な声が草原に広がった。見知らぬ土地に友人ができたことで、心強いと感じているのかもしれない。
ラトスは子供のようにはしゃぐメリーを見て、両腕を組み直す。自らもこのように気楽でいるべきなのか。妙な思いがわずかに過ぎり、ラトスは頭を横に振った。もちろん、あり得ないことだ。それよりも案内人を申し出た奇妙な生物からひとつでも多くの情報を得るべく、知力を使うべきである。
「それなら、ペルゥ。いくつか聞いておきたいことがある」
メリーと共にはしゃぎまわるペルゥを圧するように、ラトスは顔を近付けた。ペルゥの顔が一瞬固まる。しかしすぐにお道化た表情へ戻り、ラトスの顔をのぞき返す。
≪公開できる情報≫
≪ペルゥ≫
草原で出会った喋る動物。
外見は猫に似ていて、白い体毛、三本の尻尾を持つ。サイズは人間の手のひらほどで、体重も軽い。宙に浮くことも出来る。




