転送からはじまる 01
王女が消えた、「隠された場所」。
王女とラトスをここへ誘導したのは、エイスの占い師だ。
王女の行方不明が人の手によるものならば、占い師が犯人、または共犯ということになる。
となれば、王女と同じの誘導を受け、同じ行動を取ったラトスたちに何もしてこないのはおかしい。何もしないつもりならば、ここへ誘導する意味自体がまったく無いからだ。
「やはり違っていたな」
誘拐云々ではない意思が、占い師にあるのではないか。
ラトスは沼の周囲に目を向けた。散りばめられている光る砂粒が、ここそこで煌めいている。まるで星空を逆さにしたような光景。
「向こうに、いくつか光が強い場所がある。そこでもう一度やってみよう」
ラトスは沼の向こう岸を指差してみせた。頬を紅潮させたままのメリーが、ラトスの指差すほうへ顔を向ける。そこには二、三か所ほど光の強い場所があった。
「あそこですか?」
「そうだ。行くぞ」
「え。あ! ちょっと!?」
足早に歩きだすラトスを、メリーが慌てて追いかける。
ラトスは歩きながら、沼の底に目を向けた。水面に映る星月の光とは別の、淡い光がいくつか沈んでいる。沼の周囲に散りばめられている不思議な砂粒と同じものだろう。時折瞬くように煌めく様を見て、ラトスは頭をわずかに横へ振った。まるで夢でも見て、寝ぼけているような感覚におそわれる。
「……ここでいいだろう」
気を取り直し、ラトスは唇の端を引き締めた。
先ほど指差した光の強い地面の上に立ち、メリーを手招きする。
「ここも、私が?」
「そうだ」
ラトスの短い返事に、メリーの両肩ががくりと落ちる。適当に済ませようとする彼女を叱咤し、ラトスはもう一度しっかり再現するよう求めた。
「分かってます! ちゃんとやりますから!」
メリーは大きな声をあげ、地面に伏した。
静かな森と、吹き下りてくる風が、彼女の声と息遣いを奪うように消していく。
「……≪パル・ファクト≫!」
恥ずかしさを押し殺したメリーが、大きな声で叫んだ。
先ほどよりも強く、沼の広場と深い森にひびき渡っていく。
「……どうだ?」
ラトスは周囲に何の変化もないことを確認し、メリーに声をかけた。ところがいつまで待っても、メリーが返事しない。どうしたのだと思ってラトスはしゃがみ込み、メリーの顔をのぞき込んだ。




